民法改正があり、相続関係の法律が改善されました。これに関する書籍として、「最強の相続」を紹介します。今回の改正の要点を簡易な言葉と例により分かりやすく説明しています。著者はTVなどにコメンテーターとして登場している「萩原博子」さんです。
相続税課税対象者の増加
相続税の基礎控除額は、2015年(平成27年)の税制改正から従来の6割に減額され、相続税が課税される割合が、4.4%から8.0%と大幅に増加しました。下記は相続税の基礎控除額の計算式ですが、
例えば、残された家族が妻と子供2人の場合、法定相続人数は3人になりますので、基礎控除額は4,800万円になります。都市部にお住まいの方々には、対応を考えなければいけない身近な税金になってきました。
【相続税の基礎控除額の計算式】
基礎控除額
=3,000万円+(600万円✕法定相続人数)
民法改正の要点
今回の民法(相続法)改正は、2019年1月から段階的に施行されています。2019年度から施行されているものと2020年4月から施行されるものについて要点を記載します。
2019年1月及び7月から施行されたものは次のとおりです。
- 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇処置:遺贈・贈与された自宅を相続財産として扱わないという制度
- 預貯金の払戻し制度の創設:遺産分割前に一定額を銀行から払戻しできる制度
- 自筆証書遺言の方式緩和:遺言書の一部を手書きでなくとも可として緩和
- 遺留分制度の見直し:遺留分損害額に相当する金銭を請求できる等
- 特別の寄与の制度の創設:無償で被相続人の療養看護等を行った相続人以外の親族に報いることができる制度
2020年4月以降施行されるものは次のとおりです。
- 配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設(2020年4月1日施行):配偶者が自宅に住み続けることができる権利
- 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日施行):法務局に遺言書を保管できる制度
「最強の相続」について
この本は、上記の相続法改正の内容について、相続人(相続を受ける人)等にどうのような影響があるかを簡易な用語で、かつ、絵や事例を交えて分かりやすく説明しています。
どのような内容が記載されているかを、簡単に説明します。
相続と争族
相続税の基礎控除額が下がった影響で、相続税の対象者が増えていますが、これに複雑化した家族関係がからまり、いろいろな争族が生じています。
比較的高額所得者は、事前に相続対策をするものですが、家は財産が無いので大丈夫と思っているところが、いざという時に問題になるそうです。
また、子供との関係がよくなかったり、子供も結婚して他の事情が優先したりしますので、考えさせられます。
民法改正の説明
先に説明した2019年から今年にかけて改正される相続法について、例示して説明しています。
いろいろな事例紹介
相続税対策として基本的な節税事項が説明されています。例えば、相続対象者と前述の基礎控除、生命保険控除、死亡退職金控除や税前贈与による対策やその他の相続財産を少なくする方法が記載されています。
さらに、ワーストケースとして被相続人(亡くなった方)の遺言書の余計な一文で生じた家族の争い、兄弟の中が悪かったため相続税を支払う羽目になった話、希望どおりの相続人(相続を受ける人)に相続財産を残せなかった事例等が記載されています。
遺言書の余計な一文については、そのような事が配慮できる方であれば、本来関係が悪くなるものでもないだろうと思いますが、さて自分の場合はどうなのだろうと考えてしまいます。
さいごに
やはりプロの方が書いている本は違いますね。内容は法律関係ですが専門書のように肩苦しくなく、少し余裕のある書き方になっていますので、気軽に読むことができました。