2022年4月から日本の株式市場は、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つに再編されます。株価が大きく変動する可能性のあるこれらの区分の上場基準、上場維持基準、コーポレートガバナンス、再編スケジュール等について説明し、留意すべき点を述べたいと思います。
株式市場再編の概要
JPX(日本取引所グループ)が、2022年4月4日(月)から新しい市場区分に再編されます。株式の動きは、半年前から1年間程度先行すると良く言われていますので、再編による影響等があるかもしれません。このため内容の確認等を行いたいと思います。
なお、本稿はJPXから公開されている「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について-第二次制度改正事項に関するご説明資料(2021年7月更新版)-」を参考に記載していますので、詳細をお知りになりたい方は下記の図をクリックするとJPX資料に移動しますので、ご覧ください。
市場区分の再編は、上記のとおり、現行「市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダード・グロース)」の5つの市場区分が、2022年4月4日(月)付で、 新たに「プライム市場、スタンダード市場、グロース市場」の3つの市場区分に再編されます。
なんとなくイメージが掴めにくいですが、経過措置の内容を見ると次のような感じのようです。
新たな株式市場の上場基準と上場維持基準
新たな株式市場の上場区分としては、企業規模や収益等はもちろんの事、コーポレートガバナンスが重視されています。このため、まず上場基準を簡単にみて、その後でコーポレートガバナンスの内容を確認して行きたいと思います。
新たな上場基準
次の表は、3つの新市場の主な上場基準を比較したものです。ここで目新しいのは、流通株式比率です。最近では、コーポレートガバナンスにより株主権利が重視されており、この一つとして流通株式比率が現れています(まだまだ低いとは思いますが)。
新たな上場維持基準
次は上場後の維持基準です。同じく流通株式比率が基準に現れています。
なお、上場維持基準には、もしも基準に達していない場合でも改善期間内に改善されていれば上場が維持されます。
また、上場維持基準に抵触したため、他の市場区分への移行を希望する場合は新たな区分で申請しなければなりません。現行のように自動的に実行されませんので(例えば市場第一部→市場第二部)、この変更申請を行わない場合は、上場廃止となります。
コーポレートガバナンスの重視
コーポレートガバナンス(企業統治)について簡単に説明します。JPXでは コーポレートガバナンス・コード(Corporate Governance Code:企業統治原則、以下CGと略します)を公表しており、上場企業がガバナンス強化を積極的に取り組むことを求めています。
CGには、5つの基本原則があり、その中に原則31と補足原則42の78の原則があります。5つの基本原則を紹介すると次のとおりです。
- 株主の権利・平等性の確保:株主の権利を適切に行使できる環境の整備や実質的な平等性を確保すること。
- 株主以外のステークホルダーとの適切な協働:従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会等々のステークホルダーとの適切な協働とこれらステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動を尊重する企業風土の尊重すること。
- 適切な情報開示と透明性の確保:法令に基づく情報開示と法令以外の情報提供にも主体的に取り組むこと。
- 取締役会等の責務:株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえると共に収益力・資本効率等の改善を図ること。
- 株主との対話:持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、株主総会の場以外においても株主との間で建設的な対話を行うこと。
CGの遵守は、新区分でも踏襲され、さらにプライム市場では高水準の整備が求められています。次の図は、市場に求められているCGの範囲を表しています。
移行スケジュール
株主区分の移行スケジュールは次の表のとおりです。
上場会社は、2021年9月1日から12月30日までに、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場のいずれかの市場区分を選択し、JPXに申請します。
JPXでは、申請された区分に上場基準が満たしているか等を判定し、新区分での上場結果が2022年1月11日(予定)に、JPXのウェブサイトに公表されます。
そして、2022年4月4日に新市場区分へ一斉移行されます。
保有株式の留意点
9月から新区分への申込が始まりますので、これから関連した情報が公表されてくると思います。
ここで気になるのが、現行市場第一部(東証一部)銘柄がプライム市場銘柄となるかスタンダード市場銘柄になるかです。特に、上場基準がプライム市場区分ギリギリの銘柄は株価乱高下となる可能が大きいですので要注意です。
また、大型株でもJT(日本たばこ産業)やJP(日本郵政)は国が大株主(財務大臣)ですので、流通株式比率が気になる所です。
留意点としては次のとおりです。
- 保有株式については、新上場基準を確認し、市場第一部からスタンダード市場になりそうな銘柄をピックアップして株価動意を注視する。外部環境以前に株価下落の可能性が高いので一旦売却も考える。
- JTは財務大臣33%強(2021年6月)、JP63%強(2021年3月末)です。プライム市場の新上場基準の流通株式比率は35%ですので、JTはOKです。JPもぎりぎり大丈夫だと思いますが、少し気にしておいた方が良いかもしれません。
- 新市場区分一覧の公表は1月11日ですので既に6ヶ月前を切っています。コロナ禍の終息等に期待がかかる事と相まって、不安定な動きが予想されますので、利益の出ている銘柄は益出しを行い現金を手元に持っていた方が良いかもしれません。
さいごに
新たな市場区分の見直しは、既にスケジュール等が見えていますので淡々と進む可能性があります。市場第一部からスタンダード市場になりそうな銘柄は一旦下落して持ち直していき、 市場第一部からプライム市場へ移行する銘柄は、市場環境に左右されるという事でしょうか。
しかし、何があるかわからない(理由が無くともなんでもあり)市場ですので、対処できるようにある程度の余力(現金)は持っていたいと思います。
大きく下がれば買い、買いそびれると静観するとか、いつでもチャンスはあると割り切ってコロナ禍でも対応していきたいと考えています。とはいえ欲との闘いは難しいですね。
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