相続財産では、自宅の占める割合は比較的高いですので、その価値を把握することは大変重要です。預貯金や証券等は価値が分かり易いですが、自宅の土地・家屋の評価が良くわからないと思いますので、ここでは、土地・家屋の基本的な評価方法について説明します。
土地の価格について
土地には各行政が目的に応じて価格を設定しており、同じ土地に対して複数の価格を設定されています。このため、公的には公示価格、基準値標準価格、路線価、固定資産税評価額があり、さらに実際に売買されると思われる時価があります。
この中で、公示価格と基準値標準価格は基準日等が異なりますが、同じ評価基準なので、基準値標準価格を省略し、それ以外を簡単に説明します。
公示価格
公示価格が公の価格の基準です。毎年1月1日を基準日として、3月下旬に発表され、所轄官庁は国土交通省です。
路線価
評価基準は公示価格の80%程度です。毎年1月1日を基準日として、8月中旬から8月下旬に発表され、所轄官庁は国税庁です。これは、相続税・贈与税等の課税標準になります。
固定資産税評価額
評価基準は公示価格の70%程度で、前年1月1日が基準日です。評価替えは基準年度(3年に1度)が原則で、直近では平成30年度(2018年度)に行われました。所轄官庁は市町村です。
路線価の無い地域では、これに倍率を乗じることで相続税等評価額になります。
時価
通常の状態で実際に売買されると思われる価格です。イメージ的には、通常3カ月程度で買手が現れるであろうと思われる価格です。
宅地の評価方式
宅地の評価方式としては、路線価方式と倍率方式があります。
路線価方式
路線価(1m²あたりの価額)のある道路に接する宅地に適用し、その宅地の面積を乗じて計算する方式です。ただし、同じ面積でも宅地の形状や間口の広さ等で評価が異なりますので、個々の状況によって補正率等が決められており、価格が異なります。
倍率方式
路線価が無い場合に適用し、その宅地の固定資産税評価額に国税局長が定める倍率を乗じて計算する方式です。路線価図及び評価倍率表並びにそれぞれの見方は、国税庁ホームページで閲覧できます。
だいたいの価格の把握方法
上記のように、宅地の価値は、土地の形状や周りの環境に大きく左右されるので、正確に求めることは素人には無理ですが、毎年市町村から送られてくる固定資産税評価額の値から公示価格の目安を得ることができます。ただし、実勢価格ではありませんので、あくまでも目安です。
固定資産税評価額は、公示価格の70%程度ですので次のとおりです。
宅地の価格=土地の固定資産税評価額÷0.7
家の価値について
家屋の価値は、固定資産税評価額に1.0を乗じて計算します。このため、その評価額は固定資産税評価額と同じですので、毎年市町村から送られてくる固定資産税評価額の値から家屋の価格の目安を得ることができます。
なお、木造住宅の耐用年数は20年~22年ですので、築年数がこれを大幅に超えている場合は実勢価格がかなり低いと覚悟しなければなりません。
耐用年数をお知りになりたい方は次の表をご覧ください。木造住宅以外の耐用年数もわかります。
不動産鑑定士の出番
既に述べてとおり、土地家屋の評価は大変難しいですので、例えば相続などで正確に評価するため、また公平性を担保するためにも、プロである不動産鑑定士に依頼することになります。
不動産鑑定士は、常に周辺の複数の取引事例をベースに、時期による価格変動や公示価格等を参考に客観的に鑑定評価しますので、安心です。
ご参考に、不動産鑑定士の行う鑑定評価としては、主に次の3手法があります。
取引事例比較法
他の売買事例との比較する方式であり、近隣や類似地域で同じような不動産取引が行われている場合に有効です。
収益還元法
賃貸に出した場合に将来生み出されるであろう収益を予測して価値を出す方式であり、賃貸不動産でなくとも客観的な価値がわかります。
原価法
対象となる家屋の再調達原価を求め、これについて減価修正を行い評価する方式です。
さいごに
何となく曖昧な土地・家屋の評価について説明しました。土地・家屋の正確な価値は、プロである不動産鑑定士に依頼せざるを得ませんが、自分が残せる財産を見積ることは相続税対策には大切です。
毎年市町村役場から送られてくる土地・家屋固定資産税評価額をしっかり確認し、残せる財産を是非把握しておきましょう。