認知症に備えておく事もリスク管理の一つ、元気なうちに想定時期も考える

加齢により認知症にかかるリスクは増えていきますので、事前に対策を考えておく必要があります。この検討時期は早いに越したことはありませんが、準備期間も必要ですので、統計等の情報から考えてみたいと思います。とはいえ、統計情報は幅がありますので、あくまでも目安です。

認知症とは

「認知症」とは記憶や判断力の障害により、生活に支障をきたす状態で病気の一つです。

記憶・判断力の障害等は、さまざまな原因で脳の細胞が死ぬ、又は働きが悪くなることによって起こり、社会生活や対人関係に支障が出ている状態がおよそ6か月以上継続している事をいいます。

認知症等対策を何時から考えるか

こんな事が起こったら考える

内閣府大臣官房政府広報室が作成した認知症に関する「もしも 気になるようでしたらお読みください」の資料にある「家族が気づいた違和感」では次の内容が書かれています。ただ、本人も家族が気付く前になんか変だなとの自覚があるようです。

  • お金が数えられなくなった。
  • パスワードが出てこない。
  • 洗濯をしなくなった。
  • 同じ話を一日に何度もするようになった。
  • 以前に比べて怒りっぽくなった。
  • 家族の名前が出てこなくなった。
  • 外出しなくなった。
  • 趣味だったことに興味がなくなった。(ゴルフとか)
  • 料理の味付けがおかしくなった。
  • 賞味期限切れの食べ物が冷蔵庫にたくさんある。
  • 同じものを何度も買ってきている。

認知症は病気なので、加齢による物忘れとは異なります。次の表は、政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」から抜粋した比較表です。

比較項目加齢による物忘れ認知症による物忘れ
体験したこと一部を忘れる
(例)朝ごはんのメニュー
全てを忘れている
(例)朝ごはんを食べたこと自体
もの忘れの自覚あるない
探し物に対して自分で努力して見つけようとする誰かが盗ったなどと他人のせいにする事がある
日常生活への支障ないある
症状の進行極めて徐々にしか進行しない進行する
もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホンから抜粋
※政府広報オンライン

統計値から考える

厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」を基に日本FP協会が作成。

要介護者等の性・年齢別構成(2019年)
【要介護者等の性・年齢別構成(2019年)】
※厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」を基に日本FP協会が作成。

次の表は、生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」を基に日本FP協会が作成した要介護時の初期費用月々の費用、そして必要と考えている介護期間を現しています。

世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の必要な初期費用
【世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の必要資金(初期費用)】
世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の月々の費用
【世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の必要資金(月々の費用)】
世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の介護が必要と考える期間
【世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の介護が必要と考える期間】

2021年(令和3年)でみると、平均初期費用234万円、平均月々費用15.8万円、平均介護期間181.2か月です。他の年と比較すると費用は少なくなっていますが、介護期間は逆に増えています。

これらから、2021年(令和3年)調査時の必要な平均介護費用は、次のとおりです。この金額は、1人の費用ですので、年金が期待できとはいえ厳しい数値です。

  • 平均介護費用3,097万円(≒平均初期費用234万円+平均月々費用15.8万円×平均介護期間181.2か月)

要介護時期と必要費用

ここで要介護時期と必要費用をまとめると次のとおりです。

  • 要介護時期:要介護者等の性・年齢別構成(2019年)を見ると男性75歳以上・女性80歳以上から顕著に増えていきますので、遅くとも各々5年前ぐらいには検討を終えている必要があります。
  • 必要費用:前節のとおり、平均介護費用3,097万円から想定される年金支給額を差し引いた金額が準備すべき必要費用となります。

何を準備しなければならないか

それでは、次に何を準備しなければならないかをまとめて見たいと思います。

  • 財産の整理・共有:銀行や証券会社等の金融口座、不動産、預貯金口座、万一際の金融機関等の連絡先等をまとめ、これらの情報を家族と共有しておきます。
  • 相続方法:財産の引継ぎ方法を考えておきます。
    • 信託の活用:費用がかかりますが信託銀行や民事信託(家族信託)を活用する方法があります。
    • 金融機関の整理:不要な口座があると思いますので、解約や統合をしておき、口座を最低数に減らします。
    • 相続関係書類に事前入手:相続に際には、被相続人(亡くなった人)の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等の書類が必要です。戸籍謄本には有効期限がありませんので事前に入手しておくのが良いです。
    • 名義の書替え(必要に応じて):例えば自宅等不動産が共有名義になっていた場合に生前贈与で奥さん名義にしておく事が考えられます。
    • 遺言書の検討:家族に確実に財産を相続させる際に検討すべきです。特にお子さんがいない場合は被相続人の兄弟も法定相続人になりますので、奥さんに全て相続させるためには必要です。
    • お墓や葬式の希望:お墓が無い場合は用意します。また葬式等に希望があれば、家族と共有しておきます。
    • ヘルスケア系REITの活用:ヘルスケア施設優待があるヘルスケア系REITを購入しておき、その時に備える方法もあります。
  • エンディングノートにまとめる:上記で述べた事はエンディングノートにまとめておいた方が便利です。ただし、エンディングノートは比較的取り出し易い所に保管しておくべきものですので、パスワードなどは別保管にしなければなりません。

関連記事をいくつか挙げておきますので、ご興味があればご覧ください。

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さいごに

認知症は人としての尊厳が失われそうで恐ろしい病です。もしもこの病に避けられないとしても、後の家族が極力負担にならない方法を考えて行きたいものです。若い時には考えもしなかった事が定年後は次々と現れます。

事前検討に早すぎる事はありませんので、直ぐにでも良い方法を見つけていきたいものです。

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