定年後も長い人生、安心した老後を送るために年齢に合った資産形成の方法が重要です。会社勤めをしている現役の頃はある程度のリスクも挽回できますが、定年後の資産取り崩しの段階になるとリスクを抑えて、長く資産を残せるような運用方法が必要になります。資産形成と運用方法についてまとめてみました。
人生における資産の推移
仮定する寿命の考え方
いつまで生きるのかは神のみぞ知るですが、厚生労働省が公開している2019年版資料の平均余命では、60歳時点では、男性84歳、女性89歳です。
長生きしてお金が無くなるのは悲惨ですので、余裕を見ておきたいものです。どの程度の余裕を見るかは、個人の判断になりますが、別の資料では、女性の場合、100歳まで長生きされる方が 1/4程度というデータもありますので、このあたりが一つの目安になります。
お子さんがいれば、最後は世話になる事も考えれば良いと思いますので、あくまでも目安です。
資産の推移のイメージ
次の図は、22歳から会社勤めを始めて人生を終えるまでの保有資産のイメージを表したものです。最後の95歳は、男性としては少し長生きですので、どこかで女性(旦那が亡くなって奥さん)に変わっているとみてください。例えば奥さんが3歳年下であれば、95歳のところは奥さん92歳と読み替えることになります。
しっかりライフプランを立てるためには、キャッシュフローを作成した方が良いのですが、今回は、ケーススタディとして気楽に見てください。
結婚(30歳)
22歳で入社してコツコツ貯め、30歳で結婚です。ここで一旦貯蓄(100万円と仮定)がほぼ底をつきます。いろいろ費用が掛かるので仕方ないですね。
マイホーム購入(40歳)
結婚後、奥さんも働いてくれて頭金(500万円と仮定)を貯め、念願のマイホーム購入です。子供がいると教育資金も必要ですので、なんとかやりくりをして資産を増やしておくことになります
ここから住宅ローンが重しになってきます。住宅ローンは極力、定年の60歳までには完済、難しい場合でも65歳までには完済するようにしてください。
定年退職(60歳)と継続雇用(~64歳)
60歳で定年退職です。この時点の資産額は500万円、退職金は1500万円として計2,000万円です。
さらに60歳以降も65歳前まで継続雇用で働くとして資産の目減りは無しとしています。
5.4万円/月取り崩し(65歳~95歳)
65歳からは年金生活です。
総務省統計局の「家計調査報告<家計収支編> 2019年(令和元年)平均結果の概要」の報告書にある高齢夫婦無職世帯の家計収支では、実収入237,659円に対して消費支出239,947円と非消費支出30,982円で、毎月33,269円不足します。この実収入の中には何かしら働いている等のその他収入20,676円がありますので、月額実質5.4万円(不足分33,269円+その他20,676円)程度不足していることになります。
このため、資産から取り崩す金額を5.4万円/月としています。
なにもしなくとも、95歳まで資産が持つという事です。意外と持ちますが、長生きを含めて、突発的な支出等を考えると安心はできません。
なお、実質5.4万円不足に関連する記事は次にまとめていますので、よろしければご覧ください。
年金生活を送る場合、約54,000円/月ほど不足するようです。夫の定年時に奥さんが60歳とすると、100歳まで安心した生活を送るためには、定年後40年間をある程度資産運用することが必須です。定年後40年間を過ごすための方法について問題を単[…]
資産形成・運用における留意点
次に資産形成やその資産運用、ローン返済等の方針・留意点等を記載します。
基本は分散
次の図は、アセット(資産)毎のリターンの推移を現しています。変動が大きく動いており、一つのアセットに集中投資することはリスクが大きいことを示しています。
投資は分散することでリスク低減を図る事ができますので、アセット分散、時間分散、地域分散を行う事が基本となります。
現役の時は積極運用
比較的若い時は時間が味方してくれます。また、給与が定期的に入ってきますので、少しリスクを取って高リターンを狙っても良いかもしれません。
例えば、アセットは株式の比率を高く、地域は先進国や米国も良いと思います。時間分散については、基本は積立投資ですが、一部は個別株式を購入し、投資方法を勉強するのも良いと思います。
ただし、あくまで余裕資金で実行する事が大切です。大事な種銭ですので、無理のない範囲で長く寝かせる事(中長期投資)ができるような資金を使うことが大切です。
定年前には借金を完済
主な借金としては住宅ローンがあると思います。住宅ローンについては、定年が60歳だとすると、極力その前に完済できるように計画してください。
定年後も結構長い生活が待っています。年金だけでは生活が苦しくなりますので、定年後継続して働きたくない/働けない場合は、特に定年前にローンを完済すべきです。
定年前のローン完済が難しい場合は、継続して働きとしても65歳まで完済するように計画してください。
退職後の運用
60歳を過ぎると資産形成では無く、リスクを抑える運用が中心となります。年金等収入が決まっていますので、若い時とは異なり、失敗は許されません。
ただし、奥さんが100歳まで資産枯渇を防ぎたいのであれば、引き続き、資産運用が必要です。上の図でみると103歳(奥さんが3歳年下)まで持たせなければなりませんので、2,000万円を原資として36年間持たせなければなりません。
原資2,000万円であれば、運用利回りほぼ1%で達成します。いろいろと計算して見たい方は次のサイトをご覧ください。
また、我々の年金原資を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の長期的な運用目標は、「賃金上昇率+1.7%」 ですので、GPIFのポートフォリオを参考にされると良いと思います。ご興味があれば次の記事もご覧ください。
公的年金を運用するGPIFのポートフォリオの見直しのニュースがいくつか出ていますが、このポートフォリオと同様な投資信託についていくつか紹介します。そして、がんばれ!!コロナファイターズ。GPIFとはGPIFは、年金積立金管[…]
一般的にリスクの高い運用比率は、100から自分の年齢を引いた割合に抑えるべきと言われています。人それぞれですが、これで考えると60歳では、40%以下(=100-60)に抑えるべきという事です。
感覚的には40%以下でも個別株式への投資であればリスクが大きすぎるような気がしますので、株式投資信託ぐらいに抑えた方が良いと思います。
75歳以降の運用
男性では、残り後10年というところでしょうか。リスク許容度はほとんど無い年代です。判断力や体力・気力も落ちてきていますので、そろそろリスクのある運用から撤退し、安全な預貯金口座に移行していく時期です。
金融口座等の整理
これは、75歳といわずに早めに着手した方が良いと思います。人生何があるか分かりませんので、残された家族のために金融口座の整理をしておくべきだと思います。
まだ頭がしっかりしている内に、人生の後仕舞いと共に金融口座等の整理をしておくと、万一の時に残された家族の手続きが比較的楽になります。銀行口座はできるだけ口座数を減らし(可能であれば2口座ぐらいに)、まだ証券投資を続けている場合は、1証券会社に絞る等です。
可能であれば、エンディングノートにまとめていくのが良いと思います。一部でも良いので。
さいごに
老後に安心して生活ができるような資産形成・運用の方法や留意点等を見てみました。一時期、定年時2,000万円必要が問題になっていましたが、確かに2,000万円あれば一応生活ができそうです。
後はご自身の生活スタイルとして、どの程度の保有資産があれば安心できるかを現実的な線で考え、それを実現するための資産形成方法やポートフォリオを検討することになります。ポートフォリオに関係する記事を次のサイトでまとめていますので、よろしければご覧ください。
定年後の生活を支える退職金(一時金)については、特にコア資産の部分の運用について、ある程度のインフレを考慮しつつもリスクを抑えるように慎重に実施しなければなりません。このため積立投資信託が一つの候補になります。コア資産を積立投資信託で運用[…]
なお、万一の時に残された家族が煩わしい手続きで大変な目に会わないように金融口座等の整理を行い、必要な情報はエンディングノートにまとめていく等、早めに手をつけていきたいものです。
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