一般市民が後見人の担い手になる市民後見人の制度と養成講座について紹介します。介護保険制度と同時に導入された成年後見制度ですが、社会に広がってきた反面いろいろな点で問題も散見されるようになりました。利用者である認知症等の方々を守るための一つの方策である市民後見人ですので定年後の地域貢献として目指すのも良いと思います。
成年後見制度と市民後見制度
2000年4月から始まった成年後見人制度ですが、徐々に社会に広がっています。次のグラフは最高裁判所事務総局家庭局から毎年公表されている「成年後見関係事件の概況-令和4年1月~12月-」に記載されている「過去5年における申立件数の推移」です。
この申立て件数のうち、最終的に認められたものは約95.4%とあります。
数字的にみると順調に運用が図られてきているようにも見えますが、今後も増加されると予想される認知症高齢者を考えると成年後見人等供給側の不足が懸念されています。
このような中で期待されているのが市民後見人です。ただし、市民後見人は単に担い手が不足という事ではなく、被後見人等と同じ地域に住む人がその地域にあった適正なケアやサポートを行う事が求められています。
市民後見人の資質として求められことは主に次のとおりです。
- 地域社会での生活の延長線上であること。
- 成年後見制度を必要としている人の立場にたてること。
- その人の生活を支援するためにに何が最善なのかを考える事ができること。
市町村長からの申し立て
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に対して後見開始等「審判の申立」を行う必要があります。この申立ができるのは次の方です。
- 本人
- 配偶者
- 4親等内の親族(姻族を含む)
- 成年後見人・保佐人・補助人、任意後見人、成年後見監督人等
- 検察官
- 市町村長
特に⑥市町村長では、身寄りの無い場合等親族等による審判請求ができない方など地域で実情を把握できる立場にある市町村長にこの請求権を付与したものです。そして、市町村には後見実施機関(成年後見センター等)としての機能が期待されていることから一施策として市民後見人を育成・支援する役割があります。
ご参考までに、次のグラフは同じく「成年後見関係事件の概況-令和4年1月~12月-」に記載されている「申立人と本人との関係別件数・割合」です。
市区町村長の申立割合は23.3%と比較的大きな割合となっています。
市民後見人養成講座の概要
多くの自治体では、市民後見人の育成・活用を積極的に推進しています。ここでは、私の住む街の例でご参考までに簡単に紹介します。
市民後見人になるまでの流れ
市民後見人になるには次のような流れです。
基礎研修・実践研修を受講し、後見サポーターとして登録し、所要の課程を終え、能力が認められて後に後見サポーターとして約1年間後見業務の支援者となります。この後、問題なければ後見人候補者として家庭裁判所に登録され、適当と判断された場合は市民後見人として活動することになります。
街の予算の関係もあり、①~③まで各々約1年間の期間(正味の期間ではありません)が掛かります。
- 市民後見人養成講座-基礎研修-:市町村から委託を受けた成年後見センター(市社会福祉協議会等)が開催します。
- 市民後見人養成講座-実践研修-:同上。
- 後見サポーター:研修修了者を登録し、法人後見事業の後見支援員として活動します。期間は1年以上、通常活動回数1~2回/月、そのほかに情報共有・研修目的の全体会が約2カ月に1回あります。
- 後見人候補者として家庭裁判所に推薦:後見サポーター修了者を市町村が家庭裁判所に推薦します。
- 家庭裁判所から選任され市民後見人として活動:市社会福祉協議会との複数後見で活動します。
なお、市民後見人の形態は自治体により異なります。この例の街では、市民後見人が単独で業務を行うのでは無く法人である社会福祉協議会との複数後見となります。
講座の内容
前述の市民後見人養成講座-基礎研修-と-実践研修-の講座数を紹介します。ここで1単位は60分間です。なお、これらの講座は市が委託している社会福祉協議会が主催しているので受講料は無料です。
- 基礎研修:21単位
- 市民後見概論
- 対象者理解
- 成年後見制度の基礎
- 民法の基礎
- 関係制度・法律
- 市民後見活動の実際
- 実践研修:29単位(内.体験実習・レポート作成11単位)
- 対人援助の基礎
- 家庭裁判所の役割
- 成年後見の実務
- 課題演習(グループワーク)
- 体験実習(フィールドワーク)
- レポート作成
- 補講:当該市町村・地域の取組現状
さいごに
成年後見制度の地域の取組である市民後見人制度の一例を紹介しました。現役の時は会社勤めが主でしたので、地域貢献は全くと言って行いませんでした。ただ会社の業務は私の場合技術系という事もあり、正直何が社会に役立っているのか良くわからない面がありました。
また、家族ともども齢をとっていくので、認知症等将来への不安もありました。
なんとなくそれらの思いがあり、まずは市民後見人養成講座を受ける切っ掛けになった次第です。まだ受講中で後見サポーターにもなっていませんが、少しは直接的な社会・地域貢献を行い、終わりに向けて続けていきたいと考えています。
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