万一の備えの生命保険ですが、受取人が認知症や障害を持つ人の場合には、せっかくの生命保険金が有効に活用されるのかが心配になります。生命保険信託を活用することにより、生命保険金を年金のように分割交付することができます。まだ実施している会社は少ないですが、最近注目を集めている生命保険信託について、各社に商品・費用の比較を交えて説明します。
生命保険信託とは
生命保険信託とは、生命保険契約と信託契約を組合せた商品です。契約者は、生きているうちに、自分の死亡保険金の使途を指定することができます。
万一の時には、信託銀行等が信託の受託者として死亡保険金を受け取り、生前に指定した受益者(奥さんや子供など受取人)に、指定した方法で実行してくれます。
例えば、 少し認知症ぎみの奥さんの口座や、お子さんが未成年の場合にはお子さんの世話をしてくれる方の口座に、毎月、生活費として一定額を振込むようなことができます。
より詳しい説明は、下記の信託協会のサイトをご覧ください。
生命保険信託の比較
生命保険信託に対応している生命保険会社は、まだ数が少ないようです。しかし、明治安田生命保険が来年から取扱いを開始するなど、高齢化社会に臨み、同種の保険が広がってくるのではないかと考えています。
各社の生命保険信託
次の表は、生命保険信託を商品として用意している生命保険会社です。
入口(窓口)は生命保険会社ですが、実際の信託業務は信託銀行等が行います。この表を見ると、受託者である信託銀行等は、みずほ信託銀行、りそな銀行、プルデンシャル信託銀行です。
プルデンシャルは、あまり馴染みのない名前ですが世界的な複合企業で、この中の生命保険部門と信託銀行部門が対応していました。調べた中では、一番資料が充実していました。
費用の比較
次の表は、開示されている範囲で分かった生命保険信託にかかる費用(税抜)の比較表です。
違いのあるところでは、取扱額と信託契約締結時の初期費用ぐらいです。
分割交付の場合は、金銭信託設定時に死亡保険金の2%、一括交付の場合は100,000円、金銭信託期間中の事務・管理費は年額20,000円です。
死亡保険金の2%(1,000万円で税抜20万円)が気になりますが、死亡保険金の中から支払う事を考えると無理な数字でもありません。
皆さんもご自分の生命保険会社で生命保険信託を扱っているのかを確認されてはいかがでしょうか。
留意点
注意点と信託財産の保全について簡単に説明します。
- 実際に信託業務を行うのは信託銀行等ですが、生命保険信託を受け付ける生命保険のものしか対応してもらえません。つまり、他の会社の生命保険を基に生命保険信託をすることができません。
- 契約者と被保険者は同一でなければなりません。
- 信託されたお金は、預金保険、投資者保護基金の対象ではありません。ただし、信託法上、受託者は、信託財産に属する財産と受託者の固有財産を分別して管理しなければいけませんので、受託者(信託銀行等)が破綻しても、信託財産は保全されます。
- 信託財産は受託者名義(信託銀行等)となりますが、上記のとおり受託信託財産の独立性が確保されますので、これに対して、強制執行、仮差押え、 仮処分、担保権の実行、国税滞納処分等をすることができません。
さいごに
だんだん老後も後半になってくると生命保険は、 終身保険の場合は払込が終わっていたり、生命保険自体が不要になってきます。しかし、生命保険信託の活用を考えるとまだ出番があるのかもしれません。
生命保険も相続税の控除(法定相続人×500万円が控除できる)がありますので、これを含め、自分の生命保険会社が生命保険信託に対応しているか(対応する予定があるのか)を確認し、将来設計をしてみるのも面白いと思います。
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