賃貸住宅を事故物件化した場合の住んでいた方の責任(借りている方にも大きな責任がある例)

最近、事故物件が話題に挙がることが多くなってきました。事故物件にもいろいろとありますが、目に見えない心理的な瑕疵として取り扱われます。宅地建物取引士の知識をリフレッシュしているところですが、その中でいくつかの事例を学びなおしています。今回は、その中から、借りていた方が事故物件化した場合の責任の例を説明します。

事故物件の心理的な瑕疵

事故物件にも自死や変死等があり、私を含めて一般の方は積極的には住みたいと思いませんよね。この気持ちを心理的な瑕疵といい、宅地建物取引士は重要事項説明を行う時に、例外はありますが、しっかりと説明しなければなりません。

事例

この事例は、賃貸物件を借りて住んでいた賃借人の相続人および連帯保証人に対して、賃貸物件を所有している賃貸人が、自殺は賃借人の善管注意義務違反に相当するとして損害賠償を請求し、認められたものです。

ここで、善管注意義務というのは、「善良な管理者の注意義務」を略したいい方で、各々持っている能力・立場等で通常期待される義務を負うという意味です。

関係者と経緯

この事例の関係者と事例は次のとおりです。

  1. 貸借人Aは、賃貸人Xからアパートの一室を借りており、その際の賃貸契約でBを連帯保証人する契約を締結していた。
  2. その後、賃貸借人Aは、上記一室で自殺をし、相続人CがAの財産等を相続した。
  3. 賃貸人Xは、上記一室が事故物件化したことにより、上記一室と両隣並びに階下の部屋の賃料減少分の損害賠償を求めた。

本事例の結果

  • 貸借人Aは、善管注意義務があり、その範囲は、物理的な損傷が含まれることはもちろん、自殺することも善管注意義務の対象に含まれるべきものである。
  • 上記のとおり、自殺は善管注意義務に違反するため、相続人Cには賃貸人Xの損害を賠償する責任がある。また、連帯保証人Bも契約に基づき、相続人と連帯して賠償する責任がある。
  • 両隣の部屋等への説明については、当該一室での感じる嫌悪感に大きな差がある、建物所在地、単身向け賃貸物件等々を考えると当該一室の事を告知する義務はない。
  • 損害額の計算において、事故から1年間賃貸できなかった期間とその後の低額での賃貸契約期間が2年間あり、それが経過した3年後には通常の賃料が可能と推察されるとして、その3年間の損失分を算出した。なお、両隣と階下の部屋の減少分については認められなかった。

留意すべき事

今回の事例では、自殺があった場合、事故後最初の新規契約期間の2年間相当を含めた期間において、重要説明事項として、告知・説明義務はあると解釈できます。ただし、これについは、物件が都心部か田舎か、単身用かファミリー用か、売買か賃貸か等々で変わりますので、これらを考慮しなければなりません。

また、事故物件の両隣等への告知・説明義務についても、物件が都心部か田舎か等々同様に考えなければいけないようです。

さいごに

本事例は、東京地裁のものですので、おそらく都内での事件と思われます。このため、重要事項としての告知・説明しなければならない期間は、事故後最初の契約期間満了までを義務であるとしましたが、この事件が人間関係が比較的濃厚な地方で発生した場合は、もっと広く考える必要があるようです。このような地域では、いつまでも人の話題としてあがり、売買・賃貸が難しい状態が続くと考えられるからです。

また、事故物件に隣接する物件についても、同様に諸々の状況により判断されるようです。

このような状況には会いたくありませんが、事故物件に一度住むとその後の告知・説明義務は不要ということはどのような状況でも正しいというわけでは無いようです。少しトリビア的な知識でしょうか。

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