定年後の主な収入源は年金になりますが、生活費を補填する方法として株式配当金やインデックス型投資信託・ETFの分配金を期待する方法があります。銘柄選定の一つの目安として インデックス型投資信託のリターン(投資で得られる収益)を調べてみました。
老後の投資の中心になる投資信託とETF
定年後は、限られた年金が主な収入源になりますので、無理な投資はできません。しかし、定年後も長い人生が残っていますので、ある程度投資を行い、保有資産の延命を図る必要があります。
個別の株式は、5%以上の高配当利回りの銘柄もあり、魅力的なのですが、会社固有の事情により赤字や最悪倒産等の株式自体にリスクが生じますのでこれを定年後の投資の中心に据えるのは心配です。
その点、市場の指数に連動するインデックス型の投資信託・ETF(上場投資信託)は個別株価のリスクが分散されますので、比較的安定しており安心です。
本稿では、 代表的なインデックス型の投資信託について、現状ではどの程度のリターンが期待できそうなのかを調べてみました(2021年8月22日時点の数値を参考にしています)。
投資信託の比較
次の表は主なインデックス型の投資信託のおける、管理費用(信託報酬を含んでいます)、平均リターン(これ以降はリターンと称します)、設定日等を比較したものです。売買手数料は、全てノーロード(無料)で、管理費用が少ないですが、設定日を見てお分かりのとおり、まだまだ運用期間が短いものばかりです。
さらに、これらの銘柄はつみたてNISAやNISAを利用する事ができます。
設定日がバラバラでかつ期間がまだ数年と短いので利回り比較は難しいですが、主観も込めて特長を簡単に説明します。
eMAXIS Slim国内株式(日経平均)
東京証券取引所(東証)第一部に上場する銘柄から選定されて225銘柄の平均株価指数です。採用銘柄は年1回見直しされますので、次のTOPIXよりリターンは良い傾向にあるようです。
eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)
TOPIX(Tokyo Stock Price Index)は、東証第一部に上場する全銘柄を対象に、1968年1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したものです(日経平均は株価平均ですがTOPIXは時価総額を指数化)。
日経平均に比べて東証第一部銘柄全てが対象ですので、リターンが落ちる傾向にあります。
ニッセイJPX日経400インデックスファンド
JPX(日本取引所)日経400インデックスとは、東証第一部、第二部、マザーズ、JASDAQから上場期間、収益、ROE等「投資者にとって投資魅力の高い会社」になりそうな基準を指数化したものです。
出たての頃はリターン等期待されていましたが、現状の結果では平凡な成績です。
eMAXIS Slim 国内リート
東証REIT(不動産投資信託)指数に連動する投資信託です。不動産を個別に投資するには大きな資金が必要ですが、REITにより小口で投資が可能です。株式以外の資産として保有するのも良いと思います。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
米国を代表する500社の時価総額を基にS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出している指数です。投資の神様「ウォーレン・バフェット氏」が奥さんのためにこの指数に連動するインデックスファンドを推奨しているので有名です。
楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド
楽天と頭についていますが、「バンガード・米国高配当株式ETF」に投資するファンドです。バンガード社の扱う商品は信託報酬率等管理費用が少ないので有名です。
たわらノーロード NYダウ
NY(ニューヨーク)ダウは、ダウ・ジョーンズが算出している株価平均を基にしている指数です。対象企業は、米国上場企業30社と少ないですが、その分、良い会社が選別されているとも言えます。
なお、日経平均も以前は日経ダウと言っていました(計算方法は少し変わっています)。
eMAXIS NASDAQ100インデックス
NASDAQは、電子取引市場からスタートした事もあり、ハイテク企業やIT関連の企業など新興企業が占める割合が多い市場です。この中で、 NASDAQ100は、時価総額上位100銘柄(金融銘柄を除く)の時価総額加重平均によって算出される株価指数です。比較的優良なIT企業が選別されていますので、魅力を感じますが管理費用が少し高いのが気になります。
ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等)
株式にだけに投資するのではなく、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式の4資産に均等に25%ずつ分散投資するファンドです。日本の年金を管理するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオと同じですのでなんとなく安心感があります。
eMAXIS Slimバランス(8資産均等)
国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券、新興国債券、国内REIT、先進国REITの8資産に均等に12.5%ずつ分散投資するファンドです。新興国やREITに分散することで、4資産均等より、さらに安定を狙っています。
全体の傾向
米国に比べて、日本ではノーロードのインデックス型投資信託が普及しだしてからまだ日が浅いので、金融緩和による株式市場の活況(最近はコロナ禍の影響で元気がないですが)を受けてリターンが高めに出ている傾向にあります。今回ピックアップした投資信託では(限られた範囲ですが)次のようなことが言えそうです。
- 全世界、市場全体、アセット分散等の大きな括りの商品よりも銘柄を絞った商品の方がリターンが良い傾向にあります。業績により銘柄の入れ換えがあるのが良さそうです。
- 上記の反面として、全世界、アセット分散等の商品の方は比較的安定しています。
運用期間が短いのでリターンがどの程度普遍性を持っているのか怪しいですが、3%~4%以上が期待できそうですので生活費(年金)を補うのには、なかなか良い利回りだと思います。
次にアセット毎の傾向を見てみたいと思います。
下記の図は、先に紹介した「 eMAXIS NASDAQ100インデックス 」の資料に掲載されていたもので、当該ファンドと他のアセットとの騰落率を比較したものです。
このファンドでは、期待されるリターン16.4%、ベスト55.2%、ワースト-15.5%となっています。このグラフは、過去5年間の運用実績を基にしていますので、株式市場が比較的良い時期のものになっています。このため相対比較の一例として見るのがよさそうです。
このグラフでは次の事が言えそうです。
- 当然ですが債券よりも株式の方がリターンが良い(リスクが大きい)。
- 新興国の株式や債券のリスクが高い割には平均値がそれほど良くありません。
- 日本株と先進国株(米国株中心)を比較すると先進国株の方が上値も下値も優れています(リスクが小さい)。
これからの方針
投資のスタイルの一つとしてコア・サテライト戦略があります。安定運用の商品をコアと位置付け、それだけでは面白みが無いので個別株式のようなリスクの高い商品もある程度購入してこれをサテライトとして位置付ける方法です。
今回紹介した投資信託は全てコアとなりうる商品だと思います(人により考え方が異なりますが)。方針としては次の安定運用と積極運用をご自身に合った割合で購入して保有し、運用を続けながら、年間3~5%を生活費補填として取崩していくのが良いと思います。私の場合は、比較的変動の少ないコア商品3(8資産均等)と積極運用のコア商品1(S&P500)ぐらいの割合で実施しており、まだ取り崩す段階には至っていません。
- 比較的変動の少ないコア商品の購入候補
- ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等)
- eMAXIS Slimバランス(8資産均等)
- 積極運用のコア商品の購入候補
- eMAXIS Slim国内株式(日経平均)
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
- eMAXIS NASDAQ100インデックス
なお、今回の銘柄データは楽天証券のものを参考にさせていただきました。楽天証券は次のサイトからアクセスできますので、ご興味があればご覧ください。
さいごに
老後と言えども保有資産が枯渇しないように延命を図るためには少しリスクのある投資をしなければなりません。しかし個別株式への投資は面白いのですが、失敗すると後が辛くなります。このため、今回紹介した商品を投資のコアとして据え、少しリスクのある投資をされるのが良いと考えています。
定年後の長い人生を比較的安定した資産をベースとし、安心して少しリスクのある投資で楽しみたいものです。
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