投資信託定期売却サービスの定率指定により、保有する投資信託を長く取り崩す事ができます。夫婦で考えた場合には同程度にしたら良いのかの考え方を説明します。また、一般的に妻の方が長生きですので、先に夫の方が亡くなり口座が解約されて定期売却が途切れてしまいますので、この対策についても考えてみたいと思います。
平均余命からみる夫婦の寿命
65歳定年後は、あと何年生きられるのでしょうか。保有資産との関係で大変重要ですが、神様でもない限り自分の寿命は分かりません。とはいえ資産運用・取崩しを計画的に行うためには、寿命の仮定は大切ですので、統計データからみてみたいと思います。
次の表は、厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」に掲載されている「主な年齢の平均余命」です。65歳時点で男(夫)は20.05年、女(奥さん)は24.91年ですので、夫は85歳まで、奥さんは3歳年下とすると+3約93歳となります。さらに女性は65歳を迎えるとその内2割の人が100歳まで生きているというデータもあります。
このため、試算する上では、夫の寿命85歳、妻の寿命100歳として年金額等を考えて行きたいと思います。
投資信託資産の延命に有効な定期売却サービス
投信信託の定期売却サービスとは、積立てた投資信託を指定方法(定額、期間、定率)で定期的に売却し、その金額を受取る事ができるサービスです。そして、比較的長い期間に渡り受取るためには定率指定が良いということを次の記事で説明しました。
保有する投資信託を定期売却サービスの定率指定を行うことにより、運用しながら長期間にわたり取崩して生活資金等に補填する事ができます。どのような投資信託が良いのかを具体例で示し、投資信託のリターンと運用利回りに応じて年間受取額と年末残高の推移[…]
投資信託定期売却サービスの受取金額算出の条件
先の記事を基に次の条件で受取年額と投資信託年末残高を試算します。
- 夫婦の年齢等
- 夫:サラリーマンで65歳で退職、年齢65歳、寿命85歳
- 妻:専業主婦、年齢62歳、寿命100歳以上
- 投資信託の原資:夫婦合わせて1,000万円
- 投資信託の運用利回り:2.5%
- 4資産均等ファンドや8資産均等ファンドの予想利回り(実績の半分強の値)
- 定期売却サービスの指定方法:定率指定(2%~10%)※楽天証券を利用
年間受取金額
次の表は、夫婦合わせて原資1,000万円(運用利回り2.5%)を投資信託定期売却サービスの定率指定2%、3%、4%、5%、6%、10%とした場合の年間受取金額です。
後半で年金額と一緒に考えますので、3%、4%の所を赤線で区切りました。原資や期待する受取期間等にも依りますが、本稿の条件では、このあたりが良さそうだと思うからです。
そして次の表は、同じ条件での対象投資信託の年末残高です。4%では、奥さんが100歳でも563万円残っています。
年間受取額の試算
老後の生活費の柱となる年金について試算します。
夫婦の年金
夫がサラリーマン退職者、妻が専業主婦で3歳年下ですので、次のように仮定します。
- 夫の老齢基礎年金:78万円(正確には満額780,900円)
- 夫の老齢厚生年金:140万円
- 夫の加給年金:39万円(正確には390,500円@妻:昭和18年4月2日以後生まれ、子無し)
- 妻の老齢基礎年金:78万円(正確には満額780,900円)
- 妻の振替加算:3万円(正確には33,031円@昭和33年4月2日~昭和34年4月1日生まれ、26,964円@昭和34年4月2日~昭和35年4月1日)
- 妻の遺族年金:105万円(夫の老齢厚生年金×3/4)
加給年金や振替加算についての詳細は、日本年金機構の「加給年金と振替加算」(クリックすると該当サイトへ移動します)をご覧ください。
夫婦の年金と投資信託定率売却の年間受取額
夫婦の年金と投資信託定期売却サービスを活用した年間受取額です。投資信託定期売却サービスでは、定率3%と定率4%の場合を計算しています。
この表で、妻は夫の3歳年下ですので、加給年金が夫65歳時点から妻65歳になるまで夫の厚生年金に加算されます。そして、妻が65歳になると妻自身の老齢基礎年金の支給と加給年金が無くなる代わりに振替加算が支給されます。振替加算は妻の年金に付きますので一生支給されます。
夫の寿命は85歳としていますので、夫の老齢厚生年金は亡くなった時に遺族厚生年金(以下、遺族年金といいます)となります。遺族年金は、夫の老齢厚生年金の3/4です。正確には、日本年金機構の「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(クリックすると該当サイトへ移動します)をご覧ください。
奥さん一人になると結構年額が減少しますので、これだけでは苦しいかもしれません。その他の貯えがどのぐらいあるかにも依りますので、余裕があればスポットで対象の投資信託を購入しておくとか定率を調整する等が必要かもしれません。お年ですし、お子さんのお世話になっているかもしれませんね。
奥さんへの引継ぎ方法
一般的に夫が亡くなると夫の証券口座は凍結されますので、それに備えておかなければなりません。これらについて説明します。
夫が亡くなった場合の証券口座の扱い
今回は楽天証券の投資信託定期売却サービスの例で説明していますが、当事者が亡くなった場合は、分かった時点で財産保全のため被相続人口座(亡くなった方=夫)が凍結され、相続手続が完了するまでは、売却・移管・出金等ができなくなります。これは金融機関の口座に共通している仕組です。
そして、相続確定後は相続人代表者(奥さん)の証券口座へ亡くなった夫の投資信託等が移管されます。証券会社が投資信託を勝手に解約してくれるのではなく、同じ証券会社の奥さん(相続人代表者)の証券口座に移管されることになります。
奥さんが証券会社と頻繁に取引をしていて慣れていると移管もスムーズですが、あまりタッチしていないと苦労させることになります。
引継ぎのための事前準備と心構え
ここでは楽天証券を例として説明します。他の証券会社では、投資信託定期売却サービスが無かったり、このサービスがあっても定率指定ができない場合などがありますので、注意してください。
亡くなった夫の投資信託等を引き継ぐには、奥さんも同じ口座を持ち、同じ取引をしているとその後に引継ぎが容易になります。証券会社は亡くなった方の口座を勝手に精算できませんので、奥さんの口座に移管するからです。このため、奥さんも夫と同じ証券会社の口座を保有し、同じ投資信託を購入し、その投資信託を定期売却サービスの定率指定で運用・引落ししていると証券会社の取引やサービスに慣れてきます。
楽天証券の例で、夫が楽天証券の投資信託定期売却サービス(定率指定)を行う事を前提にまとめると次のとおりです。
- 奥さんの楽天証券口座を作っておきます。そして楽天銀行の口座も作り、楽天証券口座とマネーブリッジ登録(両口座間の無料自動入出金サービス)で連携しておきます。さらに、楽天カードも作成しておきます。理由は次のとおりです。
- 楽天証券:投資信託定期売却サービス(定率指定)を行います。また、楽天ポイントで投資信託を500円以上購入すると楽天市場の買物ポイントが+1倍になります。
- 楽天銀行:楽天証券口座間で無料の自動入出金サービス(マネーブリッジ)が利用できます。また、この設定により楽天銀行口座(普通預金)の利息が0.1%になります。
- 楽天カード:楽天証券の投資信託を最大5万円/月まで楽天カードで購入できます。また、利用代金引落しを楽天銀行口座に指定する事で楽天市場の買物ポイントが+1倍になります。
- 夫と奥さんの原資を分け、奥さんの楽天証券口座でも投資信託定期売却サービス(定率指定)を利用します。この場合、投資信託は同じ銘柄にしておきます。原資1,000万円の場合は、例えば半々の500万円ずつとか、事情に合わせた配分にします。奥さんも同じ銘柄で行う事が重要で、これにより日頃の関心が深くなり、引継ぎが円滑に進む事が期待できます。
- 夫が亡くなり相続が発生した際には、奥さんの口座に引き継がれた投資信託を再度、投資信託定期売却サービス(定率指定)に設定します。これにより、以前と同じ年間受取額となります。
- 相続が複雑になりそうな場合は、遺言書や家族信託等を事前に検討します。最低でもエンディングノートなどで、金融資産や投資状況、万一の時の連絡先・注意点等をまとめて置いた方が良いと思います。
留意点
生活費に余裕がある場合は、投資信託定期売却サービスの対象銘柄をスポット購入して原資を増やすことが重要です。これにより、後の受取額が増えます。
奥さんは既に異なる証券会社のNISA口座で運用しているかもしれません。この場合は、(夫と同じ証券会社・同じサービス利用のため)その口座を解約し、新たに楽天証券のNISA口座を開設した方が良いと思います。楽天証券口座を追加する手もありますが、晩年は増やすより整理して減らす方が良いと思います。また、NISA口座の移管という手もありますが、手数料が掛かりますので、いっその事一旦売却・精算して、新たに楽天証券口座を作った方が良いと思います。
なお、NISA口座は年単位になりますので、例えば2021年末の約2ヶ月前から解約手続きを行い、2022年初から新たな証券会社(楽天証券)でNISAを始めるという流れになります。
相続時の税金を抑えるためには、夫から妻への1次相続に加えて、妻から子供への2次相続の事も考えておくのが理想です。これについては、ご興味があれば次の記事をご覧ください。
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さいごに
定年後はまだ長い人生が残っています。一般的には奥さんの方が長生きですので、本稿では奥さんが100歳までの投資信託定期売却サービスの定率指定を活用して、年金と合計した年間受取額を試算してみました。
人により受取れる年金額や投資信託の原資が異なりますので、安心した老後を過ごせるように、ご自身にあわせた数値に読み替えて試算してみてはいかがでしょうか。
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