保有する投資信託を定期売却サービスの定率指定を行うことにより、運用しながら長期間にわたり取崩して生活資金等に補填する事ができます。どのような投資信託が良いのかを具体例で示し、投資信託のリターンと運用利回りに応じて年間受取額と年末残高の推移を計算してみたいと思います。
投資信託定期売却サービスとは
投信信託の定期売却サービスとは、積立てた投資信託を指定方法で定期的に売却し(取り崩し)、その金額を受取る事ができるサービスです。
指定方法としては、定額指定(一定額を毎月売却)、期間(定口)指定(期間に応じて計算された一定口数を毎月売却 )、定率指定(一定比率を毎月売却)があります。
比較的長い期間に渡り受取るためには物価変更にもある程度追随できる定率指定が良いと考えていますので、本稿では、定率指定を前提に説明します。また、投資信託の定期売却サービスで定率指定ができる金融機関はまだ数が少ない状況です。ここでは、楽天証券で定期売却サービスの定率指定を利用するとして考えて行きたいと思います。
なお、定率指定の利用方法については、次の記事でもまとめていますので、ご覧ください。
老後で年金が主な収入になる場合は、生活費が不足気味になります。その対策の一つとして今まで積立して保有している投資信託を計画的に取崩していく投資信託定期売却サービスがあります。このサービスの定率指定と再投資によりどの程度投資信託の資産を延ば[…]
具体的な投資信託銘柄
それでは、定期売却する投資信託としては、何が良いのでしょうか。楽天証券の場合は、一般口座、特定口座、NISA口座、つみたてNISA口座、法人口座で、投資信託積立可能な銘柄から選択する事になります。
投資信託で資産を作ろうとする方は、NISAやつみたてNISAを利用すると思いますし、つみたてNISAは金融庁のお墨付きがありますのでつみたてNISA可能な銘柄から選びます。
次のは、楽天証券で取り扱っているつみたてNISA可能な銘柄から選定したものです。国内株式、米国株式、全世界株式、4資産均等、8資産均等の中で、最も管理費用の低い銘柄から選びました。
簡単に各銘柄の特長を説明します。
eMAXIS Slim国内株式(日経平均)は、同じアセット区分では最も管理費用が安いので有名なeMAXIS Slimシリーズの一つで、日経平均225の指数に連動する国内株式を対象として投資信託です。管理費用は0.1540%、平均リターンは9.5%(算定期間:2016.5~2021.4)と高い利回りです。委託会社は、三菱UFJ国際投信です。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は、同じくeMAXIS Slimシリーズの米国株式S&P500指数に連動する投資信託です。米国株式なので為替に影響を受けますが為替ヘッジ(円安・円高の影響を極力抑える仕組み)はしていません。 管理費用は0.0968%、平均リターンは11.5%(算定期間:2016.5~2021.4)と国内株式以上に高い利回りです。
SBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま(全世界株式))は、米国や日本を含む先進国株式、新興国株式の指数に連動する投資信託です。 為替に影響を受けますが為替ヘッジは無しです。管理費用は0.1102%、平均リターンは9.9%(算定期間:2016.6~2021.5)とポートフォリオでの米国株式比率が高いこともあり、良い値です。委託会社は、SBIアセットマネージメントです。
ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等)は、国内株式、先進国株式、国内債券、先進国債券のアセットに25%ずつ組合せた指数に連動する投資信託です。先進国株式や先進国債券は為替の影響を受けますが為替ヘッジ無しです。管理費用は0.1540%、平均リターンは4.8%(算定期間:2016.6~2021.5)と先に紹介した3つと比較すると利回りが小さいように見えますが、良い数値です。委託会社は、ニッセイアセットマネジメントです。なお、4資産均等は、日本の年金運用機関GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオと同じです。
eMAXIS Slimバランス(8資産均等)は、国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券、新興国債券、国内リート、先進国リートのアセットに12.5%ずつ組合せた指数に連動する投資信託で、為替ヘッジ無しです。管理費用は0.1540%、平均リターンは4.5%(算定期間:2016.5~2021.4)で、委託会社は三菱UFJ国際投信です。
次の図は、上記銘柄の2019年9月からのパフォーマンスを表したグラフです。全て、2020年3月のコロナ禍発生による大暴落を経て、ほぼ順調に復活しています。特に株式タイプの上昇が顕著であり、日本株式も急激に水準補正をしているのが見て取れます。
試算の前提
試算する上での前提条件は次のとおりです。
- 原資(投資信託の当初保有額)1,000万円:後でご自身の運用資金に読み替えやすくなるように切れの良い数値にします。
- 投資信託の運用利回り(分配金を含む)5%と2.5%:先の投資信託銘柄の平均リターンが良すぎる気がしますので、安全のため半分程度とします。つまり株式タイプで利回り5%、資産均等タイプで利回り2.5%とします。
- 受取指定方法は定率指定2%~10%:年間受取金額と投資信託年末残高を計算します。
- 運用金融機関は楽天証券:定率指定の可能な証券会社です。
- 投資信託定額売却サービス開始:夫65歳、妻62歳(夫の3歳年下)
なお、楽天証券については、次の公式サイトをご覧ください。
年間受取額と年末残高の推移
投資信託の運用利回り(分配金を含む)5%をCase1、運用利回り2.5%をCase2として試算してみます。
Case1: 投資信託の利回り5%
eMAXIS Slim国内株式(日経平均)、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)、SBI・全世界株式インデックス・ファンドを利用する場合です。前述のとおり平均リターンが良すぎるので約半分の5%として、これに投資信託定期売却サービスで定率2%、定率3%、定率4%、定率5%、定率6%、定率10%を指定した場合の年間受取額が次のグラフです。
夫婦で節目となる年齢とその時の受取額が次の表です。投資信託利回り5%で定期売却サービス定率指定5%では、受取金額が50万円(=1,000万円×5%)で一定となります。
そして次の表が、同じ条件での、売却後の年末投資信託残高です。先と同様に 投資信託利回り5%で定期売却サービス定率指定5%では、残高1,000万円で当初の原資が減りません。
Case2:投資信託の利回り2.5%
ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等)かeMAXIS Slimバランス(8資産均等)を利用する場合です。Case1同様に平均リターンの約半分の2.5%を投資信託利回りとして、これに投資信託定期売却サービスで定率2%、定率3%、定率4%、定率5%、定率6%、定率10%を指定した場合の年間受取額が次のグラフです。
そして次の表は、夫婦で節目となる年齢とその時の受取額です。投資信託利回り2.5%ですので、定率売却2%では年々受取額が増えています。
さらに次の表は、同じ投資信託利回り2.5%の場合の年末残高です。上記同様に定率売却2.5%では年々残高が増えています。
応用方法と留意点
今までの情報を基にどのように活用するかをまとめると次のとおりです。
- どの銘柄を選択するのかは自分の性格や運用方針に依りますが、年齢を重ねると細かく投資するのが面倒になりそうですので、なるべき長期間変更しなくとも良いような1銘柄を選択してはどうでしょうか。私の場合は、SBI・全世界株式インデックス・ファンドかeMAXIS Slimバランス(8資産均等)です。
- 例では原資1,000万円としています。原資500万円の場合は表の半分の値になりますし、原資300万円の場合は表の3/10の値になります。ご自身の可能な範囲で売却する定率を決めてください。
- 開始早々は、余裕があるかもしれませんので、取崩しを遅らせても良いですし定率を下げて開始しても良いと思います。最初から浪費する必要はありません。
- 楽天証券の定期定率指定では、同じ口座での積立設定のある銘柄を指定する事はできませんが、スポット売買は可能です。金銭的に余裕がある場合は、定期売却設定の銘柄にスポット買で追加をしておくと後が楽になります。
- 一般的に奥さんの方が長生きです。夫だけで運用していると万一の時に口座凍結されますので、奥さんの口座でも同様に利用しておいた方が良いです。→これについては別稿でまとめたいと思います。
さいごに
投資信託の定期売却サービスでの定率指定による資産延命策を具体的な銘柄でまとめて見ました。ただし、つみたてNISAでは、金(ゴールド)の投資信託がありません。一般的に米国市場を中心に投資が回っていますので、国内株式・先進国株式・新興国株式等指数は米国株式指数に強い相関があります。そして、米国株式指数と逆相関にあるのが債券と金(ゴールド)です。このため、保有資産安定のためにはこれらもある程度対象にしておいた方が良さそうです。
さらに、自分が万一の時を考えると、本稿のようなスキームも奥さんや家族に引き継ぐことができませんので、この対策も必要です。これについては、別稿で考えたいと思います。残される家族のために、自身の心を安らかにする為にもしっかり考えたいものです。
===↓ブログ村ランキングに参加しています。
にほんブログ村