企業年金の受給者が万一の時に相続税の対象になるのかを調べたところ、対象となる事がわかりました。企業年金の概要と遺族給付金の概算について簡単に説明します。
企業年金とは
概要
会社勤めの人の退職後の公的年金としては、老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。そして、企業年金としては、確定拠出年金と確定給付年金等があります。確定拠出年金と確定給付年金等の制度説明は難しくなるので、ここでは退職金の一部や全部を原資として企業の年金基金等から受取れる年金を対象とします。
企業年金の受取方法
退職金の一部・全部を原資とする企業年金の受取方としては、退職時に一時金として受取る方法と退職後に年金として受取る方法(一時金と年金の混合も)があります。さらに、退職後に年金として受取る形態も終身年金、有期年金等があります。
- 退職時に一時金として受取る
- 退職後に年金として受取る
- 終身年金として:受給権者が生存中は受取ることができます。受給権者が亡くなられた場合、一定条件の下(例えば企業年金保証期間が受給開始20年間までとか)、遺族は遺族給付金(一時金又は年金)を受取ることができます。
- 有期年金として:受給期間が一定期間(例えば10年間とか20年間等)まで年金を受取ることができます。受給権者が亡くなられた時が有期内であれば遺族は遺族給付金(一時金又は年金)を受取ることができます。
企業年金と税金
相続税として課税
公的な老齢基礎年金・老齢厚生年金の被保険者であった人が亡くなった場合は、遺族に対して遺族年金が支給されますが、これらの公的遺族年金は非課税です。しかし、企業年金の遺族給付(一時金又は年金)は税務上「相続財産とみなす」ものとされ相続税が課せられます。相続税の課税対象になりますので、所得税としてはかかりません(一時金でも年金でも)。つまり、遺族が相続手続きをする時に、その他の財産と合わせて相続税の課税対象額とされて評価が終わっているので、遺族給付金は所得税の対象になりません。
みなし相続財産の評価方法
企業年金の遺族給付金はみなし相続財産になり、相続税の対象等は次のとおりです。なお、みなし相続財産については、年金支給前であれば非課税枠(500万円×法定相続人の数)がありますが、年金支給後では非課税枠が適用されません。
- 相続税の対象:企業年金の受取中に亡くなられた場合、遺族は終身年金の保証期間分又は有期年金の期間内に限り、遺族給付金を受取る事ができ、この遺族給付金がみなし相続財産になります。
- みなし相続財産での遺族給付の評価:相続財産とみなされる遺族給付の評価は、税法上で定められた計算方法により評価金額が算出されます。
- 一時金の場合:一時金で受取る場合は一時金の金額になります。
- 年金の場合:年間の平均給付額 × 残存期間に応ずる予定利率による「複利年金現価率」に基づき計算されます。
それほど長い残存期間では無いと思いますので、「月額×残存期間月数」で概算を押さえておけば良いと思います。
詳細は、国税庁の次のサイトをご覧ください。
さいごに
厚生年金や国民年金(基礎年金)などを受給していた人が亡くなった時に遺族の方に対して支給される遺族年金は、原則として所得税も相続税も課税されません。しかし、みなし相続税は他の相続財産と合算して相続税の課税対象となりますので、要注意です。
相続税の申告は、被相続人(今回は年金等を受給していた人)が亡くなった事を知った日(通常は、被亡くなった日)の翌日から10か月以内に行わなければなりません。それまでに相続人の確定、相続財産の確定・評価、遺産分割の調整等を実施しなければなりませんので、遺族にとっては大変です。
ご自身で万一の時の準備をまずはわかる部分からでも事前に整理しておくことが大切だと思います。
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