民法改正と平成31年度税制改正による個人への税金に係る影響

平成30年6月に民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。また、平成30年12月に「平成31年度(2019年度)税制改正の大綱」が閣議決定されました。この結果、影響を受ける個人の税金関係の概要を説明します。

民法の成年年齢関係の改正

平成30年6月13日に民法の一部が改正されました。主な内容は次のとおりです。

  • 成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。成年年齢とは、単独で契約を締結することができる年齢と親権に服することがなくなる年齢という意味です。
  • 女性の婚姻開始年齢が16歳から18歳に引き上げられ、男性の婚姻開始年齢と同じになりました。
  • この改正は、平成34年(2022年)4月1日から施行されます。

成年年齢引き下げに関係する平成31年度税制改正の部分

民法改正により成年年齢引き下げに伴い、平成30年12月21日に閣議決定された「平成31年度(2019年度)税制改正の大綱」により影響を受ける主な個人の税金関係は次のとおりです。

  1. 相続税の未成年者控除の対象となる相続者の年齢が18歳未満(現行20歳未満)に引き下げられます。
  2. 次の受贈者の年齢が18歳以上(現行20歳以上)に引き下げられます。
    • 相続時精算課税制度
    • 相続精算課税適用者の特例
    • 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
    • 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度
  3. NISAとジュニアNISAの見直し

各々の説明

各制度の概要を説明します。

相続税に未成年者控除

法定相続人である未成年者の控除できる金額が、18歳未満(現行20歳未満)に引き下げられることにより、次のようになります。

未成年者控除額
=6万円×(18歳-相続開始時の年齢)
※1年未満の端数がある場合は1年として計算する。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは60歳以上の親や祖父母から成年の子供や孫に対して贈与する場合、贈与額の合計が2,500万円になるまで贈与税としては課税されない制度で、相続時に課税されます。成年年齢の引き下げにより、受贈者の年齢要件が18歳以上(現行20歳以上)になります。

相続時精算課税適用者の特例

上記と似ていますが、これは住宅取得資金を受け取る場合の特例です。一定の要件を満たすと親や祖父母が60歳未満であっても相続時精算課税が適用される制度です。上記同様に贈与額の合計が2,500万円まで非課税となりますが、相続時に相続税として課税されます。成人年齢の引き下げに伴い、この特例の受贈者の年齢要件が18歳以上(現行20歳以上)になります。

直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例

20歳以上の方が直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率が低くなります。この規定を「直系尊属の贈与に対する贈与税の税率の特例」と言います。成人年齢の引き下げに伴い、この特例の受贈者の年齢要件が18歳以上(現行20歳以上)になります。

贈与税の速算表は次のとおりです。

非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度

現状の経営者から後継者が非上場の自社株を贈与によって取得した場合、特例承継計画の提出等一定の要件を満たすと贈与税の納税が猶予される制度です。成人年齢の引き下げに伴い、非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度の受贈者年齢が18歳以上(現行20歳以上)になります。

あまり関係ないと思いますが、ご興味があれば下記をご覧ください。

NISAとジュニアNISAの見直し

NISA(少額投資非課税制度)は、非課税口座を開設できる年齢要件が、その年の1月1日において、18歳以上(現行20歳以上)になります。

また。ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)については、未成年者口座を開設並びに非課税管理勘定および継続管理勘定の設定できる年齢要件が、その年の1月1日において、18歳未満(現行20歳未満)になります。

ただし、NISA及びジュニアNISA共に、令和5年(2023年)1月1日以後に設けられる口座からが対象です。

さいごに

成年年齢の引き下げは、国民投票の年齢を満18歳にすることが国際標準である事と、憲法改正の国民投票には次の日本を背負って立つ若い方に参加してもらいたいということが主旨らしいです。ただ、税金の控除面でみると、20歳から18歳に引き下がることにより結果的に控除額が少なくなってしまう制度もあります。

あまりセコイことを考えてもいけないので、大局を見なければなりません。若い方には大いに期待したいものです。

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