自分が65歳で完全定年になった後、奥さんが年下で基礎年金の満額支給条件である年金加入期間480月に満たない場合は、国民年金の任意加入制度の活用と付加保険料を納める事で奥さんの年金受取額を増やすことができます。我が家でも任意加入等の手続きをしてきましたので、具体的な事例として紹介します。
国民年金の任意加入制度と付加保険料
日本の公的年金
日本は皆保険で、公的年金として国民年金や厚生年金等(共済年金もあり厚生年金に統合されましたが、経過処置等説明が煩雑なのでここではそのまま使います)があります。
国民年金は、国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が対象です。また、厚生年金は厚生年金保険の適用を受ける会社に勤めて居る人が対象になります。
国民年金の加入者は第1号被保険者と称し、厚生年金の加入者は第2号被保険者と称します。そして第2号被保険者の配偶者(20歳以上60歳未満)で扶養者の人は第3号被保険者と称します。
国民年金の任意加入制度
国民年金には、「老齢基礎年金の受給権を得る」や「老齢基礎年金を増やす(満額に近づける)」ためを目的に任意加入制度があります。
例えば、夫(第2号被保険者)が65歳で完全定年となり年金受給開始となった時に、扶養者である妻(第3号被保険者であった妻)がまだ65歳前で年金加入期間が480月に満たない場合は、妻が65歳以降に支給される老齢基礎年金は満額を受取る事が出来ません。しかし、妻が国民年金の任意加入に入ることで老齢基礎年金を満額で受取る事ができます(又は満額に近づける)。
2021年度の国民年金保険料と満額の老齢基礎年金額は次のとおりです。
- 国民年金保険料(2021年度):16,610円/月 ※掛金
- 満額の老齢基礎年金額(2021年度):780,900円/年 ※支給額
国民年金の付加保険料
国民年金の加入者は、定額保険料に付加保険料を上乗せして納めることで受給する年金額を増やす事ができ、これは任意加入者も同様です。
付加保険料と年金増額分は次のとおりです。
- 付加保険料:400円/月 ※掛金
- 年金増額分:200円×付加保険料納付月数/年 ※加算される支給額
なお、任意加入の条件としては、厚生年金に加入していないとか老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない等があります。付加保険料を含めて次の記事でも説明していますので、ご覧ください。
厚生年金に加入していた人が65歳退職後に奥さんが扶養者でまだ65歳前であれば国民年金の任意加入や付加保険料の支払いで年金が増やせるかもしれません。会社勤めの人は厚生年金だけに目が行きがちですが、退職後は国民年金が関わってきます。奥さんの増[…]
我が家の例
我が家でも奥さんの国民年金任意加入をしてきましたので、これを事例に説明します。
年金加入期間等
年金定期便から奥さんの年金加入期間等は次のとおりです。
- 妻の年金加入期間:472月(内訳は下記)
- 第1号被保険者期間:2月
- 共済厚生年金期間:72月
- 3号被保険者期間:398月
- 妻の年金定期便記載の老齢基礎年金額(見込額):768,672円/年
- 妻の特別支給の老齢厚生年金受給開始年齢:64歳
老齢基礎年金を満額得るために必要な加入期間は480月ですが、妻の年金加入期間は472月と8カ月足りません。このため、妻の老齢基礎年金額(見込額)は768,672円/月となっています。8カ月分を任意加入すると満額780,900円/年を受取ることができます。
さらに任意加入と同時に付加保険料を払い込む事で、少し受取る年金額を増やすことができます。
保険料と受取額の比較
納める保険料と受取る年金額、そして何年で元が取れるのかを計算してみます。
- 任意加入等で納める保険料
- 136,080円=(国民年金保険料16,610円/月+付加保険料400円/月)×8カ月
- 受取る年金額
- 782,500円/年=老齢基礎年金満額780,900円/年+付加保険料による増分200円×8カ月
- 元がとれる年数
- 9.84年≒①136,080円/(②782,500円/年-元の年金額768,672円/年)
任意加入と付加保険料を8か月分払い込むことにより受取れる年金額が増えますので、9.84年で元がとれます。つまり、奥さんが65歳から老齢基礎年金を受取るとすると10年後の75歳で元が取れる事になります(年金額の改定は無視)。女性の65歳時点の平均余命は24.91年ですので約90歳が平均寿命(令和2年主な年齢の平均余命、厚生労働省資料から)で、支払余力があれば、是非実施しておいた方が良さそうです。
留意点
手続きの過程で分かった事を含めて留意点を次に記載します。
- 国民年金の任意加入は、開始時点を過去に遡ることはできません。将来へ向けた加入になります。また、480月を超えて加入はできません。
- 付加保険料は、単独で納める事が出来ません。あくまで、国民年金があっての付加保険料になります。
- 国民年金の任意加入は、役所の年金係又は年金事務所で手続きができます。役所で手続きをした場合は最終的に書類が年金事務所に送られますので、早く手続きをしたい人は、最初から年金事務所へ行った方が良いです。なお、年金事務所は混んでいますので事前に予約等をして必要な書類等を確認した方が良いです。
- 任意加入等の保険料支払いは、手続き後、年金事務所から納付書が送られてきます。年金事務所内での手続きに1ヶ月強かかります。また、任意加入する期間によっては一括払いも可能で少し割引されます。
- 今回説明した任意加入については、特別支給の老齢厚生年金を受給していても手続きが可能です。今回の場合は、64歳から特別支給の老齢厚生年金を受取る事ができます。
さいごに
自分が定年後に、奥さんの年金を増やすための国民年金の任意加入等について説明しました。このような制度は確かに日本年金機構のサイトや時々コラム等で見かけますが、自分から積極的に調べなければ知らないでそのまま過ぎてしまう可能性が大でした。
税金もそうですが、知っている人と知らないで損をしている人がいます。自己責任とはいえ、国からもこのようなお得情報があっても良いと思います。例えば年金定期便などに入れていただきたいですね。
取る事だけでは無く、与えることも重要なのですが、そのような意識付けを期待する事が無理なのでしょうか。改善して欲しいですね。
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