コロナ禍に端を発するコンテナ輸送価格高騰等により日本郵船や商船三井の業績が大幅改善し、2022年3月期の配当利回りが10%以上になっています。これに加えて商船三井は1対3の株式分割を実施しました。配当利回りが大きく改善した場合に予想される権利確定後の株価下落について両者を調べてみました。
本稿の切っ掛け
実は信用取引で少し思惑と異なる結果となってしまいした。というのも、権利確定前後の信用売り⇒信用返却買は商船三井の方が利益が出ると思い実行したのですが、日本郵船の方が良かったという結果です。
これを少し詳しく説明します。
今期の日本郵船や商船三井の配当は、コンテナ輸送価格高騰等のよる業績改善で急激に増加しました。このような株は、特に期末権利確定後に株価が大きく下落する可能性が大ですので、権利付き最終日3月29日に信用売りし、3月30日以降信用返却買すると利益を得る事を考えたわけです。
購入した株式は両者の中でも比較的安定している日本郵船を購入したのですが、信用売りは商船三井で実行してリスクヘッジをしたつもりでした。商船三井の場合は、期末権利確定で1株が3株に分割されますので、この思惑で購入した方々が購入後にある程度売却して下げ幅をより大きくするのではないかと考えたわけです。
結果として、(この後に説明しますが)日本郵船の方が商船三井よりも大きく下がり、少々悔しい思いをした次第です。
このため、次の機会のためにも今回の失敗を整理しておこうと考えたわけです。
株式の比較
まず、日本郵船と商船三井の株式状況を見てきたいと思います。
主な指標
次の表は、日本郵船と商船三井の株価の主な指標です。商船三井は3月末基準日で1対3の株式分割を行いましたので、1株価が1/3になりましたので、(×3)で分割前相当の株価にしています。
この表からは、日本郵船の株価・配当利回りが商船三井よりもやや高めとなっていますが、同じような株式とみる事ができそうです。
1年間と6カ月間の株価比較チャート
次に株価の推移を過去1年間と過去6ヶ月で比較してみます。
1年間の比較
次のグラフは、1年間(2021年4月2日~2022年4月1日)の比較チャートです。開始日2021年4月2日からの相対比較となっています。1年間でみると日本郵船の方が株価が高く、良い傾向にあります。
6ヶ月の比較
次のグラフは、6ヶ月間(2021年10月4日~2022年4月1日)の比較チャートです。
過去1年間では、日本郵船の方が良く見えましたが、過去6ヶ月間では逆に商船三井の方が良いように見えます。
期末権利確定前後5日間の比較
それでは、次のグラフの2022年3月末の期末権利付与最終日(3月29日)前後5日間の株価推移はどうだったのでしょうか。
期末権利付与最終日の翌日(3月30日)で大きく株価は下落しています。そして、下落幅は日本郵船の方が大きく、この後の戻りも商船三井よりも劣っています。
これを、株価と前日比で現したのが、次に表です。商船三井に場合は、4月1日以降から株式分割を受けて株価が1/3になっていますので、継続性を保つために()の値は分割前相当(つまり4月1日以降株価の3倍)にしています。
株価の前日比を見ると、権利落ちの3月30日で日本郵船は‐950円、商船三井は-515円となっていますので、日本郵船の方が435円多く値を下げています。最低株式購入数100株では、43,500円も差が付くことになります。何故このような大きな差となったのでしょうか。
株主優待制度の比較
両者共株主優待制度がありますので、ついでに比較して見ます。
次の表は、株式優待制度の権利を得る最低株数での優待内容です。商船三井の方が優位に見えますが、何と言っても日本郵船の「飛鳥」のブランド力は抜群です。一般的にクルーズでの旅は高価ですので、そうそう行えるものでは無く、その中でもどうせ乗るなら日本一の客船である「飛鳥」の存在が大きいと思います。
条件 | 日本郵船 | 商船三井 |
---|---|---|
権利確定月 | 3月末日 | 3月末日・9月末日 |
最低株数 | 100株以上 | 100株以上 |
優待内容 | 「飛鳥」クルーズ料金優待券を3枚 10%割引 | 「にっぽん丸」クルーズ優待券を2枚 10%割引、30日以上で3%割引 |
予想と異なる結果に
元々は、日本郵船の株式を保有していました。権利付き最終日3月29日の翌日には、株価下落が予想できましたので、信用取引で損を回避しつつ配当・株主優待権利確保を狙うつもりでした。しかし、商船三井の方が権利最終日前後での値下がり幅が大きいのではないかと予想し、商船三井で信用売り⇒信用返済買を実行しました。その結果は、少し損失を出してしまいました。この結果を踏まえて考えを整理しておきたいと思います。
- 商船三井の株式分割の結果、購入し易くなり、権利落ち後も比較的株価が安定しました(予想では、安心売が起こると思ったのですが、反対でした。人気が継続しているのだと思います)。
- 日本郵船は現物株、商船三井は信用売り⇒信用返済買はNGでした。素直に同じ銘柄(日本郵船)で信用売り⇒信用買い戻しをすべきでした。権利確定日前後で利益を欲しなければ問題なかったのですが。
- 今後、日本郵船でも株式分割の可能性があるかは疑問です。日本郵船は、2017年に株式を10株⇒1株に併合した事があり、直ぐの分割はやり辛いのではないかと思います。しかし、東京証券取引所では望ましい投資単位を「5万円以上50万円未満」としていますので、今後可能性があります。
さいごに
3月期末前後の現物株保有継続+信用取引によるリスクヘッジに係る内容を反省を込めてまとめてみました。毎年の事とはいえ、期末前後の大きな節目が一つ終わり、少し心静かになったところです。
定年後の資産運用を考える上で、積立投資信託を中心に据えるとしても、少しの個別株投資は面白いもので、日々発見です。とはいえ、リスクの大きな取引は厳に慎まなければなりません。これからも、心に余裕を持って臨んでいきたいと思います。
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