介護保険と共に創られた成年後見制度ですが、後見人の不誠実・犯罪等トラブルをよく目にするようになりました。最近では、自治体が市民後見人養成講座等を開催していますので、自分がトラブルに会わないために受講して知識武装しておく事も必要だと思います。私の住んでいる街の関連セミナーを例に説明します。
国の促進法と基本計画
高齢化社会において、認知症等の障害のある人は自分の財産の管理や日常生活等に支障がある人たちは、社会全体で支え合う事が必要です。これを制度的に実現するために国では「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が2016年4月15日に公布されました(施行は同年5月13日)。
本法律により、関連する施策を総合的・計画的に推進する事になり、2017年3月24日に第一期成年後見制度利用促進基本計画(2017年度~2021年度)が閣議決定、2022年3月25日に第二期成年後見制度利用促進基本計画(2022年度~2026年度)が閣議決定されました。
地方自治体における、市民後見人養成講座等はこれらの促進法・基本計画がベースになっています。
詳細については、厚生労働省の次のサイトをご覧ください。自治体の事例等も掲載されています(ボタンをクリックするとサイトへ移動します)。
自治体の例
私は神奈川県の街に住んでいますが、この街での市民後見人養成講座は次のような①~③の開講スケジュールで行われています。④については、講座では無く実際の活動になりますので、活動内容や受入団体により条件・選考等が実施される場合があります。これらは順番に進めることになりますが、どこで止めても構いません。受講料は無料ですが会場までの交通費等は自己負担です。
- 権利擁護人材育成講座:市民後見人養成講座説明会を兼ねています。
- 市民後見人養成講座(基礎研修):4日間の講座です。
- 市民後見人養成講座(実践研修):6日間程度の講座です。
- 市民後見人活動、権利擁護活動:(研修では無く)実際の活動です。
ここでは、①②について説明します。
権利擁護人材育成講座
この講座の目的は、市民後見人として権利擁護のための活動をされる事や多様な地域共生活動に参画されるためのきっかけを与える事を期待して開講しています。そして、市民後見人養成講座(基礎研修)の説明会も兼ねています。
主な内容は次のとおりです。
- 講座説明会を兼ねる:市民後見人養成講座(基礎研修)受講のためには、本講座を受講する事が必須です。
- 主催:社会福祉協議会(街からの委託事業)
- 受講対象者:街在住の在勤・在学で、成年後見・権利擁護活動、地域共生に関心がある満15歳以上の人(2022年4月1日現在)。
- 講義形態:インターネット環境下の動画を視聴。
- カリキュラム
- 地域共生社会の実現/地域福祉・権利擁護の理念(105分間)
- ボランティア・地域活動紹介(30分間)
- 街の目指す市民後見人養成(権利擁護人材育成)について(45分間)
この中で特にさいごの「街の目指す市民後見人養成(権利擁護人材育成)について」では、これから予定される市民後見人養成講座の詳細説明があります。
市民後見人養成講座(基礎研修)
この講座は市民後見活動以外の権利擁護活動や幅広く「地域共生」に関心を持ち、ボランティア活動など地域共生活動に参加いただくきっかけとなり、将来、「市民後見人」としての活動や、その他の高齢者・障がい者の権利擁護活動に参画いただく事、地域活動などの多様な「地域共生活動」に携わっていただく事等を期待して開講しています。なお、後見活動に携わる場合は選考等があります。
主な内容は次のとおりです。
- 基礎研修:市民後見人養成講座の基礎研修にあたります。この研修を修了認定されると実践研修の受講資格が得られます。
- 講義形態:4日間(9時~17時)の座学で、必修科目を含めて75%以上の出席による修了認定されます。
- カリキュラム(〇は必須科目)
- 第1日:〇ライフステージと社会保障・福祉制度、〇対象者の理解1、〇対象者の理解2、〇権利擁護制度論
- 第2日:支援制度・施策1、関連制度1と2、民法、認知症のある人のサポートについて
- 第3日:〇対象者の理解3、〇権利擁護制度論1、〇権利擁護制度論2、〇権利擁護(市民後見)概論1
- 第4日:支援制度・施策2、社会資源、権利擁護(成年後見)の実務1、関連制度3
なお、ご参考までに東京都の令和4年度市民後見人養成講座(第15期)のサイトをご紹介します。一例としてご覧ください。次のボタンをクリックするとサイトへ移動します。
さいごに
自治体が開講する市民後見人養成講座について簡単に説明しました。民法等法律がからむと途端に難しくなります。なんとなく常識だと思う事でも、法律でこのように決まっていると言われるとそれまでです。
認知症等にかかった場合は銀行などの金融口座等では、事前準備をしておかなければ法定後見人を決めるよう指導され、思っていた事とは意に反するものになってします可能性があります。そのようにならたいためにも自己武装として、今回紹介した市民後見人養成講座で知識を得るのも一考だと思います。
先に紹介した厚生労働省の「成年後見制度利用促進」のボタンをクリックすると自治体の事例が掲載されていますので、皆さんの街も掲載されているかもしれません(掲載されていなくとも街名を加えた検索で簡単に見つかります)。是非、調べてみてください。
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