成年後見人制度の疑問点あれこれ

年を重ね判断力が落ちてくると生活が困難になります。この対策として法定・任意後見人制度や家族信託があります。しかし、本人が事前に任意後見人制度や家族信託をしていなければ、万一の時には法定後見人制度しか残っていません。もしも法定後見人制度を利用した場合を考えると成年後見人は変更可能かとかいろいろ不明点が出てきますので、調べてみました。

はじめに

一例として、ご高齢のご夫妻が居て妻が認知症になり介護施設に入っていましたが、夫が突然亡くなった場合の事を考えたいと思います。もしも夫が生前に、夫自身が万一の時に残された妻の対応を任意後見人制度や家族信託等の契約をしていなければ、親族や周りの方が家庭裁判所に法定成年後見人の申請をする事が考えられます。

この場合は、申請の方法や親族等に不満があるようなときに、疑義を言えるのかとか一体どうすれば良いのかとか色々と疑問が涌いてきます。

これらの疑問について次に一つ一つ見て行きたいと思います。

疑問点と解決案

手続きの流れは

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 申立て:本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。主な必要書類等は、申立書、診断書、本人の戸籍謄本、財産目録、親族関係図等です。
    1. 事前に福祉関係者に「本人情報シート」を作成してもらい、2部コピーします(東京家庭裁判所の例)。原紙は診断書を依頼する主治医に提出し、コピー1部は家庭裁判所に提出、もう1部のコピーは申立人控え用です。
    2. 必要に応じて親族の同意書をもらいます(たとえば親に対する申立人に弟・妹がいる場合は弟・妹から後見開始や成年後見人候補者の同意等)。
    3. 申立書には、後見人等候補者に記載欄があり、「申立人が相当である。」、「裁判所の選任する第三者を希望する。」、「下記の者が相当である。(別欄に候補者情報を記入します)」から選択します。
  2. 審問・調査・鑑定等:裁判所職員が,申立人,後見人候補者,本人から聞き取りをしたり,本人の親族に書面などで申立内容を伝え、後見人候補者等についての意見を照会することがあります。また,必要に応じ,審問といって裁判官が事情をたずねることもあります。さらに本人の判断能力を鑑定する場合もあります。
  3. 審判:家庭裁判所は,後見等の開始の審判と共に,最も適任と思われる方を成年後見人等に選任します。事情に応じて,弁護士,司法書士,社会福祉士等の第三者を成年後見人等に選任することもあります。なお、成年後見人等の報酬は,仕事内容等を考慮して家庭裁判所が定めます
    1. 家庭裁判所から審判書謄本が本人、申立人と成年後見人等に選任された人に郵送されます。
    2. 審判書謄本が成年後見人に届いてから2週間以内に利害関係人などから不服申立て(即時抗告)がされない場合、後見開始の審判が確定します。なお、成年後見人等の人選についての、不服の申立てはすることはできません。
    3. 審判の確定後、家庭裁判所から法務局(東京の場合は東京法務局)に審判内容の登記が依頼され、2週間程度で登記が完了します。そして家庭裁判所から成年後見人等に登記番号の通知がされます。

上記で成年後見人が決まりましたが、被成年後見人への定常的なケアはもちろんとして、まず、次のような明確にしなければならない事があります。

  • 財産目録と年間収支予定表を家庭裁判所へ提出
    • 被成年後見人に資産を把握します。登記完了後は、後見登記事項証明書を取得できますので、これを持参して金融機関等に試算の照会をします。
    • 被成年後見人の上記資産、収入、負債と支出(税金、施設費、医療費等)を明確にして、年間の収支予定表を作成します。

成年後見人制度の詳細については、下記をご覧ください。

→成年後見制度について:裁判所

誰が申立てをできるのか

本人・配偶者、子供・親、兄弟姉妹、4親等内の親族(本人からみて、孫・曾孫、祖父母、叔父・叔母、甥・姪、いとこ、配偶者の親・曾祖父母、配偶者の子・孫・兄弟姉妹)、法定後見人等、市区町村長、検察官等です。

成年後見人になれる人の条件は

家庭裁判所は、申立書に記載された成年後見人候補者が適任であるかどうかを審理し、その結果、候補者以外の方(弁護士,司法書士,社会福祉士等の専門職や法律または福祉に関する法人等)を成年後見人に選任する場合があります。また、家庭裁判所が選任した成年後見人については不服の申立てはできません。

なお、次の人は成年後見人になる事ができません。

  • 未成年者
  • 成年後見人等を解任された人
  • 破産者で復権していない人
  • 本人(被成年後見者)に対して訴訟をしたことがある人,その配偶者または親子
  • 行方不明である人

申立の事実を知らなかった場合

審判書謄本が成年後見人に届いてから二週間以内に利害関係人などから不服申立て(即時抗告)がされない場合、後見開始の審判が確定します。 なお、成年後見人等の人選についての、不服の申立てはすることはできません。 審判の確定後、家庭裁判所から東京法務局に審判内容の登記が依頼されます。 登記手続は2週間程度かかります。

法定成年後見人を変更する事ができるのか

成年後見人の業務内容に不服があるという理由は認められません

しかし、病気等の理由で成年後見人を続けることが困難になってきた場合は、家庭裁判所へ申立を行い、許可を得て辞任する事ができます。この辞任理由には「正当な事由があるとき」なので、病気や高齢、遠隔地への転勤等の理由は認められ易いようです。

被成年後見人の居住用不動産を処分できるか

被後見人の居住用不動産を処分する場合,成年後見人は家庭裁判所に居住用不動産の処分許可の申立てをしなければなりません。

なお、被成年後見人と成年後見人の利益が相反する場合は、被後見人の利益を保護するため,その行為についてのみ家庭裁判所の選任した特別代理人が代理権を行使します。

成年後見制度の監督人とは

成年後見人を監督するのは基本的には家庭裁判所ですが、必要に応じて職権で成年後見監督人を選ぶことができます。

成年後見監督人の主な職務は次のとおりです。

  • 成年後見人が職務を怠ったり不正行為を行ったりしないように監督をします。このため、成年後見人の事務や被後見人の財産の状況に関する調査を行ったり、成年後見人に事務の報告や財産目録の提出を求めたりします。
  • 成年後見人と被成年後見人の利益相反した時は、被成年後見人の利益を守るために成年後見監督人が代理します。
  • 成年後見人が不動産の売買等を行う場合、成年後見監督人の同意を得なければなりません。
  • 成年後見人が不正な行為等を行った場合、成年後見監督人は家庭裁判所に対して成年後見人の解任を請求することができます。

被成年後見人が死亡した場合でも可能な事務

被成年後見人が死亡した場合でも、相続財産が相続人に移るまで,家を補修するとか特定の財産に対する保存行為や被成年後見人の医療費等を支払ったりする事などができます。

ただし、次のような行為は家庭裁判所の許可が必要です。

  • 被成年後見人の亡骸の火葬・埋葬に関する契約の締結(葬儀に関する契約は除きます)
  • 債務弁済のための被成年後見人名義の預貯金の払戻し
  • 被成年後見人が入所施設等に残された動産等に関する寄託契約の締結
  • 電気・ガス・水道の供給契約の解約、等

分からないときの相談窓口

実際に成年後見制度を利用する場合は、手続きや費用面で分からないことが多いと思います。紙の上で理解していても、付則事項があったり、原則と運用面でより柔軟に対応できたり/できなかったり等実際にやってみないことにはわからない事が多いですね。

このため、いろいろなところで相談窓口が設けられていますので、まずはそちらに相談するのが良いと思います。一例をあげると次のとおりです。

  • 家庭裁判所
  • 自治体の窓口
  • 地域包括支援センター
  • 社会福祉協議会
  • (公社)成年後見センター・リーガルサポート
  • (公社)日本社会福祉士会権利擁護センター「ぱあとなあ」
  • 市民後見を推進しているNPO法人

なお、事前に余裕がある場合は、家族信託任意後見を考えておくべきだと思います。これらについては下記の記事でもまとめていますので、ご覧ください。

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さいごに

人間だれでも老いていきますので、私の周りでも相続や介護の話が良く話題になります。成年後見制度や家族信託、そしてお金に余裕があれば信託銀行等の活用を事前に考えておきたいものです。万一の時は急に訪れると覚悟をして備えておきたいものです。

なお、この記事の内容については、しっかり調べてつもりですが、私は法律の専門家ではありません。このため、法定成年後見人について実際に問題が発生した場合には、最終的には弁護士等の法律の専門家に相談してください。

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