公的年金等の源泉徴収税額の計算(当たり前ですが、企業年金と同じ計算式です)

公的年金等は、令和2年より控除額が10万円減額されます。また、公的年金等の支払を受ける時に、一定の割合で源泉徴収されます。源泉徴収される場合は、強制的に引かれているので、どのような計算で源泉徴収額が決まっているのかわからない方が多いと思います。確定申告等でしっかり戻してもらうためにも、ある程度理解しておきましょう。

公的年金等とは

公的年金や企業年金等の年金で、税法上は雑所得として扱われますが、公的年金等のくくりで控除があります。対象とされる公的年金等の範囲は次の制度に基づく年金です。

  • 国民年金
  • 厚生年金
  • 厚生年金基金、国民年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金等

公的年金等の源泉徴収票

次の図は公的年金等の源泉徴収票のサンプルです。令和元年の場合として、各々の項目を簡単に説明します。

支払金額(1)

対象となる年に支払われた年金合計額です。所得税等や社会保険料が差し引かれる前の金額です。

源泉徴収税額(2)

年金から源泉徴収された所得税および復興特別所得税の合計額です。

区分(3)

「所得税法第203条の3」の各号に区分されています。企業年金は、第4号適用分になります。

  • 第1号適用分:老齢基礎年金、老齢厚生年金、64歳までの特別支給の退職共済年金を受けている方で、扶養親族等申告書を提出されている方。
  • 第2号適用分:65歳からの退職共済年金を受けている方で、扶養親族等申告書を提出されている方。
  • 第3号適用分:退職年金(退職等年金給付)、経過的職域加算額(退職共済年金)を受けている方で、扶養親族等申告書を提出されている方。
  • 第4号適用分:扶養親族等申告書を提出されていない方(提出の必要のない方も含む。上記第1号、第2号、第3号に該当しない方)。

年金の種別(4)

国民年金、厚生年金、共済年金等の年金の種別を記載しています。欄がないものもあります。

本人(5)

特別障害者等該当するところに★印が付きます。

源泉控除対象配偶者の有無等(6)

「源泉控除対象配偶者」とは、受給者本人(当該年中の所得の見積額が900万円以下)と生計を一にする配偶者で、所得のない方または当該年中の所得の見積額が85万円以下の方です。配偶者は、婚姻届を提出済の方に限ります。

「一般」とは、源泉控除対象配偶者のうち、昭和25年1月2日以降に生まれた方です。また「老人」とは、昭和25年1月1日以前に生まれ方です。

控除対象扶養親族の数(7)

「扶養親族」とは、受給者本人と生計を一にする配偶者以外の親族で、所得のない方または当該年中の所得の見積額が38万円以下の方です。「特定(平成9年1月2日から平成13年1月1日までに生まれた扶養親族)」、「老人(昭和25年1月1日以前に生まれた扶養親族)」、「その他(特定及老人以外)」欄に該当する扶養親族の人数を記載しています。

16歳未満の扶養親族の数(8)

平成16年1月2日以降に生まれた扶養親族の人数を記載しています。

障害者の数(9)

「特別障害者」の人数を記載しています。なお、カッコ内には、同居の方の人数を記載しています。また、「その他」では、「普通障害者」の人数を記載しています。

障害者の定義は次をご覧ください。

非居住者である親族の数(10)

非居住者である親族の人数を記載しています。非居住者とは、国内に住所を有さず、かつ現在まで引き続いて1年以上国内に住んでいない方です。

社会保険料の額(11)

年金から特別徴収(天引き)された社会保険料の合計額が記載されており、この金額は、源泉徴収税額の計算対象から控除されています。

「源泉控除対象配偶者」、「控除対象扶養親族」、「16歳未満の扶養親族」(12)

各々の氏名を記載します。「区分」欄は、非居住者の場合に「○」印が記載されています。

公的年金等の源泉徴収税額の計算

上記(2)の「源泉徴収税額」の金額は、各支払期における源泉徴収税額(所得税額および復興特別所得税額の合計)を積算したものです。

なお、年金から特別徴収(天引き)された社会保険料がある場合、その金額は、社会保険料控除として税金の控除対象とされています。この場合の「社会保険料」とは、年金から特別徴収(天引き)された介護保険料および国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)の合計額です。

給与がある場合は、通常その給与から社会保険料が控除されていますので、この場合は、式に表れる社会保険料はゼロになります。

源泉徴収税額(所得税額および復興特別所得税額の合計)の算出方法は次の3とおりです。

扶養親族等申告書(以下、「申告書」といいます。)が提出されている場合(2に該当する場合を除きます。)

源泉徴収税額(所得税額および復興特別所得税額の合計)
=(年金支給額-社会保険料-各種控除額)×5.105%(合計税率)

退職共済年金の受給権者で、65歳以上の方が申告書を提出した場合

源泉徴収税額(所得税額および復興特別所得税額の合計)
={退職共済年金の年金支給額-社会保険料
-(各種控除額-政令で定める一定の額)}×5.105%(合計税率)

※政令で定める一定の額とは、47,500円にその年金支給額の計算の基礎となった月数を乗じて計算した額です。

各種控除額の説明は下記サイトをご覧ください。

申告書を提出していない場合

源泉徴収税額(所得税額および復興特別所得税額の合計)
={年金支給額-社会保険料
-(年金支給額-社会保険料)×25%}×10.21%(合計税率)

ここで、別の記事でまとめた「企業年金支給時の源泉徴収税額」の式を再掲すると次のとおりですので、上記と同じ計算式になることが分かります。結果的に当たり前の事ですが。

源泉徴収税額=年金支給額×7.6575%
※源泉徴収税額
=(年金支給額-年金支給額×25%)
×{所得税率(10%)+復興特別所得税10%×0.021)}

ご興味がありましたら「企業年金支給時の源泉徴収税額」に係る下記の記事もご覧ください。

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企業年金の源泉徴収税

確定申告が必要な方

公的年金と企業年金等、2か所以上の年金の支払者に対して扶養親族等申告書を提出している方や年金以外に給与所得がある方などは、基本的に、所得税および復興特別所得税の確定申告が必要です。

また、公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、所得税および復興特別所得税の確定申告は必要ありません。

しかし、医療費控除やふるさと納税の寄附金控除などを受けようとするでしょうからこれを含めて、通常は確定申告をした方が税金が還付されると思います。

さいごに

公的年金等は支給される際に所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。しかし、公的年金等には、公的年金等控除がありますので、65歳未満で最低60万円、65歳以上で最低120万円が公的年金等から控除できます。このため、収入が低くなる定年後の場合は、ほとんどの方が所得税等を払い過ぎている可能性があります。

源泉徴収されたこれらの所得税等は、確定申告を行い、公的年金等控除を使わなければ税金は還付されませんので、条件的に確定申告の必要性のない方でも、医療費控除等と一緒に確定申告をしてください。

所得税等が減るということは次回の社会保険料や住民税に影響しますので、手間を惜しまず、是非、確定申告をして、適切な納税に心掛けましょう。

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