相続税の計算方法(相続税計算の流れと計算例)

相続税を考える場合は、自分が亡くなったと時の1次相続だけではなく、次の2次相続の事も考えた方が良いです。これにより一部は早めに贈与を考えた方が良い場合もあります。まずは相続税の計算方法を思い出しつつ、まとめてみました。贈与税については別の記事にまとめます。

相続税とは

相続税とは、被相続人(亡くなった方)から相続や遺贈(遺言者の財産を無償で譲ること)によって取得した財産などの合計額に対して、基礎控除額を除いた部分に対して課せられる税金です。

なお、相続税の申告及び納税が必要な場合は、被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内が期限です。

相続税の計算方法

相続税計算の流れ

相続税額の算出方法は、各人が相続などで実際に取得した財産に直接税率を掛けるのはなく、遺産額から基礎控除額を差し引いた残りの額を民法に定める相続分(相続の放棄も人数に含めます、また養子がいる場合も一定の人数を法定数含めます)により按分した額に税率を乗じます。
この場合、民法に定める相続分は基礎控除額を計算するときに用いる法定相続人の数に応じた相続分(法定相続分)により計算します。

一般的には次の流れになります。

  1. 課税価格合計額を計算します。
  2. 遺産にかかる基礎控除額を計算します。
  3. 上記1から2を差し引き、課税遺産総額を計算します。
  4. 上記3を法定相続人通りに分けたと仮定して各人の取得金額を計算します。
  5. 上記4に税率を掛けて各人の税額(仮)を計算します。
  6. 上記5の合計を計算し、これが相続税の総額になります。
  7. 法定相続通りでない場合は、実際に取得した財産の割合に応じて再配分して最終的な相続税額を算出します。

課税価格

課税価格とは相続税のかかる相続財産(自宅や預貯金等の本来の相続財産)とみなし相続財産(生命保険金や死亡退職金等亡くなったことで相続財産となったもの)から債務を控除したものから、亡くなる前(相続開始前)3年以内に贈与された財産を加えた金額です。

非課税財産

相続財産を計算する上で、次の財産は非課税です。

  • 墓所、仏壇、祭具等(金でできた高額の物は不可)
  • 国、地方公共団体、特定の公益法人等に寄付した財産(相続申請時に手続き等要)
  • 生命保険金のうち「500万円×法定相続人の数」
  • 死亡退職金のうち「500万円×法定相続人の数」

基礎控除額

以前はもう少し多かったのですが、平成27年以降の分から次のようになりました。

基礎控除額
=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の速算表

各々の按分された法定相続分に応ずる取得金額を下表に当てはめて計算し、算出された金額が相続税の総額の基となる税額となります。

相続税の計算例

簡単な仮定の下で、相続税の計算例を説明します。

計算の前提

  • 相続財産:8,000万円
  • みなし相続財産:生命保険金2,000万円
  • 法定相続人:妻、子供2人(長男、長女)

課税価格合計額の計算

法定相続人は3人ですので、みなし相続財産は次のとおりです。
みなし相続財産
=2,000万円-(500万円×3人)
=500万円

故に課税価格合計額は次のとおりです。
課税価格合計額
=相続財産8,000万円+みなし相続財産500万円
=8,500万円

基礎控除額

法定相続人は3名ですので、次のとおりです。
基礎控除額
=3,000万円+600万円×3人
=4,800万円

課税遺産総額

課税価格合計額から基礎控除額を差し引きます。
課税遺産総額
=課税価格合計額8,500万円-基礎控除額4,800万円
=3,700万円

相続人の所得金額

上記3を法定相続人通りに分けたと仮定して各人の取得金額を計算します。

相続人は、奥さんと子供2人ですので、奥さんが半分で1/2、子供半分で子供2人ですので、1/4づつになりますので各人の所得金額は次のようになります。

奥さんの相続金額=3,700万円×(1/2)=1,850万円
長男の相続金額=3,700万円×(1/4)=925万円
長女の相続金額=3,700万円×(1/4)=925万円

相続人の税額(仮)

上記4に税率を掛けて各人の税額(仮)を計算します。上記の相続税の速算表から全員1,000万円以下ですので、税率は10%になります。

奥さんの税額=1,850万円×10%=185万円
長男の税額=925万円×10%=92.5万円
長女の税額=925万円×10%=92.5万円

相続税の総額

上記5の合計を計算し、これが相続税の総額になります。

相続税の総額
=185万円+92.5万円+92.5万円
=370万円

相続人の税額の調整

今回のように法定相続どおりの配分であれば上記で終了です。

しかし、法定相続通りでない場合は、実際に取得した財産の割合に応じて再配分して最終的な相続税額を算出します。
例えば、長女が相続放棄をしている場合や遺言書により奥さんに全てを相続させる場合などでは、次のようになります。

【長女が相続放棄した場合

奥さんと長男で相続金額が半分ずつになりますので、次のとおりです。

奥さんの相続税
=相続税総額370万円×(相続金額1,850万円/課税遺産総額3,700万円)
=185万円

長男の相続税
=相続税総額370万円×(相続金額1,850万円/課税遺産総額3,700万円)
=185万円

【奥さんが全て相続した場合】

奥さんの場合は、相続財産の半分か、または1億6千万円までは課税されませんので、このケースも多いかもしれません。

奥さんの相続税
=相続税総額370万円×(相続金額3,700万円/課税遺産総額3,700万円)
=370万円
となるところですが、相続金額3,700万円<16,000万円 ですので相続税はありません。

さらに相続税について、詳細な内容を知りたい方は下記のWebサイトをご覧ください。

事前に考えておくべきこと

上記例で、奥さんに全て相続させれば税金がかからないので、それが良いかもしれません。ただし、このことを含めて事前に考えておかなければならない事がありますので、主なものを説明します。

  • 奥さんに全て相続させる場合は、2次相続の事も考えておく必要があります。つまり奥さんが亡くなった時の相続です。上記例では、子供に全て相続されますので、そのことも考えておきましょう。
  • 同じく奥さんに全て相続させる場合は、もしも子供に不満があると遺留分を請求される可能性があります(遺留分減殺請求と言います)。その場合、子供が一人の場合は相続財産の1/4(=1/2×1/2)、子供が二人の場合は一人当たり相続財産の1/8(=1/2×1/2×1/2)が取得できる権利となります。このようなことが起きらないよう事前に家族で良く話し合っておく必要があります。
  • 相続税のような国税は原則、金銭で納める必要があります。ただし、相続税は、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により物納が可能です。しかし、不本意な処分になりますので、しっかりとその対策もしておきましょう。

さいごに

今回は相続について概観してみました。基礎控除額が下がった影響で多くの方が対象になってきました。1次相続だけではなく、2次相続についても考えなければなりません。また、場合によっては生前贈与も考えた方が良いかもしれません。贈与については、別の記事にまとめたいと思います。

相続により得たお金は自分で使えるわけでもないですが、残された家族に感謝されるように、また、争族とならないように、しっかりと対策をしておきましょう。家長はつらいですね。

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