総合課税と源泉徴収との配当課税の試算比較、所得税の結果はやはり総合課税

株式等の配当を受け取る際に、所得税等が通常源泉徴収されますが、高額年収でなければ、総合課税による配当控除を活用した方が有利だと言います。所得税について試算した結果では、確かに総合課税が有利です。確定申告は必要ですが、大切なお金ですので、しっかり申告しましょう。

所得税の試算結果

所得税を試算する前提となる仮定条件を決め、まずは比較結果を示します。各計算の詳細は後半で説明します。

試算する上での仮定

次のように仮定します。

  • 家族:夫婦2人、共に65歳未満、妻は配偶者控除可
  • 収入:会社勤務で給与は個別に仮定します。社会保険料等は標準報酬月額等を基に計算しますが、説明が複雑になるので、ここでは賞与も含めて、給与=標準月額×12 相当とします。
  • 株式等保有:5,000,000円保有しているとします。
  • 株式等配当:150,000円、株式等の3%としています。
  • 社会保険料支払額:厚生年金保険料は給与×18.3%×0.5、健康保険料(26,000円×12月)+介護保険料(4,000円×12月)と仮定します。健康保険料や介護保険料は所属する健康保険組合で異なります。私の勤めているところは全従業員同額ですので、その数値を切れの良い所で丸めて使用します。
  • 私的保険料支払控除:50,000円(火災保険料、地震保険料、生命保険料等)です。適当ですので、自分で計算される場合は、ご自身の数値に換えてください。
  • 医療費控除額:100,000円と仮定します。

試算結果

給与収入が500万円、700万円、900万円の場合の試算結果を下記に示します。

先に説明したとおり、ここでは計算の簡略化のため、給与=標準報酬の年収相当としています。

所得税額は後半で説明する給与収入毎の金額、配当支払時の源泉徴収額とは配当受取時に源泉徴収される所得税額分です。この中には復興特別所得税も含まれていますので、15.315%が源泉徴収されます。

これを総合課税の場合と源泉徴収された分離課税の場合で比較したものが下表です。合計は、分離課税の場合の源泉徴収された所得税額も加算して、トータルとしてどれだけ税金を納めているかの金額になります。

収入毎の総合課税と分離課税の比較
【収入毎の総合課税と分離課税の比較】

差額(=総合課税-分離課税)を見ると、給与収入500万円の場合は、所得税額も合計も総合課税の方が税金が少なくなっています

しかし、給与収入が700万円と900万円の場合は、所得税額では総合課税の方が逆に多くなり、合計では分離課税の方が多くなっています。所得税額の差は、給与収入が多いほど差が大きくなっています

一般的に株式等の配当がある場合は、総合課税として確定申告し配当控除を活用した方が、源泉徴収されたままにするよりも有利と言われています。

所得税は、所得が多いほど税率が上がっていきますので、このあたりが総合課税の方が有利な所なのでしょう。

なお、配当支払時の源泉徴収額を入れないで所得税額の差だけを見ると分離課税の欄はNISA(少額投資非課税制度)を利用した場合と見る事ができます。

配当だけを見ると、給与収入が比較的少ない場合(今回の場合は500万円なのでそれ以下でも)は意外とNISAも効果が無い事がわかります

個別ケースの詳細

個別ケースの具体的な試算方法を説明します。ここで、給与収入相当と言っているのは、各表の「収入①標準報酬の年額」の箇所を指しています。

給与収入は所得税の計算の基になり、標準報酬は社会保険料の計算の基になりますので、本来であれば異なるのですが、計算が煩雑になるので、ここでは「給与収入=標準報酬の年額」として扱っているためです。

なお、標準報酬には、給与の他に通勤費や残業代などが含まれています

給与収入相当500万円のケース

次の表が、総合課税と分離課税(源泉徴収)の場合を比較したものです。

計算の手順としては次のとおりです。

  1. 「収入」から「収入から控除」を差し引き、「所得」を出します。
  2. 「所得」から「所得控除」を差し引き、「⑬課税される所得金額」を出します。
  3. 「⑬課税される所得金額」から「所得税の速算表」に従い、一旦税額(⑭上記の税額)を算出します。
  4. 上記「⑭上記の税額」から「⑮配当控除」を差し引いた所得税(⑯差し引き所得税額)と「⑰復興特別所得税額」を計算して「⑱所得税額」を算出します。
  5. 最終的に納める所得税額(⑳合計)は、「⑱所得税額」「⑲配当支払時の源泉徴収額(所得税額等)」を加算した金額です。
収入500万円の場合の総合課税と分離課税の比較
【収入500万円の場合の総合課税と分離課税の比較】

次に各課税方式の計算方法の主なポイントを説明します。

総合課税の計算方法

収入は、①標準報酬の年額(給与相当)+②配当です。②配当は保有株式等の3%と仮定して150,000円(=5,000,000円×3%)です。

③給与控除は、国税庁の下記表から1,440,000円(=5,000,000円×20%+440,000円)です。

給与所得控除の計算式(国税庁)
【給与所得控除の計算式(国税庁)】
※表をクリックすると国税庁サイトへジャンプします。

④給与所得3,560,000円は①標準報酬の年額から③給与控除を差し引いて計算し、これに⑤配当所得150,000円を加えて所得⑥合計を算出します。

⑦社会保険料は、厚生年金保険料(=①標準報酬の年額5,000,000円×18.3%÷2)、健康保険料(26,000円×12月)、介護保険料(4,000円×12月)を合計した金額です。雇用保険は除外しています。

所得控除⑫合計1,827,500円は、上記⑦社会保険料⑧私的保険料控除(火災保険、地震保険、生命保険等)、⑨配偶者控除⑩基礎控除⑪医療費控除を加算した金額です。

⑬課税される所得金額1,882,500円は、「所得⑥合計-所得控除⑫合計」の金額で、これに下図「所得税の速算表(国税庁)」から一旦税額を算出します。つまり次のとおりです。

⑭上記税額94,125円=⑬課税される所得金額1,882,500円×5%

所得税の速算表(国税庁)
【所得税の速算表(国税庁)】
※表をクリックすると国税庁サイトへジャンプします。

⑮配当控除15,000円は全て配当の10%としています(②配当150,000円×10%)。

⑯差し引き所得税額79,125円は、⑭上記税額-⑮配当控除の金額です。

⑰復興特別所得税額1,662円は、⑯差し引き所得税額×2.1%の金額です。

⑱所得税額80,787円は、⑯差し引き所得税額+⑰復興特別所得税額の金額です。

⑲配当支払時の源泉徴収額(所得税額等)は株式等配当受取時に源泉徴収される所得税額・復興特別所得税額の金額です。

総合課税の場合でも、実際は一旦源泉徴収されて後で還付される対象の部分ですが、混乱する可能があるので、分かり易く0としています。

⑳合計80,787円が⑱所得税額⑲配当支払時の源泉徴収額(所得税額等)を加算した金額で、これが最終的に納める所得税額です

分離課税(源泉徴収)の計算方法

計算方法は総合課税の場合と同じですので、異なる箇所のみ説明します。

②配当・⑤配当所得・⑮配当控除は、既に源泉徴収されていますのでありません(0です)。

所得⑥合計は、総合課税の場合と比較して⑤配当所得分少なくなっています。

⑬課税される所得金額も、総合課税の場合と比較して⑤配当所得分少なくなっています。

⑯差し引き所得税額と⑰復興特別所得税額は、⑭上記の税額が少なくなっていますが、⑮配当控除が無い分多くなっています。

この結果、⑱所得税額88,444円となりました。

⑲配当支払時の源泉徴収額(所得税額等)は22,973円でした。

この結果、最終的に納める所得税額は⑳合計111,417円となりました。

給与収入相当700万円のケース

計算方法は同じですので、結果の表だけを示します。

収入700万円の場合の総合課税と分離課税の比較
【収入700万円の場合の総合課税と分離課税の比較】

給与収入相当900万円のケース

これも計算方法は同じですので、結果の表だけを示します。

収入900万円の場合の総合課税と分離課税の比較
収入900万円の場合の総合課税と分離課税の比較】

さいごに

株式配当等を総合課税で行うか、源泉徴収されたままの分離課税で行うかの比較を、給与収入が500万円、700万円、900万円のケースで比較してみました。

結果は、総合課税の方が納める所得税額が少ないという事になりました。

ただし、所得税額は所得が多くなるほど税率が上がる累進課税ですので、もう少し収入のある方は総合課税の方が不利になりますので注意しなければなりません。

結構な高額収入者が要注意ですので、多くの方はあまり関係ないかもしれませんが、知らないうちに不要な税金を納めている可能もあります。

後悔しないようご自身でも試算してみてはいかがでしょうか。大切なお金です、しっかり守りましょう。

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