三菱UFGフィナンシャルグループでは、「予約型代理人」サービスにより顧客が認知症になった場合に代理人で対応する事が可能です。三井住友銀行でも「代理人指名手続」である程度対応できそうです。ネット銀行ではまだ対応があまりみられないこれらの認知症対応サービスについて説明します。
金融取引の代理等に関する考え方
顧客が認知症等になり自分で判断する事が困難になってきた場合に備えて、一般社団法人全国銀行協会(通称、全銀協)は「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」を取りまとめ、2021年2月18日に公表しました。
これは利用者の高齢化の増加に伴い、全国の銀行に対して指針を示すもので、顧客の財産を守り、利用していただけるように配慮されています。ただし、各行に対して強制力を与えるものではありません。
主な内容は次のとおりです。
- 銀行としては、認知能力が低下した顧客との取引においては、成年後見制度の法定後見人・任意後見人を介して行うのが一般的である。
- しかし成年後見制度の利用者総数は2018年12月末で約22万人(2012年時点で65歳以上の高齢者のうち、認知症の方の数は約 462 万人と推計される)にとどまっており、顧客の預金等を本人の医療費、生活費等に充当する事が難しくなっている。
- 認知判断能力が低下した顧客本人との取引では、成年後見制度の利用を促し、この手続きが完了するまでは、本人のための費用の支払いであることを確認するなどしたうえで対応する。
- 本人から親族等への代理権付与が行われ(任意代理人)、銀行が任意代理人の届出を受けている場合は、当該任意代理人と取引を行うことも可能である。
- 無権代理人(成年後見制度を利用していない人や財産管理委任契約等未締結の代理人)との取引では、本人の医療費等の支払い手続きを親族等が代わりにする行為等、本人のために明らかである場合に限り、依頼に応じる事が考えられる。ただし、この場合でも本人の認知判断能力を喪失や利益のために行われている事を確認する事により、リスクを低減させることができる。
詳細は、下記サイトをご覧ください。
三菱UFGフィナンシャルグループの「予約型代理人」サービス
全銀協の「金融取引の代理等に関する考え方」で公表されたとおり、顧客の預金等の本人のために活用について一定の配慮が考えられています。
このような中、三菱UFJフィナンシャル・グループとその傘下の三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、2021年3月8日に『「予約型代理人」サービスの導入について』をニュースリリースしました。
事前に親族を代理人として指名しておく事で、認知・判断機能が低下した場合に代理人として資産管理・取引できるというものです。主な内容は次のとおりです。
- 概要:顧客の認知・判断機能が低下して自分で金融取引ができなくなる場合に備え、本人の代わりに取引する代理人を指定するサービスです。
- 代理人の条件:原則、配偶者又は二親等以内の血族。ただし、その他親族、パートナーも可。
- 代理人の取引可能時期:顧客の認知・判断機能が低下して取引困難となり、所定の診断書・顧客と代理人の関係が確認できる公的書類等の提出後。
- 対象手続き:円預金の入出金・解約、運用性商品(外貨預金・投資信託・株式等)の売却・解約、住所・電話番号変更のお届け、残高証明書発行のお手続き等 ※各社により異なる。
- 利用手数料:無料。
- 導入時期:2021年3月22日から。
比較的簡単に手続きができますので、各行をご利用の人は、とりあえず手続きされるのが良いと思います。
なお、詳細は公表された下記資料をご覧ください。
三井住友銀行の「代理人指名手続」
次に三井住友銀行の例です。顧客が自分で銀行窓口やATMへ行けなくなった時に代理人が手続きできるサービスで、代理人キャッシュカードと代理人指名手続があります。
- 代理人キャッシュカード
- 概要:顧客の代わりに、ATM等で入出金できる代理人キャッシュカードを発行・利用できます。
- 手続き方法:顧客本人が銀行窓口で本人確認書類・届出印・通帳(又はキャッシュカード)等を基に手続きをします。また、発行された代理人キャッシュカードは顧客本人から代理人に渡します。
- 代理人指名手続
- 概要:あらかじめ代理人(2親等以内の親族)を指名する事で、顧客本人の代わりに代理人が出金することができます。
- 手続き方法:顧客本人が銀行窓口で本人確認書類・届出印・通帳(又はキャッシュカード)等を基に手続きをします。
- 代理人の出金方法:通帳・届出印・代理人の確認書類を持参し、銀行窓口で手続きをして出金します。
上記は、事前の手続きが必要ですが、これらを実施されていない場合は、取引店へ相談する事になります。個別事情により、必要書類を提示する事で対応していただける場合もあります。顧客本人との意思確認が出来なくなった場合は「成年後見制度」を利用することになります。
詳細は次のサイトをご覧ください。
さいごに
市中銀行が実施している代理人指名サービスについて、大手行である三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友銀行の例を説明しました。
関連してネット銀行も少し調べてみましたが、まだ明確に説明が記載されていません。ネット銀行等のネット金融機関では、インターネットやキャッシュカード経由での利用だけしか実施しませんので(窓口利用が無い)、極端な話では、IDとパスワードが分かれば対応ができるので、必要性が少ないのかもしれません。
最終的には、成年後見制度や家族信託等を活用することになるかもしれませんが、今回説明した銀行の取り組みは顧客重視で大変良いサービスだと思います。私もそのうち利用させていただきたいと考えています。
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