宅地・建物契約時の重要事項説明における注意点(まさか事故物件かも。。。)

定年後に備えて、自宅を住みやすい所へ買い替えたり、賃貸住宅へ引っ越したりすることがあるかもしれません。しかし、宅地や建物の不動産は一般的には高額ですので、取引においてトラブルが生じる可能性があります。不動産の重要事項説明は宅地建物取引士が実施しなければなりませんが、この重要事項説明に関連して不動産の購入者が想定していなかったことで泣き寝入りしないようトラブル事例を参考に説明します。

宅地建物取引士とは

宅地建物取引士とは、宅地・建物の公正な取引が行われることを目的として創設した国家資格で、主管庁は国土交通省です。主な業務は次のとおりで、宅地建物取引士が実施することが義務付けられています。

  • 重要事項の説明: 不動産を購入する顧客に対し、取引物件について正しい判断ができるように物件と契約内容に関する重要事項を記載した書面を交付して説明を行います。
  • 契約内容記載書への記名・押印: 重要事項説明書に記載されている内容に誤りがないかを確認すると共に、重要事項の説明に対する責任の明確化のため記名・押印します。

重要事項説明における注意点

宅地は建物の不動産は、生活や経済活動の基盤であり、顧客が個人の場合は、一生に一度の買い物である場合が多く、経験の少ないことが一般的です。しかし、不動産は高額であることや多くの法律が関わることから、当事者間でいろいろと多くの問題が発生します。

このため、宅地建物取引士が購入者に重要事項説明を行う上では、不明なことや疑問に思うことがあれば事前に調査等を行い、重要事項説明書に記載されている内容が正しいかを事前に明らかにして説明に臨むことが求められます。

しかしながら、悪意がある無しに係らず、重要事項の説明書等におけるトラブルは多いですので、その一つを次に説明します。

事例

この事例は、中古マンションを購入・転売した売主業者が、転売にあたり、そのマンションで2年前にあった飛び降り自殺の事実を告知・説明しなかったとして、損害賠償を命じられた事例です。

関係者と経緯

この事例の関係者と経緯は次のとおりです。

  1. 買主Xは、宅建業者である売主Tから中古マンションを転売目的で購入した。
  2. 宅建業者T(宅地建物取引士の資格を保有)が、元所有者であるAから購入した際の重要事項説明書には、「…当該マンションから転落する死亡事故がありましたが、プライバシー保護の観点から、事故の原因等は解明できませんでした。」と記載されていた。
  3. 宅建業者Tが買主Xへ転売した際の重要事項説明書および売買契約時に、この死亡事故について、説明をしなかった。
  4. 買主Xはその後、当該マンションから飛び降り自殺があったことを知った。
  5. このため、買主Xは、宅建業者Tに対して当該マンションで飛び降り自殺があったことを知っていたのに告知、説明をしなかったとして損害賠償を行った。

本事例の結果

  • 自殺があったか否かは、購入後の賃貸や販売価格に影響することは明らかなので、相手方が購入するか否かを検討する際に告知・説明しなければならない。
  • 自殺による一般的な忌避感は、主観的なものであり時間の経過により薄まっていくことはあるが、本件は死亡事故からまだ2年間しか経過していないので、宅建業者Tの説明義務がなくなるものではない。
  • 買主Xの損害については、自殺物件であることの減価と2年を経過している事、精神的な苦痛等を勘案して損害賠償額が認められた。

留意すべき事

本事案のように、自殺物件のような主観的・心理的瑕疵のあるものは、宅建業者Tが瑕疵を知った以上は、告知・説明する義務があると理解できます。また、このような目に見えない瑕疵については、宅建業者Tが噂を聞いた場合には、可能な範囲で調査する義務が生じるようです。

宅建業者Tとしては、このような問題があった場合には、その事実を告げたとしたら一般的な顧客が契約を締結するだろうかと自問し、契約締結を避ける可能性があると思える場合には、告知・説明する義務があると考えなければならないようです。

なお、本事例のような瑕疵担保の損害賠償額は、瑕疵が無い場合と瑕疵があった場合の売買代金の差額が賠償額にするという考え方が裁判例の主流です。

さいごに

今回の事故物件の例は、2年前にあったことですが、この他にも、1度別の方が住めば、その後の契約において、その事故についての告知・説明が不要になるという話を聞くことがあります。でも実際は、その状況や環境により、異なるケースもありそうです。

ただ確かなのは、一般的な購入者が買うか買わないかを判断する時に、その情報により買わないと判断されそうな可能性がある場合には、宅地建物取引士としては、その事を説明・告知する義務がありそうです。

このことを知っておき、もしも何らかの同じようなトラブルに巻き込まれた場合は、弁護士さんなどに相談してください。

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