株式投資をされている方は、損益通算・損失繰越のためと配当控除を活用するために総合課税で確定申告を行い、住民税では配当の源泉徴収のままにする申出を行う事が納税的に有利になります。これらについて説明します。
そろそろ確定申告の心構えを
今年も残り一月を切り、周りが慌ただしくなってきました。年末には会社勤めの人には「給与所得の源泉徴収票」が配布され、年明けには株式等投資を実施している人には証券会社から「上場株式配当等の支払通知書」、ふるさと納税を行っている人には「寄附金受領証明書」などが送られてきます。
さらには医療費控除のための診察レシートの集計等、事業を行っていないサラリーマン(サラリーウーマン)でも確定申告となると結構手間になります。しかし、意外と納め過ぎの税金はありますので、申告をして、しっかり還付してもらいましょう。
ここでは、株式等の投資に係る確定申告について概観します。
株式等投資における税金の申告
投資信託を含む株式投資(以下、株式等投資といいます)では、得られる利益として売買益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)があり、これらを確定申告する事により大きなメリットがあります。
株式等投資で確定申告を行うメリットは次のとおりです。
- 損益通算と損失の繰越し(3年間):株式等投資の売買損益について損益通算ができます。また、株式等投資の売買に損失が生じた場合に翌年以降3年間に繰越す事ができ、損益通算できます。
- 配当課税の低減:所得税と住民税において異なる配当課税方式を申告する事により配当課税が低減できます。
損益通算と損失の繰越し
株式等の売買において、損失が発生した場合に申請します。繰越された損失が翌年に控除しきれなかった場合はさらに次の年に繰越す事ができ、繰越された損失は3年間控除する事ができます。1度申請すると損益通算できる期間は3年間ですので、次の年に損失がなくとも申請が必要です。
株式等を特定口座で運用していない方は、必ず確定申告をしなければなりません。特定口座で運用している方は原則申告不要ですが、他の口座での譲渡損益と相殺する場合や上場株式等に係る譲渡損失を繰越控除する特例の適用を受ける場合には、確定申告をする必要があります。
詳細については、次の国税庁サイトをご覧ください。
株式配当における所得税と住民税で異なる課税方式の選択
給与収入が900万円以下(この収入の前後の方は税金を計算して確認された方が良いです)の人に株式配当課税の軽減効果があるといわれているのが、所得税を総合課税で配当控除を活用し、住民税の配当分は源泉徴収額のままにする事です。
株式配当の課税は、通常、配当を受ける際に「所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%の合わせて20.315%」が源泉徴収されます。住民税は税額を低減するためには源泉徴収のままで良いのですが、所得税・復興特別所得税については総合課税で配当控除を活用した方が良いという話です。
所得税の株式譲渡損失を含めて、各々を簡単に説明します。
所得税の申告方法
株式投資に係る所得税の確定申告の主なポイントは損益通算・繰越控除と配当控除の部分です。
株式等の損益通算と譲渡損失の繰越し控除
株式等の譲渡損失(株式売買で売却損が生じた場合)と配当所得との損益通算が可能ですが、配当所得は総合課税で配当控除を利用した方が有利ですので、配当所得との損益通算はしません。
このため、株式等の損益通算とは、その年の複数の株式売買における売却益と売却損との損益通算、および過去3年間から繰越された損失との損益通算となります。
これらを申告する場合は、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」及び「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある確定申告書を提出することになります。
同様に上記の後の年において更に損失を繰越す場合や繰越された損失額で損益通算を行う場合には、同じ書類を確定申告書に添付する必要があります。
各書式は次の国税庁サイトのものをご覧ください。
配当控除
配当所得を総合課税で扱う場合は、確定申告が必要です。総合課税ですので、給与収入に配当収入が加わりますが、「配当控除」を使う事ができます。
「配当控除」の計算方法は「所得金額(収入金額等)」×10%です。
配当について、総合課税と分離課税の比較を次のサイトでまとめていますので、ご興味があればご覧ください。
株式等の配当を受け取る際に、所得税等が通常源泉徴収されますが、高額年収でなければ、総合課税による配当控除を活用した方が有利だと言います。所得税について試算した結果では、確かに総合課税が有利です。確定申告は必要ですが、大切なお金ですので、し[…]
住民税の申告方法
給与所得者は一般的に住民税の申告について考えないと思いますが、これは所得税の内容を基に自治体が計算してくれるからです。このため何も言わなければ所得税で申告した総合課税のままで住民税を計算してしまいます。そうなると少し税金的に不利になりますので、住民税の配当課税は源泉徴収のままでお願いしますという申出が必要になります。
申出方法は、自治体により少し異なるようですので私の街の方法を一例として紹介します。
提出する書類は次のとおりです。
- 市民税・県民税申告書
- 上場株式等の所得に係る市民税・県民税申告不要等申出書
- 特定口座年間取引報告書(写し可)
1と3は、所得税の確定申告済ですので、ほとんど、その申告書の部分転記で済みます。3は、特定口座に限らず配当が課税された一般口座等証券口座全ての取引報告書が必要です。
原則、所得税の申告期限(3月15日)までの提出ですが、市民税・県民税の納税通知書が送られる前までに提出したものでも有効です(だいたい5月上旬)。
詳しくお知りになりたい方は次のサイトをご覧ください。
株式配当の税金は、 所得税を総合課税(配当控除あり)にし、住民税を申告不要にして源泉徴収(住民税5%)のままで行うと一般的に軽減されます。昨年に引き続き、2020年も申告してきましたので、申出書の書き方等具体例を紹介します。源泉徴[…]
まとめと留意点
株式等の投資をされている方が有利になる(損失を抑える)納税の方法をまとめると次のとおりです。
- 所得税の確定申告では、総合課税を選び、配当控除を活用する。
- 株式売買で損失が発生した場合は、損益通算・損失繰越しを行う。
- 住民税の申告では、住民税(例えば市民税・県民税)を申告しないを選択する。
なお、総合課税にすると、給与所得者の場合は給与収入に加えて配当収入が増えますので、所得税率を気にする必要があります。一般的に給与収入900万円以下の方は、総合課税が有利と言われていますが、このあたりの方は検算して確認した方が良いと思います。
特に気を付けなければならないのは、奥さんが株式投資等を行っている場合です。奥さんが総合課税を使うと金額によっては扶養者控除の要件から外れてしまいますので、NISA(少額投資非課税制度)のままで、収入に反映されないようのする事が大切です。
さいごに
株式等の投資をされている方にメリットのある確定申告について概観しえてみました。確定申告は少し面倒ですが、1年の投資の損益が明確になり次の投資方針を決める参考になりますし、なによりもほとんどの場合に税金が還付されてきます。
納め過ぎの税金はしっかりと返してもらい、趣味とか旅行とかに有効活用しましょう。大切なお金は大切に活用したいものです。
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