宅地・建物契約時の宅地建物取引士の注意義務の例(物件調査を行わず事故物件と告げなかった事例)

重要事項を説明しなかったためのトラブル事例です。事故物件を競売落札した業者が、その事実を知っていたにもかかわらず、それを告げないで業者に転売した例です。この売買には仲介する媒介業者も介在していましたが、その媒介業者も事故物件とは告げなかったため、売主と媒介業者共に損害賠償を課せられました。

重要事項を説明しなかったための事例

この事例は、事故あり物件を競売・落札した業者が、転売する際に媒介業者を介して売却したのですが、その際に物件調査を行わずに事故物件だと重要事項を告知・説明しなかったもので、損害賠償を命じられた事例です。

本事例の経緯と結果について説明します。

関係者と経緯

本事例の関係者と経緯は次のとおりです。

事例2
  • 元所有者Aの物件は、Aが子供を殺害し、それを知った妻がその物件内で自殺していたものであった。
  • 売主業者Tは、その物件を競売・落札で入手した。その際の自殺等についての事故内容は、競売手続きの現況調査報告書と評価書に記載されていたが、売主業者Tはそれに気づかなかった(と言っている)。
  • 売主業者Tは、媒介業者Yに媒介を依頼し、買主業者Xに転売した。
  • 買主業者Xは購入後に事故物件であることを知り、正常な場合と事故物件の価格差を損害として、売主業者Tと媒介業者Yに対して、損害賠償を要求し、訴訟した。

本事例の結果

判決では、媒介業者Yの責任は認めなかったが、売主業者Tの責任を認め、Xの損害賠償金の一部を支払うよう命じた。

  • 売主業者Tは、事故物件と知っていたかどうかにかかわらず、転売先の買主Xに損害を負わせないため、物件明細書、現況調査報告書等に目を通し、重要事項の把握に努めるべき注意義務があった。しかしこれを怠り、事故物件である事実を告げることができなかったので、この点について、過失のよる不法行為責任がある。
  • 媒介業者Yは、自ら競売物件を落札した経験がなく、また、事故物件であることを知っていたとは認められる証拠がないので、売主業者Tと同様の注意義務を負うとは認められない。

留意すべき事

  • 物件の瑕疵は、物理的な瑕疵以外にも自殺や変死等事故物件のような心理的瑕疵も認められものです。
  • 今回の一番の問題は、転売を業務としていた売主業者Tが、物件名車遺書等をしっかり確認し、その事実を告げていれば避ける事ができた事例です。
  • 媒介業者Yは、この事例では、責任を免れましたが、媒介業者だから隠れた瑕疵について、調査・説明する義務がないというわけでは無いようです。あくまで置かれた状況で変わる可能性がありますので、可能な範囲で調べなければなりません。

さいごに

今回の事例は、業者間のトラブルのため、損害賠償額も比較的低かったようです。被害を被る方もプロなのである程度は騙されない知識・経験はあるだろうということです。買主であるXが素人の場合は、損害賠償の範囲はもっと広がりますので、もしもこのような場面にあった場合は、見えない瑕疵であっても、しっかりと判断し、主張しなければなりません。

しかし、年を取ってからこのような目に会うのも勘弁ですので、おいしい話には気を付けて、近づかない方が良いのでしょう。うまい話はありませんものね。

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