安心して定年を迎えるために必要な老後費用の算出方法(その2)、不足額の具体的な計算例

定年までに貯蓄しなければならない金額は、想定される生活費から主な収入源である年金額等を差し引く事で算出できます。年金は少し複雑ですので、「その1」でまずはイメージを説明しました。この「その2」では具体例を説明します。具体例は、ダウンロード可能(エクセル版)ですので、これを活用し、老後に必要な資金を見積り、早めに対策を打っておきましょう。

算出する上での仮定

この記事は、文章量を減らすために同様のタイトルの「安心して定年を迎えるために必要な老後費用の算出方法(その1)、不足額の見積りイメージ」を読んでいる方を前提にしており、(その1)との重複は前提条件等最低限度に抑えています。

このため、「安心して定年を迎えるために必要な老後費用の算出方法(その1)、不足額の見積りイメージ」をまだご覧になっていない方は、恐縮ですが、下記をざっとご覧ください。

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老後の安心した生活のために(その1)

では家族構成や年金関係の仮定を次に記載します。これを基に老後に不足しそうな金額を見積ります。

まず、家族構成、寿命、生年月日、年金見込み額、等を仮定します。寿命は、「簡易生命表による平均余命(2019年)から、夫の寿命は84歳妻の寿命は90歳と仮定しました。

【仮定1】生年月日等

  • 夫:昭和32年2月生まれ、寿命:84歳、
  • 妻:昭和35年2月生まれ(夫と3歳差)、寿命:90歳、専業主婦
  • 子供は独立済

また、年金関係は、老齢厚生年金を除き、全て満額としました。より正確な数値にする場合は、ご自身の年金定期便等をご覧ください。

【仮定2】年金関係

  • 夫:会社員から60歳で定年退職 ※とりあえず退職金、企業年金は考えない。
    • 老齢基礎年金:781,700円/年(満額480月分、2020年4月基準)
    • 老齢厚生年金:1,400,000円/年
    • 加給年金:390,900円/年
  • 妻:専業主婦
    • 老齢基礎年金:781,700円(満額480月分、2020年4月基準)
    • 振替加算:26,988円/年

60歳以降の不足額

次の図は、夫が60歳から妻が亡くなるまでの受給できるであろう公的年金関係(収入)と生活費(支出)との不足額を計算した表で、3段に分けています。

なお、この記事の後半にエクセル版をダウンロードできるボタンがありますので、ご活用ください。

夫が60歳以降の目標生活費に対する不足額
【夫が60歳以降の目標生活費に対する不足額】

1段目は夫が60歳の時を1年(最上行)とし、1年から10年を表し、2段目は11年から22年を、3段目は23年から妻が亡くなる34年を表しています。

夫の年齢、妻の年齢の黄色帯の上部は受給できる公的年金関係を示し、その下の「総年金額」は受給できる公的年金の総額を示しています。

「生活費(25万円/月)」は定年後の想定する生活費です。少ないかもしれませんが、とりあえずの費用ですので、ご自身に合った生活費を入れる事により、次の不足額が再計算されます。

「不足額」は生涯の不足額(-1,442と記載されている個所)と年毎の不足額が算出されます。

以下、区分の項目を重要な点を交えて簡単に説明します。

妻の遺族厚生年金

夫が亡くなった後に遺族に支給される遺族厚生年金です。今回は子供が独立しているとして妻一人の遺族厚生年金にしており、遺族厚生年金は「夫の老齢厚生年金×3/4」となります(上記3段目の表を参照)。

妻の老齢基礎年金

65歳から老齢基礎年金(定額)が受給できます。今回は、満額781,700円/年(保険料支払い期間480月、2020年4月改定値)としています。

妻の振替加算

夫が老齢厚生年金の加給年金も受給している場合は、妻が65歳になった時点で加給年金が無くなり、代わりに妻の老齢基礎年金に振替加算が加わります(上記1段目の表を参照)

今回の例では妻の生年月日が「昭和34年4月2日~昭和35年4月1日」の範囲に含まれるので、妻が65歳以降に26,988円/年が加算され、この金額は一生加算されます(上記1段目の表を参照)

夫の加給年金

夫が65歳以降、妻が65歳未満であれば(奥さんが年下)、妻が65歳になるまで夫の老齢厚生年金に加給年金が加算されます。まるで扶養手当です。

今回の事例では(夫の生年月日が昭和18年4月2日以降)、390,900円/年が加算され、妻が64歳までの3年間続きます。

加給年金と振替加算を詳しくお知りになりたい方は次のサイトをご覧ください。

夫の老齢基礎年金

保険料を20歳から60歳までの期間納めた方は、65歳から老齢基礎年金(定額)が受給できます。満額781,700円/年保険料支払い期間480月、2020年4月改定値)です。

なお、年金定期便には「経過的加算部分」に数値が記載されている方がおられると思いますが、上記満額の値は、「経過的加算部分」も加算されている数値と考えてください。

夫の老齢厚生年金

老齢基礎年金の資格期間を満たした方が65歳になった時に、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が支給されます。老齢基礎年金は定額ですが、老齢厚生年金は被保険者期間(厚生年金保険を納めている期間)の上限がありませんので、加入期間と報酬に応じて(報酬比例部分といいます)年金額が計算されます。

ここでは、仮に1,400,000円/年としていますので、正確にはご自身の年金定期便をご覧ください

夫の特別支給の老齢厚生年金

男性の場合は昭和36年4月1日以前生まれ、女性の場合は昭和41年4月1日以前生まれで、かつ一定の要件を満たせば、65歳前に老齢厚生年金の報酬比例部分のみが受け取れる制度です。

今回の夫の生年月日から、62歳から支給を受けることができ、支給額は、65歳以降からの老齢厚生年金と同じです。

夫の年齢

夫の年齢は、60歳~84歳までと仮定しています。

妻の年齢

妻の年齢は、57歳~90歳までとしています。

総年金額

受給できる公的年金の総額が年ごとに計算されています。公的年金だけの収入の全てです。

生活費(25万円/月)

この家の仮定した生活費です。税金等全て含んだ支出額で、とりあえず「25万円/月」として計算しています。

また、夫が亡くなった後に生活費は(妻が82歳から)、それまでの生活費の70%で計算しています(上記1段目の表を参照)

生活費が少し苦しいかもしれませんので、ご自身の家計に合わせて値を入れて下さい。

不足額

夫が60歳から妻が亡くなるまでの受給できるであろう公的年金関係(収入)から仮定する生活費(支出)を差し引いた金額で、不足額(≒貯めなければいけないお金)です。最終的に赤字になる場合は、事前に対策を考えなければなりません

定年後の不足額を出してみましょう

ご自身の定年後に不足する可能性のある金額を見積ってみてはいかがでしょうか。次の「60歳以降の年金主体のキャッシュフロー(エクセル版)」をダウンロードすると比較的容易に作成できます。

ダウンロードできるひな型(エクセル版)

次のボタンをクリックすると上記表のエクセル版がダウンロードでき、編集可能です。ご自身と奥さんの年金定期便の金額と目標とする生活費等を入力すると不足額が簡単に算出することができます。

さらに加えたい事

可能であれば次の項目を上記エクセル表に追加していくと、老後のキャッシュフローの精度が上がっていきます。

年金以外の収入(増える要因)

  • 退職金:定年時の退職金
  • 企業年金:お勤めの企業が制度ありの場合
  • 個人年金:個人年金を掛けていた場合
  • 生命保険(夫):終身生命保険等
  • 妻の厚生年金等:奥さんが働いていた/働いている場合
  • 60歳以降も働く場合の給与:継続雇用等の場合
  • 支出のスリム化:家計を見直し無駄をカット

その他の支出(減る要因)

  • ローン残高:家のローンなどがあれば
  • 介護費等:ご自身、家族、親の介護・施設関連の費用
  • 一次支出:子供の結婚、親戚・お付き合いの冠婚葬祭、自家用車の購入・メンテナンス、家の補修費等
  • 年金減・社会保険料増:国・地方自治体等の財政悪化による影響

活用方法

上記のようなキャッシュフロー(お金の収支)を作成する最大のメリットは、いつ家計収支が赤字になるか(お金が底をつく)が分かる事です

家計収支が赤字になると、生活できなくなりますので、そうならないように事前に対策を考える必要があります。対策としては単純で、収入を増やすか支出を減らすかです。

収入を増やすためには、60歳以降もできるだけ働いたり、60歳前から自分の資産を増やす目的で貯蓄や投資等を行う事が考えられます。ローンなどは、退職金を食いつぶしたり、定年後もローンが残るような事は極力避け、60歳前までには完済しておく事が必要です。

支出を減らすためには、家計のスリム化を図る事が必要です。不要な契約やオプションは解約したり、格安スマホや電力・ガスの自由化を活用した乗りかえをしたり、外食を抑えたり、自家用車のグレードを落とす/手放したり等々を考えなければなりません。探すといろいろ出てくると思います。

なお、キャッシュフロー表の詳しい説明は次のサイトをご覧ください(本稿と数値が異なる場合は本稿の方が最新です)。

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さいごに

定年後の年金生活については、誰でも漠然として不安があると思いますが、今回紹介した老後の家計収支を明確にすることで、少しは見通しが良くなってきたのではないでしょうか。

あまり問題なさそうだとか、赤字になる可能性があるので少し働こうかとか事前に考える事ができるのが大きいです。

私も上記のようなキャッシュフロー表は、作成済で、その後年1回程度見直し、必要に応じて微調整しています。皆さんにも老後生活を安心して過ごすため、是非作成し、毎年確認していかれる事をお勧めします。

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老後の安心した生活のために(その2)
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