自分の寿命がわかれば身辺整理に真剣になります。頭のしっかりしている健康寿命は、平均寿命の-10歳が一つの目安になりますので寿命の10年前を限界ラインと考えて、それまでに金融資産、介護・生活支援、相続等で何をすべきかをまとめてみたいと思います。
平均寿命と健康寿命
ここでは平均寿命をみるのに65歳時点の平均余命から見積りたいと思います。
厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」(青字をクリックするとサイトへ移動します)の「主な年齢の平均余命」では、65歳時点で男(夫)は20.05年、女(奥さん)は24.91年ですので、夫は85歳まで、奥さんは90歳となります。
一方、体がしっかりしている健康寿命は、平均寿命の-10歳程度とよく言われていますので、この場合では、夫75歳、奥さん80歳となります。
健康寿命には、認知症にならないことも含まれていますので、頭がしっかりしている年齢までに自分の終わりを考えて行かなければなりません。
何を整理するか
寿命が残り10年となるとそろそろ認知症に罹患しないかが不安になります。また寿命が尽きて万一の時に、スムーズに家族に資産が移行する配慮が必要になります。このため、次の内容に絞り、整理したいと思います。
- 金融資産の整理・確保:認知症になった場合の金融資産の管理方法や取崩し方法。
- 介護・生活支援:自分が希望する介護・生活支援方法。
- 相続:資産等の自分が希望する相続人への確実な承継方法。
金融資産の整理・確保
全ての金融資産を家族と共有しておく事が必要です。また、今まで貯めた資産を取り崩す段階に入ります(既に入っているかもしれません)ので、その手当等も必要です。主なものとしては次のとおりです。
- 不要な金融口座の解約:あまり利用しない銀行口座や証券口座は解約して、必要最小限(できれば1~3行)の口座にまとめます。
- リスクの大きな株式の解約:株式を整理します。相続額を評価する場合には株式で保有した方が有利ですが、残された家族が不得意であれば考えるべきです。大型株かつ配当期待の大型株を残して動きの激しい個別株式は解約する。生活費等として今後運用・取り崩していくインデックス型投資信託を残す等です。ここをまとめると次のように集約する手があります。
- 個別株式を売却して個人向け国債を購入する。
- 個別株式を売却して一時払い生命保険を購入する。※この後の相続に関係します。
- 個別株式では比較的安定している高配当の大型株のみ保有する。
- 投資信託の定期売却サービスの可能なインデックス型投資信託で運用・取崩していく。
- 金融口座情報の共有:銀行名・キャッシュカード・パスワード・万一の時の連絡先等を家族と共有します。なお、パスワードは、簡単に目に触れないような配慮が必要です。
介護・生活支援
残り10年間となると認知症や介護方法等が心配になります。特に認知症対策は十分に検討しておく事が必要です。
- 認知症になった場合の対策:
- 成年後見人制度:法定後見人は家族以外の人が後見人になる可能性が高くなりますので、元気なうちに任意後見人制度を検討します。
- 家族信託(民事信託):成年後見人制度の代わりに家族信託を行う方法があります。
- 信託銀行の活用:信託銀行に財産を信託する方法があります。最近では、ある程度認知症になっても自分の口座のお金を使う事ができるようなサービス(三菱UFJ信託銀行の「つかえて安心」※下画参照)があります。
- 介護付き老人ホームも選択肢:
- 施設を見学する:障害が発生した場合は、家族に面倒をみてもらうのが一番ですが、奥さんも高齢化していくと簡単ではありません。そのためにも施設見学をし、自分の希望を伝えておく事が必要です。
- 自治体のサポート体制:
- 成年後見人制度等の相談窓口として各自治体の役所の窓口(福祉課とか)、地域包括支援センター、社会福祉協議会やNPO法人等がありますので、どのような相談が可能かを確認しておきます。
相続
自分が万一の時の対策です。残された家族にしっかりと資産を残したいものです。
- 相続人の明確化:自分の財産をどなたに相続させるかを明確にしておきましょう。特に、相続人が奥さんだけの場合(お子さん・夫の父母や祖父母の直系尊属がいなく、夫の兄弟姉妹がいる場合は(兄弟姉妹の子や孫も))、法定相続上、兄弟姉妹に1/4の相続が発生しますので、要注意です。確実に奥さんに全財産を相続させるためには、遺言書を作成しておくと安心です。兄弟姉妹には遺留分がありません。
- 生命保険の活用:相続財産を減らすためには一時払い生命保険を活用するのも手です。万一の時には、被相続人(例えば夫)の金融口座が凍結されてお金を引き出す事ができなくなりますが、生命保険は比較的早くお金が下ります。さらに、任意後見人には家庭裁判所から監督人が指名されますが、財産を生命保険等で少なくすると(1,000万円~1,200万円以下)費用を抑える事ができます。
- 信託銀行の活用:
- 信託銀行の商品で、自分が万一の時に信託金額から家族に定期・定額で受取りできるサービスがあります(三菱信託銀行の「ずっと安心信託」※下画参照)。簡単に申込みができるので便利だと思います。
さいごに
嫌な事はなるべく考えたくありませんので、なんとなく延び延びになっている終わりの整理について主なものを簡単にまとめてみました。
これでも一部で、考えなければならない事が沢山あります。さいごのさいごに悔やまれる事が無いように10年前といわず、早めに検討されることをお勧めします。そして検討結果は家族と共有しましょう。感謝される事、うけあいなしです。
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