成年後見人が被後見人の住居を売却して処分する場合があります。この際に被後見人の相続人候補者(推定相続人)として知っておくべきことをまとめてみたいと思います。相続人候補者に知らされずに成年後見人が決定される場合がありますが、被後見人の最後のよりどころとなる住居については一定の歯止めがありますので、まとめてみました。
成年後見制度
成年後見制度は認知症その他の障害等で判断能力が不十分となり、不動産・預貯金等の財産管理や身のまわりの世話・介護サービスなどを行うには困難な場合があります。このような判断能力の不十分な人を保護し、支援するのが成年後見制度です。
成年後見制度には、家庭裁判所が成年後見人等を選任する法定後見と本人が判断能力のあるうちに契約により選定する任意後見がありますが、ここでは法定後見で話を進めていきます。
法定後見には、判断能力のレベルにより、「後見」、「保佐」、「補助」の3種類が、家庭裁判所が後見開始等「審判の申立」を受けて決定します。この申立できるのは次の方です。
- 本人
- 配偶者
- 4親等内の親族(姻族を含む)
- 成年後見人・保佐人・補助人、任意後見人、成年後見監督人等
- 検察官
- 市町村長
配偶者や親族以外の人も申立できるので、後日、被後見人等の相続人候補者がその事実を知らされる場合があります。
相続人候補者(以下、推定相続人といいます)となる親族等にとっては、被後見人の財産等がしっかり守られるかが心配な点であり、その中でも戻れる住居が残されているのかが最も気になるところです。これについて見ていきたいと思います。
被後見人の住居を処分する場合
この住居とは居住用不動産で、被後見人が住む建物・敷地のことで、現在、被後見人が施設等にいるため居住していなくても、将来居住する可能性がある不動産も含まれます。この居住用不動産を処分する必要がある場合は、事前に家庭裁判所に申立を行い、許可を得る必要があります。許可を得ないで居住用不動産を処分した場合は無効になります。
主な提出書類は次のとおりで、特に推定相続人の意向の確認や同意書等が必要ですので、一定の配慮がなされています。
- 居住用不動産処分許可申立書
- 処分の必要性・相当性や売却代金の使途・管理方法、被後見人の陳述が聴取できた時はその内容、推定相続人の意向(反対している場合はその事情)等
- 添付書類(不動産売却の場合)
- 売却不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)、契約書案の写し、売却不動産価格の妥当性の資料、推定相続人の同意書等
なお、家庭裁判所の審判に基づきこの不動産を売却した後は、契約書写し・売却に要した費用の領収書・その代金が振り込まれた被後見人の預貯金通帳の写し等を添付して家庭裁判所に報告します。
次のボタンをクリックすると横浜家庭裁判所の成年後見Q&Aがご覧になれます。本稿の内容を含めて成年後見制度が分かり易く記載されていますので、一読されることをお勧めします。
さいごに
お付き合いが有る無しに関わらず、親族の中に被後見人がいて、その後見人が第3者の場合は、なんとなく違和感が生じると思います。特に相続が絡んでくるとなおさらです。
被後見人が施設に入所していて自宅に戻る見込みがない場合でも、後見人が勝手にその住居を処分してしまうと被後見人が悲しむのではないかとも考えてしまいます。
しかし、今回調べてみると家庭裁判所の許可が必要で、その申立書には推定相続人の同意書等意思確認がなされることがわかりました。
成年後見制度は、後見人にとっては、なかなか手間のかかるものですが、被後見人の権利を守るためにはある面仕方のない手続きだと思います。
ただ、登記簿謄本や住民票の入手(住所変更の場合)・添付等は、マイナンバー制度の活用で省略できれば国のデジタル化施策にも理解が得られやすくなるのではないかと思いました。ちょっと蛇足でした。
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