健康で長生きは良いのですが、お金が無くなるのが心配です。定年後は年金が主な収入源になりますが、これに加えて投資信託の定期・定率売却サービスと高配当株式を活用することにより、長生きリスクを回避する事ができます。事例を基にどの程度の収入が見込めるかを試算します。
平均余命と平均年金収入
サラリーマンの人が完全定年65歳として、後どのぐらい生きていけるのでしょうか。厚生労働省資料「令和元年簡易生命表の概況」の「簡易生命表による平均余命(2019年)」から算出するとだいたい夫(男性)の寿命は85歳、妻(女性)の寿命は90歳となります。
また、総務省の2019年(令和元年)家計調査報告<家計収支編>では、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の実収入237,659円/月で、この実収入に対する不足金額は33,269円/月となっています。
いつまで生きていけるのかは誰にもわかりませんが、お金の面でギスギスする生活も面白くありません。そこで本稿では、高配当狙いの株式と投資信託定期売却サービスを活用し、年金以外に10万円程度増やす方法を考えてみたいと思います。
高配当株式の活用
私が株式投資を始めたころは、配当利回り1%のものはほとんどありませんでしたが、今は、配当利回り3%以上の有名企業が結構あります。昨日終値(2021年8月18日)の配当利回りをYahoo!ファイナンスから拾ってみると次のとおりです。
- 日本たばこ産業(JT):6.05%
- 日本郵政:5.31%
- 三井住友FG:4.39%
- 三菱商事:4.05%
- 東京海上HLDG:4.00%
- オリックス:3.85%
- NTT:3.87%
この中で日本たばこ産業やオリックスなどは株主優待制度もありますし、JPX(日本取引所グループ)が上場企業に求めているコーポレートガバナンス強化に伴い、より一層、利益の株主還元が図られていく傾向にあります。
このような中で、投機的な株式取引を避け、平均4%程度の高配当狙いの株式投資が可能です。
なお、高配当狙いの株式投資については、次の記事にまとめていますので、ご覧ください。
総務省家計調査では収入が主な年金である高齢者夫婦二人世帯で40万円/年程度不足するという報告がなされています。退職金等から1,000万円捻出できれば、株式投資や不動産投資で不足分を補填する事ができますので、その方法・可能性を説明します。[…]
投資信託の定期売却サービス
投信信託の定期売却サービスとは投資信託を指定方法で定期的に売却して受取る事ができるサービスで、年金生活での生活費を補う目的などで活用されます。
定期的に売却する指定方法としては、定額指定(一定額を毎月売却)、定率指定(一定比率を毎月売却)、期間(定口)指定(期間に応じて計算された一定口数を毎月売却 )があります。
次の記事では受取期間が比較的長くできる定率指定での利用方法に的を絞って説明していますので、ご覧ください。
老後で年金が主な収入になる場合は、生活費が不足気味になります。その対策の一つとして今まで積立して保有している投資信託を計画的に取崩していく投資信託定期売却サービスがあります。このサービスの定率指定と再投資によりどの程度投資信託の資産を延ば[…]
具体事例
夫婦二人の年金、そして株式配当と投資信託定期売却サービスを活用した場合の年収について試算してみます。
仮定
試算する上での前提条件は次のとおりです。
- 年金
- 夫(元サラリーマン)
- 妻(専業主婦、夫の3歳年下)
- 夫(基礎年金):78万円
- 夫(厚生年金):120万円
- 夫(加給年金):39万円※妻が65歳になるまで。
- 妻(基礎年金):78万円
- 株式投資
- 株式原資:1,000万円
- 配当利回り:4.0%
- 投資信託定期売却サービス
- 原資(投資信託の当初保有額):1,000万円
- 投資信託の分配金利回り:3%
- 受取の指定方法:定率指定10%、一定額を超える分はスポット買
- 1年目~5年目:生活費補填金額は年間80万円(5年目は79万円)
- 6年目~11年目:生活費補填金額は年間56万円
- 12年目~22年目:生活費補填金額は年間32万円
- 23年目~75年目:生活費補填金額は年間10万円(75年目の保有額198万円)
- 運用金融機関:楽天証券
原資は、株式投資の原資1,000万円と投資信託定期売却サービスの原資1,000万円の合計2,000万円です。大卒の平均的な退職金ぐらいでしょうか。原資が多いと思われる方は、切れの良い数値に直してください。例えば、半分にすると年金以外で受取れる金額も半分になります。
年金以外に当面10万円/月(120万円/年=10万円×12月)受取るようにするには、株式配当額40万円/年(=1,000万円×4%)がありますので、後は投資信託定期売却80万円/円が必要です。
このため、投資信託定期売却では、定率指定10%(1年目は100万円/年=1,000万円×10%)とし、当面年間80万円以上受取れるようにします。この内、年間80万円は生活費に充て、これを超える分は同じ投資信託に再投資(スポット買)します。年間80万円を受取れるのは約5年間ですが、その後年間56万円、年間32万円、年間10万円と下げていきます。
年を重ねると支出も減少しますので、このように仮定しています。トータルの収入がどの程度になるのかは、この後の試算結果の表をご覧ください。
また、運用金融機関を楽天証券にした理由は「定率指定が可能」と「定期売却設定でもスポットの売買注文が可能」の2点です。楽天証券の詳細については、次のサイトをご覧ください。
試算結果:夫婦健在の場合
次のグラフは、投資信託定期売却サービスにおける年間受取額と経過年数との対応を現したものです。
緑色線は定率指定10%の場合、青色線は定率指定10%かつ毎年一定額超過分をスポット買(再投資)した場合です。青色線の最後の10万円/年ですが、これを9万円/年にするとほとんど原資(投資信託保有額)が減らなくなります(この部分はグラフに現れていません)。
次の表は、夫婦年齢の節目における年収(夫婦)を表しています。夫の加給年金39万円は妻が65歳になると無くなりますが、代わりに妻の基礎年金78万円が始まります。
夫婦共に健在で、夫103歳、妻100歳の時には、株式原資で1,000万円(株価上昇は無視)、投資信託原資で約198万円がまだ残っています。
試算結果:夫が先に亡くなる場合
一般的に夫の方が先に逝きますので、夫の寿命を80歳と仮定します。
夫の加給年金は既に妻65歳時点で無くなっていますので、これに夫の基礎年金と厚生年金が追加で無くなります。ただし、妻には遺族年金90万円(=夫厚生年金120万円×3/4)が支給されます。
妻100歳の時には、株式原資で1,000万円(株価上昇は無視)、投資信託原資で約198万円がまだ残っています。
留意点
気付き事項としては次のとおりです。
- 一般的に夫の方が先に逝きます。妻には妻の基礎年金と遺族年金(夫厚生年金分の3/4)が支給されますが、上記表を見ると年収が激減します。子供の居られる方は子の扶養になる事も選択肢ですが、そうもいかない場合は株式部分を取り崩すとか、その取り崩した分を投資信託へ再投資するとかの検討が必要です。
- 同様に相続への事前対処も必要です。例えば、投資信託定期売却を夫名義口座で実行している場合は、万一の時に夫名義口座解約等の相続対応が発生します。このため、株式投資や投資信託定期売却は、可能であれば妻名義口座で実行しておいた方が良いでしょう。少なくとも、夫と妻の口座は同じ金融機関に作っておいた方が良いです。
さいごに
やはり相続の事が気になります。家計・通帳等を奥さんが管理しており、さらに証券口座も分かるなら問題は少ないと思いますが、家計は奥さん、投資は旦那となるといざという時に混乱してしまいます。
自分(旦那)が亡くなった後でも、家族が困らないように事前に整理・対処しておきたいものです。 エンディングノートで金融口座・連絡先等を整理しておく事や場合によっては遺言書や家族信託等を検討しておく必要があります。
最後は家族に感謝されたいものですね。
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