2022年4月から改正される年金制度について、お得感が無い

令和2年に制定された年金制度改正法により、令和4年4月から年金制度が一部改正されます。これらについて概説し、そのお得度を考えてみます。年金等社会保険に係る費用については、毎年国費から大きな金額が補填されている状況ですので、やはりあまりメリットが無いようです。

改正内容

年金に係り2022年4月から改正される内容は次のとおりです。

  1. 繰下げ受給の上限年齢引上
  2. 繰上げ受給の減額率の見直し
  3. 在職老齢年金制度の見直し
  4. 加給年金の支給停止規程の見直し
  5. 在職定時改定の導入
  6. 国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え

これらの①~⑤について、簡単に見ていきたいと思います。

なお、本稿は次の日本年金機構サイトの内容を基にし、それに補足するかたちでまとめています。日本年金機構サイト内容の詳細については、次をご覧ください。

日本年金機構の2022年4月改正の説明ページ
※画をクリックすると該当サイトへ移動します。

繰下げ受給の上限年齢引上げ

老齢年金は65歳から受給資格が生じますが、繰下げ受給が可能(次に説明する繰上げ受給も可能)です。主な内容は次のとおりです。

  • 繰下げの年齢が従来66歳~70歳でしたが、2022年4月から上限が75歳になり66歳~75歳に引き上げられます
  • 繰下げた場合、年金額は1月当たり0.7%増額し、一生続きます。この結果、65歳から直ぐに繰下げると70歳から受給で42%75歳から受給で84%の割合で増額します。
  • 繰下げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に実施する事ができます
  • 在職老齢年金制度(65歳以降雇用されて厚生年金保険に加入していた期間がある場合に一定条件の下に支給される年金)により支給停止される額は増額の対象になりません。また、在職老齢年金を受給していても65歳以降の老齢年金の繰下げ支給には影響ありません。
  • 繰下げしている期間中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができません。また、加給年金額や振替加算は繰下げ割増の対象外です。

年金繰下げを申請する方法は簡単です。初めて年金を受ける場合は年金請求書を年金事務所等に提出しますが、次の繰下げ届出書も一緒に提出するだけです。この画の⑤の1、2に〇印を付けて申請します(片方に〇でも可)。

年金支給繰上げ届出書の抜粋
【年金支給繰上げ届出書(抜粋)】

繰上げ受給の減額率の見直し

老齢年金は65歳から受給資格が生じますが、60歳~65歳前の間で繰上げ受給も可能です。主な内容は次のとおりです。

  • 繰上げ受給をした場合、減額率は従来1月あたり0.5%でしたが、1月あたり0.4%に変更されます。この結果、60歳から繰上げ受給で減額率は24%(従来30%)となります。繰上げ受給される人は少し年金額が増える事になります。
  • 減額された年金は一生続きます。また、繰上げ請求した後、これを取消することは不可です。また、国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなります。
  • 原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求しなければなりません。

年金の繰上げ受給を請求する場合は、年金事務所等へ繰上げ請求書をしなければなりません。

在職老齢年金制度の見直し

在職中の老齢厚生年金受給者は、年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が一定の基準を超えたとき、年金の全部または一部が支給停止されます。その中でも60歳~65歳未満の人の在職老齢年金について一定基準の変更があります。主な内容は次のとおりです。

  • 60歳~65歳未満の人の年金の全部または一部が支給停止される基本月額・総報酬月額相当額の合計額が、従来28万円から47万円に変更されます。計算式は次のとおりです。
    • 合計額が47万円以下の支給停止額:0(全額支給)
    • 合計額が47万円超:(基本月額+総報酬月額相当額額-47万円)×1/2×12
  • 年金支給月額がマイナスになる場合は、全額支給停止となり、加給年金も支給停止となります。

60歳~65歳未満の人の在職老齢年金というと、特に「特別支給の老齢厚生年金」受給者が対象です。この「特別支給・・・」を受給できる方は、生年月日でいうと男性:昭和36年4月1日以前、女性:昭和41年4月1日以前が対象ですので、男性でも後4年~5年の間、女性では該当者無しです(65歳になると老齢年金の受給資格者になるので)。

加給年金の支給停止規定の見直し

加給年金は、厚⽣年⾦保険の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳時に⽣計を維持している配偶者または⼦がいる場合に自分の年金に加算される年金です。

  • 従来は⽣計を維持している配偶者に受取る年金が全額支給停止されている場合には加給年金が支給されますが、改定後は加給年金が支給停止となります。
  • ただし、令和4年3月時点で加給年金の支給がある人については、経過措置があります。

在職定時改定の導入

老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者期間での年金額改定に関する改定です。

  • 従来は老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者となった場合に65歳以降の資格喪失時(退職時や70歳到達時)にのみ年金額が改定されていますが、改定後は毎年1回になり10月分から改定されます。
  • 対象者は65歳~70歳未満の老齢厚生年金の受給者で、65歳未満の人は繰上げ受給をされていても在職定時改定の対象となりません。

雑感

今回の改定内容の内、「繰下げ受給の上限年齢引上」は定年後も長く働く人には良いと思いますがそれほどメリットを享受する人は少ないと思います。「繰上げ受給の減額率の見直し」についても適用する人は少ないと思います。「在職老齢年金制度の見直し」はもっと早くに実施して欲しかった制度ですね。これも適用できる人は少ないと思います。「加給年金の支給停止規程の見直し」は、受給者にとっては悪い改定です。「在職定時改定の導入」「国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え」はサービスを変えるだけですので、実質的なメリットは有りません。

このように見ると、大きな改定のように見えても受給権者にとっては良くなるという実感がありません。

例えば「繰下げ受給の上限年齢引上」を適用すると加給年金(通常390,500円/年)やその後の振替加算が支給停止になります。

また、繰下げ対象額については、65歳以後も働いている人に適用される在職老齢年金制度により支給される老齢厚生年金額になります。つまり、老齢年金から在職支給停止額(カットされた)の残りの額が増額率の計算の対象になります。本来受給できる老齢年金全部に対して増額率が適用される訳ではありません

このように「繰下げ受給の上限年齢引上」は良いとはいえ、加給年金等支給停止や在職支給停止額への増額無しなど、こちらを先に改善して欲しいと思います。

さいごに

少子高齢化の進展、コロナ禍やウクライナ情勢によるインフレ懸念への影響等があり、景気の低迷感が続いています。このような中で年金制度改定や税制見直しがなされており、我々にとってはこれからも厳しい方向に改定がなされるでしょう。

ある程度は仕方が無いとはいえ、政治家の方々には何か明るい目標・ビジョンを示して欲しいものです。

なんとなく制度疲労を感じますね。他国のようにならないためにも有権者としてしっかりした人たちに投票しましょう。

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2022年4月からの年金制度改定について
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