年金定期便でみる厚生年金と旧共済年金のちがい、いろいろある経過的処置

年金定期便が送られてくるようになり、ある程度自分の老後計画が考え易くなりました。しかし、被用者年金一元化に伴い、旧共済年金の部分や、経過的加算部分、経過的職域加算額などがあり、よくわからないですね。何となくすっきりしないと思いますので、年金定期便を基に説明します。

年金定期便とは

年金定期便とは、公的年金(国民年金保険、厚生年金保険等)に加入している方が年金加入期間や老齢年金の受給見込み額などを確認するために日本年金機構から送られてくる年金記録です。

厚生年金と旧共済年金の主な違い

現在は、共済年金も厚生年金と一元化され同様の扱いを受けるようになりましたが、まだ経過処置等が残っています。厚生年金と旧共済年金の主な違いをみてみます。

厚生年金と共済年金

次の図は、厚生年金と旧共済年金の年金給付を現したものです。

厚生年金と旧共済年金の年金給付
【厚生年金と旧共済年金の基本構成】

主な違いは次のとおりです。

厚生年金と旧共済年金の給付比較
【厚生年金と旧共済年金の給付比較】

対象者では、厚生年金は会社員、旧共済年金では官庁の国家公務員、地方自治体の地方公務員、私学教職員等です。

給付区分では、旧共済年金が退職共済年金(職域部分)があり、いわゆる3階建ての給付になっています。なお、厚生年金でも企業独自の企業年金制度を採用しているところもあり(企業年金で3階建て)、この場合は企業年金も公的年金等控除の対象になります。

特別支給の老齢年金とは、昭和60年の法律改正で年金受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際に受給開始年齢を段階的にした制度です。

厚生年金では、例えば、女性が昭和34年5月生まれの場合、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例分)受給開始年齢は61歳ですが、これに相当する旧共済年金の特別支給の退職共済年金(報酬比例分)受給開始年齢は男女同年齢の64歳になります。

特別支給の退職共済年金にご興味があれば、一例として下記をご覧ください。

被用者年金の一元化と経過処置

厚生年金と共済年金に分かれていた被用者の年金制度は、2015(平成27)年10月に、一元化が実施され、厚生年金に統一されました。

ただし、完全な統一は継続性の観点から不公平が生じますので、経過処置がなされています。

例えば、65歳前まで支給される「特別支給の退職共済年金」は名称が変わり「特別支給の老齢厚生年金」となりましたが、一元化後も旧共済年金と同様な仕組みとなっています(受給開始年齢が男女同じ)。

また、退職者共済年金(職域部分)は廃止になり、代わりに「年金払い退職給付」が設けられました。これは、労使折半で保険料負担、積立方式等(基礎年金や厚生年金の報酬比例部分は現役世代が負担する賦課方式)の特徴があります。

なお、退職者共済年金(職域部分)の廃止前まで加入していた分は加入期間に応じた職域部分が支給されます。

年金定期便から確認できる厚生年金と旧共済年金

今まで説明した内容を踏まえて年金定期便に記載されていることを確認していきたいと思います。

次の図は、年金定期便の加入期間と見込み額などの部分を切り取ったものです。

年金定期便の見方、一部抜粋
【年金定期便の見方(抜粋)】

① 受給資格期間

第1号被保険者(国民年金保険)、第3号被保険者(厚生年金保険加入者である第2号被保険者に扶養されている配偶者)、厚生年金保険者である全ての受給資格を有する期間が書かれています。

② 一般厚生年金期間

会社員の厚生年金期間です。 老齢厚生年金は、老齢基礎年金の資格期間を満たした方が65歳になった時に、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が支給されます。また、65歳前でも先に説明したとおり、一定条件を満たすと特別支給の老齢厚生年金を受給できます。

報酬比例部分

報酬比例部分は、平均標準報酬月額と被保険者期間により算出される年金額です。報酬比例部分には被保険者期間(厚生年金保険を納めている期間)の上限がありませんので、加入期間に応じて年金額が計算されます。

経過的加算部分

老齢基礎年金は、20歳から60歳までの全期間保険料を納めた方が、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。このため、20歳前からや60歳を超えても厚生年金保険に加入しているとその分が老齢基礎年金に反映されないという問題が生じます。

これを救うのが経過的加算部分です。20歳前や60歳を超える部分は老齢基礎年金額として反映されませんが、それに相当する部分を経過的加算部分として老齢厚生年金額に加算される事になります。ただし、老齢基礎年金額計算月数の最大480か月が上限です。

もう少し詳しい説明が必要な場合は、下記サイトをご覧ください。

60歳以降も厚生年金に加入していると老齢基礎年金は増えるのか、経過的加算部分とは何」を見る

③ 公務員厚生年金期間

旧共済年金の退職共済年金に相当するところで、国家公務員・地方公務員の方の部分です。

報酬比例部分

一般厚生年金の報酬比例部分と同じで、一元化に伴い給付水準は厚生年金と同じです。

経過的加算部分

一般厚生年金と同様に老齢基礎年金の算定期間以外(20歳前及び60歳超の期間等)にかかる加算です。480月が上限です。

経過的職域加算額(共済年金)

退職者共済年金(職域部分)の廃止前まで加入していた分です。加入期間に応じて職域部分相当が支給されます。

④ 私学共済厚生年金期間

旧共済年金の退職共済年金に相当するところで、私学教職員の方の部分です。

報酬比例部分

一般厚生年金の報酬比例部分と同じで、一元化に伴い給付水準は厚生年金と同じです。

経過的加算部分

一般厚生年金と同様に老齢基礎年金の算定期間以外(20歳前及び60歳超の期間等)にかかる加算です。480月が上限です。

経過的職域加算額(共済年金)

退職者共済年金(職域部分)の廃止前まで加入していた分です。加入期間に応じて職域部分相当が支給されます。

⑤ 受給開始年齢

厚生年金等の受給開始年齢です。一定条件を満たすと65歳前から特別支給の老齢厚生年金が受給できます。

⑥ 特別支給の老齢厚生年金

生年月日が、昭和28年4月2日~昭和36年4月1日まで男子、昭和33年4月2日~昭和41年4月1日までの女子の方は、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢が生年月日に応じて61歳から64歳となります。

該当者は、受給開始年齢の欄に報酬比例部分の年金額が記載されています。

生年月日に対応した受給開始年齢については、下記資料をご覧ください。

⑦ 老齢基礎年金

老齢基礎年金は、保険料を20歳から60歳までの期間納めた方が、65歳から老齢基礎年金(定額)を受給できます。保険料支払い期間480月で、満額781,700円/年(令和2年4月分から)です。

⑧ 老齢厚生年金

65歳から支給される老齢厚生年金額が記載されています。老齢厚生年金額は、上限がありませんので、働いた分だけ受け取る事ができます。

⑨ トータルの老齢年金額

65歳以降の老齢基礎年金と老齢厚生年金額を合わせたトータルの老齢年金額です。

さいごに

年金は、定年後に働けなくなった場合の大切な生活資金ですので、取りっぱぐれの無いようにしっかり確認しておきましょう。世界に誇る日本の年金制度ですが、成立からいろいろな経緯があり、連続性を保つため非常に複雑になっています。

年金財政の厳しい折、益々年金額が減らされる可能性が大きいですが、老後生活を守るために早めにこれらの情報を捉えて、その後の資金計画・対策等を考えていきたいものですね。

—–↓ブログ村ランキングに参加しています。
にほんブログ村 ライフスタイルブログ 心地よい暮らしへ
にほんブログ村

楽天市場
5



厚生年金と共済年金
白ノ葉ブログの最新情報をチェック!