2019年7月1日からと2020年4月1日から施行される相続関係の改正に伴い、配偶者の権利に係るいくつかの施策が創出されましたので、3回に渡り説明しています。今回は3回目で、2019年7月1日から施行され、配偶者等への相続において、知っておいた方が良いと思われる制度について説明します。
配偶者に係る主な改正内容
2020年4月1日から施行される改正では、被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮等の観点から、「配偶者居住権」、「配偶者短期居住権」、「婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の 贈与等に関する優遇措置」が創出・改正されました。これ先立つ前年の2019年7月1日に「預貯金の払戻し制度の創出」、「遺留分制度の改正」、「特別寄与料制度の創設」等が創出・改正されました。
この中から「預貯金の払戻し制度の創出」、「遺留分制度の改正」、「特別寄与料制度の創設」について説明します。
預貯金の払戻し制度の創出
現行制度(2019年7月1日前までの制度)では、相続発生後に、被相続人(故人)の預貯金債券(銀行口座等が凍結される)は、遺産分割の対象財産に含まれることにより、相続人が複数いた場合には、全員の合意がなければ払い戻すことができませんでした。
このため、生活費や葬儀費用の支払等に苦労する場合がありました。
改正後は、被相続人(故人)の銀行口座等(預貯金債券)に預入している金額に対して法定相続分の1/3までを相続人単独で払い戻しできるようになりました。ただし、1つの金融機関から払戻しできるのは150万円までです。
遺留分制度の改正
相続における遺留分とは、法定相続額の1/2をその法定相続人の請求により認める制度です。被相続人(故人)からの相続額が遺言等により法定相続分の1/2を下回る場合は、多く相続した方へ遺留分を侵害されたとしてその少ない額を請求することができます。
現行制度(2019年7月1日前までの制度)では、相続財産に事業用不動産などが含まれた場合に事業用不動産において事業を継承する相続人に全て相続させることにすると他の相続人から遺留分を請求され(遺留分減殺請求)、どの事業用不動産を共有名義にしなければならないことがありました。
改正後は、遺留分減殺請求された額を例えば事業用不動産の共有名義ではなく、金銭で請求できるようになりました。
さらに、その金銭が直ちに準備できない場合は、裁判所に対して、支払の猶予を求めることができるようになりました。
特別寄与料制度の創設
現行制度(2019年7月1日前までの制度)では、例えば被相続人(義理の父親)の相続発生時に、この義理の父親を今は亡き長男の妻が介護を続けていたのに、夫(長男)は既に亡くなっており、子供もいない場合は遺産をもらえませんでした。
改正後は、相続人以外(この場合は亡き長男の妻)の親族が無償で被相続人(義理の父親)の介護等を行っていた場合には、相続人(長男以外の兄弟等)に対して、金銭を請求できるようになりました。
これを「特別の寄与制度」と称しています。
ただし、特別寄与の金額については、基本的に相続人同士の協議によって決めることになります。もしも、これがまとまらない場合は、請求者が家庭裁判所に決めてもらうこともできます。
参考資料
上記で使用したイラストは次の法務省Webサイトのものを活用させていただきました。これには「遺言書保管法の制定」等についても解説されていますので、ご興味があればご覧ください。
さいごに
今回紹介した内容は、比較的分かり易く、改善点が図られているのが理解できます。しかし、遺留分制度では妻と子でも考えが異なる場合もあるでしょうし、特別寄与料制度でも相続者間の調整が必要ですので、さらに故人の遺志を反映できる制度にしてもらいたいと思います。
自分が亡くなった後に家族・親族内で争いが起きないように、事前に自分でも考え、必要に応じて税理士さんや弁護士さんと十分検討していきたいものです。
なお、配偶者の相続について、関連記事が下記にありますので、よろしければご覧ください。
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