そろそろ来年に向けて今年(令和3年分)の確定申告を意識するようになってきました。株式投資をされている一定所得以下の方にはメリットのある住民税での配当課税申告不要の手続きがいらなくなるや退職所得課税の見直し等定年前後の方に関連深い内容が含まれていますので、興味のあるところを整理してみました。
令和3年度改正で興味にある項目
令和2年12月21日閣議決定された令和3年度税制改正では、個人所得課税、資産課税、法人課税、消費課税、東日本大震災からの復興支援のための税制等の一部見直しや納税環境整備等が含まれています。この中で、特に関心を持った内容は次のとおりです。
- 株式配当・株式譲渡所得の申告不要手続きの簡素化
- ふるさと納税(寄附金控除)の申告手続が簡素化
- 退職所得課税の見直し
- 住宅ローン控除特例の延長
以下、これらについて説明します。
所得税の確定申告のみで済む申告不要手続き
今回の税制改正で特に興味を持った内容です。株式配当課税を抑えるために、確定申告書は所得税と住民税の各々で提出していましたが、それが所得税の確定申告書だけで良くなります。
所得税と地方税における申告方法を分ける理由
株式配当の課税は、一般的に配当を受け取るときに源泉分離課税20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)で済ませていると思います。しかし、一定の課税所得以下の人の場合(約900万円以下)、所得税を総合課税として配当控除を使い、住民税は 源泉分離課税のままにする課税方式を選ぶと税金が軽減される可能性があります。
これを行うためには、所得税と住民税の各々において確定申告を行い、住民税ではさらに「上場株式等の所得に係る市民税・県民税申告不要等申出書」を提出する必要があります(注:方法は自治体により異なる場合があります)。
通常は所得税の確定申告書を提出するとそれを基に住民税を計算しますので、申告方法は手間がかかりました。住民税の確定申告書を作成するのも、ほとんど所得税からの転記ですし、「上場株式等の所得に係る市民税・県民税申告不要等申出書」 も不要を選ぶだけなので、少々腑に落ちない作業でした。
なお、地方税の申告書の作成方法等は次に記事でまとめていますので、ご覧ください。
株式配当の税金は、 所得税を総合課税(配当控除あり)にし、住民税を申告不要にして源泉徴収(住民税5%)のままで行うと一般的に軽減されます。昨年に引き続き、2020年も申告してきましたので、申出書の書き方等具体例を紹介します。源泉徴[…]
公開された令和3年度の確定申告書(案)
令和3年度税制改正の大綱の中に次の記述があります。
個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の全部について源泉分離課税(申告不要)とする場合に、原則として、確定申告書の提出のみで申告手続が完結できるよう、確定申告書における個人住民税に係る附記事項を追加する。
令和3年度税制改正の大綱
(注)上記の改正は、令和3年分以後の確定申告書を令和4年1月1日以後に提出する場合について適用する。
という訳で、令和3年分の確定申告書用紙にどのように反映されるのか注目していたのですが、国税庁のサイトに「令和3年分の確定申告書(今後変更する場合があります。)」と但し書き付きで公開されました。
次の図は、確定申告書B第二表の下にある「住民税・事業税に関する事項」の従来と新しい令和3年分との比較です。
令和3年分では、新たに「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄ができており、これにチェックを入れる事により、住民税での申告が不要になると思われます(まだ詳細説明がなく、書式も今後変更の可能性がありますので、実際に作成する場合は最新版でご確認ください)。
住民税の申告が無くなるので、余計な神経を使う必要がなく、大変助かります。
ふるさと納税(寄附金控除)の申告手続が簡素化
皆さん、ふるさと納税はお済でしょうか。ふるさと納税を行うと、寄附をした地方自治体から返礼品が貰え、所得税・住民税から寄附額の内、約2,000円(復興特別所得税の影響で負担額が2,000円を少し超えます )を引いた金額が控除できます(寄附金控除)。つまり、実質2,000円強の負担で地方自治体から返礼品が貰える事がメリットになります。
寄附金控除の適用を受けるためには、確定申告書に地方自治体発効の「寄附金の受領書」の添付が必要でしたが、令和3年分の確定申告から、ふるさと納税サイトを運営している特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」を添付する事で良いことになりました。
特定事業者としては次のとおりです。
ポータルサイト | 特定事業者 |
---|---|
ふるなび | 株式会社アイモバイル |
さとふる | 株式会社さとふる |
楽天ふるさと納税 | 楽天グループ株式会社 |
ふるさとチョイス | 株式会社トラストバンク |
ふるさとパレット | 東急株式会社 |
ふるさとプレミアム | 株式会社ユニメディア |
ふるさとぷらす | 株式会社エスツー |
セゾンのふるさと納税 | 株式会社クレディセゾン |
ANAのふるさと納税 | 全日本空輸株式会社 |
ふるさと本舗 | 株式会社ふるさと本舗 |
三越伊勢丹ふるさと納税 | 株式会社三越伊勢丹 |
JALふるさと納税 | 株式会社JALUX |
au PAY ふるさと納税 | KDDI株式会社 |
退職所得控除の見直し
令和4年1月1日以降に支払を受ける退職所得については、勤続年数5年以下の役員等以外の方に対する計算式が変更になり、その他の方は従来どおりです。計算式は次のとおりです(1,000円未満切捨)。
- 勤続年数5以下の役員等:
退職所得金額=退職手当等の金額-退職所得控除額 - 勤続年数5以下の役員等以外:
- 退職手当等から控除額を差し引いた後の金額が300万円以下
退職所得金額=(退職手当等の金額-退職所得控除額)÷2 - 退職手当等から控除額を差し引いた後の金額が300万円超
退職所得金額=150万円+{退職手当等の金額-(300万円+退職所得控除額)}
- 退職手当等から控除額を差し引いた後の金額が300万円以下
- 上記以外の場合:
退職所得金額=(退職手当等の金額-退職所得控除額)÷2
住宅ローン控除特例の延長
住宅ローン控除期間を13年間とする特例が延長され、令和3年1月1日から令和4年12月31日までの間に入居した方が対象となりました。概略次のとおりです。
入居した年月 | 平成21年1月から 令和元年9月まで | 令和元年10月から 令和2年12月まで | 令和3年1月から 令和4年12月まで |
控除期間 | 10年 | 13年 | 13年 |
要件等詳細については、国土交通省サイトをご覧ください。
さいごに
令和3年度税制改正については、今回紹介した他に、セルフメディケーション税制の見直し、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の拡充、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置見直し等個人に関係する内容が多くありますので、ご興味のある方は「令和3年度税制改正」で検索すると財務省・国税庁の資料がヒットします。
今回は、 令和3年度税制改正の中に配当課税に係る内容がありましたので、これを含めて興味のある項目についてまとめて見ました。あらためて保有株式等をみると、複数の証券会社、一般口座・特定口座・NISA口座、国内株式・米国株式等々、評価額が小さいにも関わらず思いのほか複雑になってきています。
万一の時に残された家族が苦労しないように、めんどくさい作業ですが、これらについても早めに整理していきたいと考えています。
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