65歳から受給資格が生じる主な年金についてまとめました。特別支給を含めて、老齢基礎年金、老齢厚生年金、経過的加算、加給年金・振替加算、国民年金の任意加入による付加年金等です。特に加給年金は年金制度改正で支給停止があり、要注意です。
65歳から受給できる老齢年金
自営業が受給できる老齢年金は老齢基礎年金があり、サラリーマンの方が受給できる老齢年金には、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金があります。各々の概要と計算式を説明します。
老齢基礎年金
保険料納付済期間が10年以上(保険料免除期間があればこれを合算した期間)あると、原則65歳から老齢基礎年金が受給できます。加入できる期間は20歳から60歳までの40年間で、すべて納めると満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。年金額は、令和4年4月分からの年金額の満額777,800円/年となり、免除月数等がない場合は加入期間により次のように計算されます。
- 老齢基礎年金額=777,800円×(保険料納付済月数/480月(※40年×12月))
なお、60歳から65歳までの間に繰上げて減額された年金を受け取る「繰上げ受給」や66歳から75歳まで(平成29年3月31日以前に老齢基礎年金を受け取る権利が発生している方は、繰下げの上限年齢が70歳までとなります。※権利が発生してから5年後)の間に繰下げて増額された年金を受け取る「繰下げ受給」の制度があります。
老齢厚生年金
老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる方に厚生年金の加入期間がある場合に、老齢基礎年金に上乗せして65歳から受け取ることができます。厚生年金に加入していた時の報酬額や加入期間等に応じて年金額が計算されます。
老齢厚生年金の年金額は、厚生年金保険に加入していた時の報酬額や、加入期間等に応じて次のように計算され、①+②が年金額になります。
- 平成15年3月以前の加入期間
- 平均標準報酬月額×(7.125/1000)×平成15年3月までの加入期間の月数
- 平成15年4月以降の加入期間
- 平均標準月額×(5.481/1000)×平成15年4月以降の加入期間の月数
ここで平均標準報酬月額とは計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を平成15年3月以前の加入期間で割って得た額であり、平均標準月額とは計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を平成15年4月以降の加入期間で割って得た額です。
老齢厚生年金にも、老齢基礎年金同様に60歳から65歳までの間に繰上げて減額された年金を受け取る「繰上げ受給」や66歳から75歳まで(平成29年3月31日以前に老齢基礎年金を受け取る権利が発生している方は、繰下げの上限年齢が70歳までとなります。※権利が発生してから5年後)の間に繰下げて増額された年金を受け取る「繰下げ受給」の制度があります。
年金額に関連するその他制度
特別支給の老齢厚生年金
60歳台前半の老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)は、生年月日等に応じて、報酬比例部分が受給できます。また、昭和24年(女性は昭和29年)4月1日以前に生まれた方は、定額部分も受給できます。
経過的加算
特別支給の老齢厚生年金を受け取っていた方が65歳から受け取る老齢基礎年金は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分にかえて受け取ることになりますが、当面は、定額部分のほうが老齢基礎年金よりも高額になります。
このため、差額分の年金額を補うため、「経過的加算額」が支給されます。経過的加算額は、定額部分に該当する額から、厚生年金保険に加入していた期間について受け取れる老齢基礎年金の額を差し引いた額となります。年金定期便にも記載されています。
加給年金と振替加算
扶養手当のような加給年金と振替加算です。年金制度改正で令和4年4月以降に加給年金が原則停止されますので要注意です。
加給年金
厚生年金保険等の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分の支給が開始した時点)で、その方に生計を維持されている配偶者(65歳未満)または子(18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の障害のある子)がいるときには「加給年金額」として老齢厚生年金に加算されます。
なお、年金制度改正により令和4年4月以降に加給年金が次のように停止されます。
配偶者の老齢厚生年金を実際に受け取っていなくても、受け取る権利がある場合(在職により支給停止等)は、配偶者加給年金額は支給停止されます。ただし、次の要件を満たす場合は継続して受給できる経過処置があります。
- 令和4年3月時点で、本人の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金が支給されている。
- 令和4年3月時点で、加給年金額の対象者である配偶者が、厚生年金保険の被保険者期間が240月以上ある老齢厚生年金等の受給権を有しており、全額が支給停止されている。
振替加算
老齢厚生年金等に「加給年金額」が加算されている場合、対象者(例えば夫が老齢年金受給者で妻が65歳未満の場合はこの妻)が65歳になると加給年金の支給が終了します。このとき、加給年金の対象であった方が老齢基礎年金を受給し、一定の要件を満たすと、対象者の老齢基礎年金の額に振替加算がつきます。
例えば、夫が65歳から老齢年金(厚生年金+基礎年金)受給者になったとき、妻が65歳未満の場合(子は成人しているとして)に65歳になるまで夫の老齢厚生年金に加入年金が加算されます。そして、妻が65歳になり老齢年金の受給者になった場合は、夫の加入年金は終了となり、代わりに妻の老齢年金に振替加算が加算されます。
国民年金の任意加入による付加年金
老齢基礎年金を満額で受給できるためには、40年間(480月)の加入期間が必要です。この期間に満たない方は、60歳から65歳になるまでの間に任意加入をして、満額の年金に近づける事ができます。さらに付加保険料を支払うことで付加年金をつけることもできます。
例えば、夫が65歳定年で退職をし、奥さん60歳以上65歳未満で加入期間480月に満たない場合は、国民年金の任意加入し、満額に近づけ、かつ付加保険料を支払うことで付加年金も受給できます。
付加保険料は400円/月、付加年金額(年額)は「200円×付加保険料納付月数」ですので、次のように2年以上受給すると支払った付加保険料以上の付加年金が受け取れます。
- 付加保険料:400円×60月(5年間分)=24,000円
- 加算される付加年金額:200円×60月(5年間)=12,000円(年額)
留意事項
特に重要と思える内容を下記に記載します。
- 年金制度改正で令和4年4月以降に加給年金が原則停止されますので要注意です
- 加給年金を継続受給できる方だけですが、加入年金は老齢厚生年金に加算される年金です。このため、老齢厚生年金の繰下げ受給をされる場合はその停止中、加給年金も停止されます。振替加算も同様に停止されます。また、加給年金や振替加算は、繰下げ受給の増額の対象外です。
- 65歳以降も仕事を続ける在職老齢年金対象者が老齢年金の繰下げをした場合、増額計算対象部はカットされた後の在職老齢年金です。仕事をしなければもらえる本来の老齢年金の全額ではありません。
さいごに
主に65歳以降に関連の深い年金についてまとめてみました。年金は改訂があるたびに減額されていきます。今年は久しぶりに賃上げで労使とも盛り上がっているようですが、年金はマクロ経済スライドというわけのわからない方式を採用していますので、増額はあまり期待できません。
老後も年金収入だけに頼らず、大切な資産を育て・守ることを続けていかなければなりません。
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