老後資産を守り認知症発症後の安定的な資金を確保するための信託銀行の活用

自分が認知症になった場合の対策として、事前に信託銀行に財産を預ける方法があります。認知症になると本人の口座は凍結されて引き出すことができなくなりますので、残された家族にも大変苦労をさせることになります。この記事では、事前に実施できる、信託での対策例を紹介します。

信託について

信託とは、委託者(本人)が自分の財産を信頼できる受託者(信託銀行や個人など)に預け、委託者(本人)の意思に沿って、受託者が受益者(家族など)のために管理・運用する制度です。

この信託を活用することにより、本人の判断能力が落ちてきた場合でも財産を安全に管理することができます。また、本人が亡くなった後も家族などの受益者を指定しておくことで、相続がスムーズにいく場合があります。

ただし、信託を設定するときに家族などの受益者に財産がすぐに移るような場合は、贈与税の対象になりますので、注意しなければなりません。

民事信託

以前は、信託業務を行うことのできるところは、信託銀行だけでしたが、平成19年(2007年)の法律改正により、信託業の免許を持たない人でも、営利目的としないで、特定の人から1回だけの条件で信託を受託できるようになりました。これを民事信託といいます。

この制度により本人が認知症になった場合、家族の方が財産を安全に管理できるようになることが期待されています。
なお、家族が信託を行うことを、一般社団法人家族信託普及協会の商標登録で「家族信託」と言っています。

信託銀行の活用

信託については、主に信託銀行が扱っていますが、私が興味を持った信託銀行の商品を2つ紹介します。これは、判断能力が落ちた場合の対策として三菱UFJ信託銀行から販売している商品です。

みらいのまもり

まず一つ目は解約制限付信託「みらいのまもり」です。認知症の症状は人それぞれですが、判断力の低下により、高額な商品を何度も買ってしまったり、詐欺にあったりすることがあります。このようなことが生じるとせっかく苦労して貯めた老後資金が枯渇する可能性がありますので、それを防ぐ目的でできた商品です。

主な特徴は次のとおりです。

  • 原則本人だけでは中途解約できない。
    • 例外的に解約する場合は、受益者代理人(親族等)と当銀行の確認が必要。
  • 使い道が限定されており、次の2点の場合のみです。また、このお金は本人・代理人へではなく、老人ホームや医療機関に直接振り込まれます。
    • 老人ホームの入居金
    • 10万円以上の医療費
  • 手数料は無料。
    • 元本保証で管理手数料無料です。
    • ただし、信託金額は1,000万円以上で、金銭信託で運用され、その運用収益の予定配当額から信託報酬額が差し引かれます。
  • 認知症等の情報を定期的に受けられる。

なお、この信託の契約には、本人の他に親族等の受益者代理人を必ず1名または2名指名しなければなりません。

つかえて安心

もう一つは、代理出金機能付信託「つかえて安心」です。これは2019年3月から販売開始された比較的新しいもので、上記と同じく認知症対策用の商品です。認知症になっても自分のお金は自分で使いたいという目的でできた商品です。

主な特徴は次のとおりです。

  • 本人が自由に使え(引き出せる)、スマートフォンから簡単に引き出せる。
    • 他行口座でも可。
    • 振込手数料無料。
    • 20万円/月までの定額払い機能がある。
  • 代理人が指定できる。
    • 本人が認知症で口座凍結された場合でも、指定された代理人が引き出せる。
  • 見守り機能がついている。
    • 何に使ったかがすぐにわかる「みまもり機能」がついており、設定したメンバーに通知が届く。
    • 本人がスマートフォンをもっていなくとも構わない。
  • 手数料無料だが、以下の口座管理料(消費税別)が必要。
    • 設定・追加時:信託金額200万円~5,000万円で1.5% (5,000万円超で1%)。ただし最低報酬金額10万円~最高報酬金額15万円)
    • 信託設定後:480円/月

口座管理料が必要ですが、面白い商品です。今後も自分のお金を自分で使いつづけたい。認知症による口座凍結に備えておきたい。お金のことで、子供に揉めてほしくない。などの心配がある方には、良い商品だと思います。

なお、口座管理料の設定時の最低報酬金額は10万円ですが、これは信託金額だと約670万円預けた額になります。

さいごに

今回は、信託の概要と今注目している信託銀行の2点の商品を紹介しました。この中でも特に「つかえて安心」は魅力的な商品だと思いましたが、皆さんはいかがでしたでしょうか。私はあと10年ぐらいは大丈夫だと思っていますが、まずは、相続型信託で不測の事態をヘッジしておき、5年後以降に、他の良い商品がなければ、この「つかえて安心」を真剣に考えてみたいと思います。
なお、相続型信託については、次の記事に紹介していますので、よろしければご覧ください。

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