奥さんが一人になった時の社会保険料と税金の負担-その1-

平均余命をみると女性の方が長生きです。夫が会社勤めをしていた場合は老齢厚生年金も夫の方が多いのが一般的です。夫が亡くなり奥さんがお一人様になった後は、遺族厚生年金と自分の老齢基礎年金が主な収入になりますが、社会保険料や税金の負担はどうなるのでしょうか。後期高齢者で夫婦二人の場合と奥さんがお一人様になった場合の負担比較について試算してみましたので、2回に分けて説明します。まずは、夫婦二人の負担額からです

試算する上での仮定

厚生労働省の令和元年の生命表から平均余命をみると、男性が65歳時点で19.83年女性(奥さんが3歳年下として)は62歳時点で27.34歳です。これから夫婦の寿命を決め、さらに収入は年金のみとして次のように仮定します。

  • 住んでいる所:神奈川県横浜市
  • 夫の寿命:85歳
  • 夫の年金額:
    • 老齢基礎年金(定額部分):781,700円
    • 老齢厚生年金(報酬比例部分):1,600,000円
  • 妻の年齢:82歳(寿命は90歳)
  • 妻の年金額:
    • 老齢基礎年金(定額部分):781,700円
    • 老齢厚生年金(報酬比例部分):100,000円
    • 振替加算:27,000円 ※少し丸めています

この仮定の下で、夫が85歳で亡くなる前後の収入額(年金のみ)を比較します。夫が85歳の時は、奥さんは82歳ですので、共に後期高齢者医療制度の対象者(75歳以上)です。

二人世帯での負担額

税金の計算では、社会保険控除がありますので、後期高齢者医療保険料、介護保険料、住民税、所得税の順番で負担額を見て行きたいと思います。

後期高齢者医療制度の保険料

後期高齢者医療制度は、75歳以上の方が加入する医療制度で、個人単位で入り、個人単位に保険料を計算して支払います。

保険者(保険給付や保険料を徴収する実施団体)は、後期高齢者医療広域連合といい、各都道府県に1団体、計47団体があり、各市町村がこの広域連合に加入しています。

保険料率

後期高齢者医療制度の保険料は、前年所得に応じた所得割額と定額の均等割額から成ります。横浜市が所属する神奈川県の保険料率(令和2・3年度)は次のとおりです。

  • 所得割額:8.74%
  • 均等割額:43,800円

保険料の試算結果

所得割額の基になる所得を計算すると次のとおりです。

後期高齢者医療保険料の所得割額の基になる所得の計算
【所得割額の基になる所得の計算】

夫の場合は、収入から公的年金等控除と基礎控除を差し引いた結果、所得割額の基になり所得は851,700円となりました。また、奥さんの場合は、所得控除等の結果、所得割額の基になる所得は0となりました。

これから後期高齢医療制度の保険金は次のとおりです。

後期高齢者保険制度の保険金
【後期高齢者保険制度の保険金】

夫婦二人世帯の後期高齢者保険制度の保険金は170,779円となりました。

介護保険料

介護保険制度では、65歳以上の人は第1号被保険者になり、前年所得を基に個人単位で計算されます。横浜市の場合は、前年所得等に応じて16段階(2020年)の介護保険料が決められています

この16段階に当てはめる際の合計所得金額については、公的年金等控除は対象ですが、扶養控除・社会保険料控除・基礎控除等は除外されます。

今回の夫のケースでは③合計が計算の対象となり、夫の前年所得1,281,700円を基に計算します。

また、奥さん(被扶養者)の場合は、「公的年金等収入額」と「その他の合計所得金額」の合計が80万円以下か超えるかで区分されます。今回のケースでは、年金収入が0円で908,700円ですので、80万円を超える区分になります。

その結果は次のとおりです。

介護保険料(横浜市、2020年)
【介護保険料(横浜市、2020年)】

この結果、介護保険料は、夫81,840円、妻74,400円、世帯合計156,240円となりました。

なお、介護保険料は、3年毎に改定され、2021年度(令和3年度)は新たな介護保険料になります。私の住んでいる街でも「介護保険のお知らせ」が来ましたが、だいたい4~5%程度の負担増になっていました。皆さんの街サイトでも新保険料が掲載されているかもしれませんので、ご覧ください。

住民税

住民税は都道府県民税と市町村民税から成り、各々前年所得に応じて課税される所得割と各世帯同一の均等割があります。

住民税の所得割は10%ですが、横浜市の場合は、神奈川県の県民税の均等割で300円、所得割で0.025%税の上乗せ分横浜市独自の「 横浜みどり税」が均等割の税率に900円上乗せされています。

つまり所得割では市民税8%と県民税2.025%、均等割では市民税4,400円と県民税1,800円となります。

その他に調整控除がありますので、今回のケースで試算すると次の表のとおりです。

2020年度の横浜市の住民税の一例
【住民税の一例(横浜市、2020年)

この結果、住民税額は23,174円となりました。

所得税

所得税の場合は、配偶者控除380,000円(住民税の場合は330,000円)、基礎控除480,000円(住民税の場合は430,000円)となります。

課税所得は94,681円ですので、所得税率(5%)と復興特別所得税率を合わせて5.105%の税率になります。

2020年度の横浜市の所得税の一例
【所得税の一例(横浜市、2020年)】

この結果、所得税等は4,833円となりました。

夫婦二人世帯の負担額

今回のケースで試算した後期高齢者医療保険料、介護保険料、住民税、所得税をまとめると次の表のとおりです。

夫婦二人世帯の負担額の一例(横浜市、2020年)
【夫婦二人世帯の負担額の一例(横浜市、2020年)】

合計355,026円となりました。世帯収入は、3,290,400円でしたので10%強の負担となっています。

その2に向けて

奥さんがお一人様になる時の比較のために、まずは夫婦二人世帯での社会保険料・税金等の負担額を試算してみました。その結果は、収入の1割強という負担率でした。

率としては意外と小さいように見えますが、後期高齢者となり収入が少なくなってからの負担です。医療・薬代等の負担が多くなってきますし、家の補修等も定期的にありますのでバカにはできないと思います。贅沢をしなければ良いのでしょうが。

本稿に続いて、「その2」では奥さんがお一人様になった場合の負担を試算してみます。一般的な年金額でいえば夫の老齢厚生年金の比重が大きかったと思いますが、その後は、遺族厚生年金と老齢基礎年金に頼るようになり、年金額がガクッと減ると思います。その反面、社会保険料の低減や減税措置がありますので、それらを見て行きたいと思います。

なお、私は税金等のプロでは無いので、細かいところでは誤りがあるかもしれません。気づいたところは適宜修正していきますので、その点は容赦ください。

続いて「その2」をご覧ください。

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