介護が必要になった場合は、毎月の出費で家計が破綻する可能性があります。それを避けるための公的な支援策として、介護施設の負担上限、高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算療養費などがあります。また介護施設としては比較的費用を抑えることができる特養があります。住民票を介護施設に移すことで、負担軽減範囲を広げることができますので、これを交えて説明します。
介護施設と特養
私たちも自立できるうちは良いのですが、介護が必要になった場合、介護施設に入居することも一つの選択肢です。ただ、それなりに費用が発生しますので、その対策を考えておかなければなりません。
まず、介護施設の一般的な費用相場と、その中で比較的負担の少ない特養(特別養護老人ホーム)を説明します。
介護施設の費用
この表は、代表的な介護施設の費用です。かなりな費用が必要ですので、自助努力だけで大丈夫なのかと不安になる金額です。
この中で、一般的に特養といわれている「特別養護老人ホーム」が比較的費用が抑えられています。
特養とは
特養(特別養護老人ホーム)は、社会福祉法人や地方自治体が運営している公的な介護施設です。低価格かつ基本的には最期まで入居し続けられるので、大変人気の高い施設です。
しかし、希望者が多いという事はなかなか入居できないということで、半年から数年ほど入居待ちするのが普通です。
特養の入居条件
特養に入居できる条件は主に次の2点です。自分の資産の多寡は関係ありません。ただし、原則申し込み順ですが、緊急性の高いと認められる方を優先的に入居させていきますので、入居待ちが数年続く場合もあります。
- 要介護3以上の認定を受けている
- 基本的には65歳以上の高齢者(特定疾病に罹患している場合なら40~64歳までの希望者も可能な場合もある)
介護施設の利用者負担
介護保険施設を利用した時の居住費・食費の費用は自己負担ですが、次の第1段階~第3段階に相当する方は、負担限度額認定申請により居住費・食費の上限額が決められています。
ただし、この場合でも預貯金等が単身で1,000万円(夫婦で2,000万円)を超える場合はこの負担軽減は使えません。
次の表は、各段階での食費、居住費の自己負担限度額です。最も負担の大きい 第4段階のユニット型個室では、食費と居住費を合わせて101,940円です。
なお、この他必要な費用は、介護サービス利用時の自己負担(1割~3割)、日常生活費などが必要ですので、最初の表の「~15万円」となっています。
高額介護サービス費とは
1か月の介護保険サービス等の利用者負担合計が一定の上限額を超える時に、申請によりその超えた額が支給されます。 地方自治体により若干異なりますが、横浜市の場合は次のとおりです。
高額医療・高額介護合算療養費とは
先の高額介護サービス費は1カ月単位でしたが、この高額医療・高額介護合算療養費の対象期間は1年間(毎年8月1日から翌年7月31日)に支払った自己負担額です。 ただし合算できるのは高額療養費の給付金や自治体の助成等を控除した後の金額です。
次の表も横浜市の例で、70歳を境に所得要件と負担額が異なります。
住民票を介護施設に移すメリット
例えば、次の仮定で整理してみたいと思います。
- 対象者1名、要介護3の認定済、70歳、無職、年金受給60万円/年、預貯金2,000万円
- 現役並み所得者と同居している
- 特養の入居待機期間後でメリットを考える(既に同居困難な場合は、前払い金無しの有料老人ホームに入居して待つという手もあります)
特養が空いた後は次のようになります。
- 特養のユニット型個室に入居する
- 特養に住民票を移す⇒非課税世帯になる
- 特養の食費・居住費の利用者負担段階は、 預貯金2,000万円があり第4段階(軽減無し)になるので、食費・居住費の合計は101,940円となる。
- 高額介護サービス費は、『世帯の全員が市民税を課税されていない方のうち前年の「公的年金等収入額」と「その他の合計所得金額」の合計が年間80万円以下の方』なので、自己負担限度額は15,000円(月額)が適用される
- 高額医療・高額介護合算療養費は、70歳以上の住民税非課税世帯となるので、自己負担限度額は31万円(年額)が適用される
特養に住民票を移すことで、上記4、5のとおり自己負担を大きく抑えることができます。
なお、預貯金が1,000万円以下であれば、利用者負担段階が第2段階(非課税世帯)になりますので、食費・居住費の合計は36,300円となります。
さいごに
日本は既に、65歳以上の人が全人口の25%を超えており超高齢社会に突入しています。4人に1人は高齢者となりますので、介護の問題は他人事ではありません。
今回あらためて介護に関する費用的な負担軽減策を整理してみましたが、日本はこの面では比較的手厚いと思いました。
老後は、物心共に衰えてきてしまいますが、自分の安心と家族の生活を守るため、せめてお金の面だけでも事前に対策を考えていきたいと思います。
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