R3年4月から年金額が少し減額、賃金上昇率がマイナスなのか

6月早々に国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書が送られてきました。これを見ると老齢基礎年金、老齢厚生年金、加給年金等が各々少しずつ減額になり、トータル3,000円/年程度の減額になっています。これについて調べてみました。

年金額改定ルール

現在の年金額は、平成16年の年金制度改正により賃金・物価変動とマクロ経済スライド調整率が考慮されています。物価変動率だけでは無く賃金変動率も取り入れた理由は、将来の現役世代の保険料負担が重くなりすぎないように考えられたからです。

このマクロ経済スライド調整率は、令和3年度で68歳到達年度以降の人(既裁定者)68歳到達年度前の人(新規裁定者)で計算方法が異なります。

既裁定者の場合

次の図は、日本年金機構サイトに掲載されている資料の抜粋です。

基本的には物価変動率が影響しますが、物価変動率の方が賃金変更率より高い場合は、賃金変動率に置き換わります。これも現役世代の負担を緩やかにするためです。

次の図は、日本年金機構に掲載されている既裁定者の年金改定率計算式と物価・賃金変動のイメージを表したものです(図をクリックすると資料に飛びます)。イメージでは、物価変動より賃金変動の方が低い場合はいずれも賃金変動の方を採用しています。

既裁定者の年金改定率計算式と物価・賃金変動のイメージ
【既裁定者の年金改定率計算式等】※日本年金機構資料から抜粋

なお、ここでスライド調整率とは、次の計算式で求めます。

スライド調整率=公的年金被保険者数の変動率(2~4年度前の平均)×平均余命の伸び率

新規裁定者の場合

次の図も日本年金機構サイトに掲載されている新規裁定者の年金改定率の計算式と考え方です(図をクリックすると資料に飛びます)。名目手取りとして賃金変動率がより明確に表されています

新規裁定者の年金改定率計算式等
【新規裁定者の年金改定率計算式等】※日本年金機構資料から抜粋

令和3年度の年金額

令和3年度の年金支給額は、令和2年度比で原則0.1%の引き下げとなりました。

これは、名目手取り賃金変動率(-0.1%)がマイナスとなり、かつ物価変動率(0.0%)を下回るため、名目手取り賃金変動率を用いて改定されます。また、名目手取り賃金変動率がマイナスのため、マクロ経済スライド調整率(マイナス0.1%)による調整は行われず、翌年度以降の年金額改定時に繰り越されます

これを算出する基になった令和3年度の参考指標は次のとおりです。

  • 物価変動率0.0%(令和2年の値)
  • 名目手取り賃金変動率-0.1%
  • 実質賃金変動率-0.1%
  • マクロ経済スライドによるスライド調整率-0.1%

この値を基に計算・決定された老齢基礎年金(満額の場合で国民年金額と同じ)と老齢厚生年金(夫婦2人かつ老齢基礎年金を含む標準的な年金額)の月当たりでみた年金支給額は次の表のとおりです。

区分令和3年度令和2年度
老齢基礎年金(満額)65,075円/月65,141円/月
老齢厚生年金(夫婦2人の上記を含む標準的な年金額)220,496円/月220,724円/月
【令和3年4月(支給6月)からの年金額】

ここで表下段の標準的な年金額とは、平均的収入(賞与を含めた平均標準報酬43.9万円/月)で40年間就業した場合の年金額です。

年金支給日は、前2月分を偶数月の15日ですので令和3年度の最初の年金支給日は6月15日に4月分と5月分が支給されます。

また、厚生年金の加給年金額についても、次の表のように減額されています。加給年金とは、厚生年金被保険者が65歳以降、奥さんが65歳未満(や子が18歳未満)であれば、奥さんが65歳になるまで(や子が18歳になるまで)、老齢厚生年金に加算される年金です。

区分令和3年度令和2年度
加給年金390,500円/年390,900円/年
【令和3年度の加給年金額】

ここで、加給年金は配偶者のみ(生計を維持されている子供がいない)かつ配偶者の生年月日が昭和18年4月2日以降の場合です。

令和2年度と比較して、加給年金の支給額は400円減額の390,500円/年です。

年金額の今後について考える

年金額は、前述の改定率を求めて毎年改定されます。令和3年度の改定率-0.1%は小さい数値と言えども、これからの少子高齢化の進展で、さらなる減額が容易に予想できます。

また、将来の公的年金の財政見直しを行う財政検証は5年毎に行われており、直近では2019年にありました。その内容は、実質経済成長率、合計特殊出生率(15歳~49歳までの女性が生む子供の数の平均)、平均寿命、物価上昇率、実質賃金上昇率、実質運用利回り等をいろいろなケースで仮定して年金額を予想しています。

これを見ると実質経済成長率0%の場合で、2019年の年金額と比較して2043年の年金額は実質約8割になります。

国の施策としてもいろいろと施策を考えていますが、個人としては約20年後には年金額が実質8割になるという前提で老後の生活を考えなければなりません

なお、2019年の財政検証に係る記事を次にまとめていますので、ご覧ください。

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年金財政検証2019から

さいごに

今年から老齢年金を受給できるようになりました。事前に年金事務所に行き、年金額を試算していただきましたが、6月早々に来た年金額改定通知書では、若干減額されていたわけです。ある程度予想していたことですが、寂しい物です。

現役世代だけを頼るのは限界がありますので、年金受給者といえども社会の活性化のためにある程度は力を発揮しなければなりません。

なかなか楽にはならないものです。でも何をやろうかと考えるのも結構面白いものですよ。

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令和3年度の年金額改定について
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