年金繰下げ受給をすすめない理由、ほんとうにお得なのか

年金繰下げ受給の開始年齢が、2022年4月から75歳まで可能になり、この場合元の受給額の84%増となります。しかし、加給年金がもらえない、年金カット後の差額分に増額率がかけられる、元を取るのにある程度期間が必要等の問題があります。これらについて説明します。

年金制度改正法(令和2年)の成立

年金制度改正法が2020年5月に成立しました。この改正の一つに年金の繰下げ受給の上限年齢の引き上げがあります。施行は、2022年4月からですが、年金繰下げ受給についてメリットがあるのかを考えて見たいと思います。

年金繰下げ受給の概要

年金の繰下げ受給について簡単に説明します。

受給開始時期による年金額の増減

老齢年金は、原則、(特別支給の老齢年金を除いて)65歳から受給開始になりますが、これより前に受給開始することを繰上げ受給、後から受給開始することを繰下げ受給といいます。

65歳からの年金受給額に対して、繰上げ受給の場合は月0.4%減額され、繰下げ受給の場合は月0.7%増額されます。

つまり、 繰下げ受給 の場合の増額率は次の式で求められます、

増額率=(65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数)×0.007

年金繰下げ受給の変更点

今までは、年金の繰下げ受給の上限年齢は70歳からでしたが、これが75歳に引き上げられました。これにより、年金の受給開始時期は、60歳から75歳の間で選択できるようになりました。

繰下げ受給の場合に、1月当り0.7%増額しますので、70歳から受給開始する場合は約42%増、75歳から受給開始する場合約84%増となります。

私たちはいつまで生きているか分からない長寿のリスクがありますので、なるべく年金受給開始を先に延ばして少しでも年金額を増やしたいと考えるかもしれません。でも、私は、本当にメリットがあるのか疑問に思っています。

以下、考えておかなければいけない点を記載します。

年金繰下げで注意すべき事

気になるのは、加給年金がもらえない、継続して会社に勤めている場合は年金からカットされた残りに対しての増額になる、元を取るのに意外と時間がかかる等の3点です。以下、説明します。

加給年金がもらえない

夫が65歳以降、妻が65歳未満であれば、妻が65歳になるまで夫の老齢厚生年金に加給年金が加算されます。その加給年金の額は390,100円/年です。

さらに、加給年金を受給している場合は、妻が65歳になった時点で加給年金は支給停止されますが、その代わり、妻の老齢厚生年金に振替加算が加わります。 振替加算額は数万円ですが、一生加算されます。

ただし、繰下げ待機期間中は、加給年金部分も受け取ることはできませんし、奥さんが振替加算可能な年齢になっても受け取ることができません。また、途中から 加給年金額を受け取っても、繰下げで増額されることはありません。なんとなく腑におちませんね。

それほど増えないかも

繰下げ対象額は、原則、65歳時点の老齢年金額ですが、65歳以後も企業等に勤め厚生年金の被保険者である方はその被保険者であった期間に在職老齢年金制度を適用したと仮定した場合に支給される老齢厚生年金額になります。

つまり、老齢年金から在職支給停止額(カットされた)の残りの額が増額率の計算の対象になります。本来受給できる老齢年金全部ではありません。

例えば、本来なら10万円受給できるのに受給調整で7万円カットされ受給年金額3万円になるとすると、この3万円に対して月当たり0.7%増の計算をしますので、注意が必要です。 これもなんとなく腑に落ちませんね。※金額は適当です。

この件にご興味があれば下記の記事をご覧ください。

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在職老齢年金

寿命と繰下げの効果

厚生労働省の平均余命のデータがあります(平成30年簡易生命表の概況から)。 65歳時で、男性19.7年、女性24.5年です。この場合の寿命は、男性で約85歳、女性で90歳などにです。結構長生きですね。

次の図は、年金受給を繰下げた場合(黄色)とX月後から繰下げた場合(橙色)を比較した図です(税金等は考慮していません)。

年金繰下げを行った場合と繰下げしない場合の均衡点

黄色と橙色が均衡するのは、142.8月(11.9年)後になります。つまりこれ以降長生きをしていると繰下げしない場合よりも年金総額が多くもらえることになります。

年金受給開始を70歳とすると82歳から、75歳とすると87歳になります。

どうでしょうか。いろいろな考え方はあると思いますが、お金に余裕があるのであれば、私ならば積立投資信託などにまわしますね。

さいごに

現時点では、私は年金繰下げ受給に魅力を感じません。一番の問題は、扶養者手当のような加給年金が受け取れない事です。約39万円/年は大きな金額です。

お上の方でもこれらの事は十分認識されていると思いますので、その内、改正案が出てくるのではないでしょうか。でもきっと私たちにとっては厳しい方に改正されると思います。年金財政も厳しいですので。。。

これからも複雑に?改正されていくと思いますので、頭のしっかりしているうちは???その内容により柔軟に対応して行きたいと思います。

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