ネット証券に口座を開設・取引している人が亡くなると相続手続きが必要です。費用が安く便利なネット証券ですが、定年を過ぎてそろそろ終活を考えると万一の時に備えて簡単にまとめておきたいと思います。
相続の方法
ネット証券における手続きの流れ
証券会社に口座開設・取引をされている方が亡くなった場合の手続きの概要は次のとおりです。
- 証券会社に連絡し、相続手続きに関する書類を請求します。
- 証券会社から相続手続きに関する書類が郵送されてきます。
- 必要な書類を確認・入手し、証券会社に返送します。
- 証券会社に預け入れている資産を整理後、「相続手続完了のお知らせ」が送られてきます。そして、被相続人様の証券総合口座が閉鎖されます。
楽天証券とSBI証券についてサポート窓口を紹介します。下記に画をクリックするとサイトへ移動します。
相続の形態
主に次のような相続の形態があります。状況により準備する書類等が異なりますので、まずは証券会社のサポートデスクに連絡をして手続きを進めます。なお、相続税の税額控除等各種特例をを受けるためには、相続の開始(被相続人の死亡)から10ヶ月以内に相続税申告・納付を行わなければなりません。
- 法定相続分どおりの場合:法定の相続割合どおりで分ける場合です。
- 被相続人の遺言による場合:遺言書には、公正証書で裏付けされたもの(公正証書遺言謄本)と自筆のものがあります。自筆遺言書は検認調書が無ければ家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
- 相続人による遺産分割協議による場合:相続人全員で遺産分割協議を行い、成立した場合に遺産分割協議書を作成し、手続きを進めます。
- 裁判所の遺産分割審判による場合:相続人全員で遺産分割協議を行い、不成立の場合に家庭裁判所の調停・審判がなされ、その結果を受けて手続きを進めます。
法定相続とは
配偶者は必ず相続人になります。そして血族は次の優先順で相続人になります。同じ順位の人が複数いる場合は全員が相続人です。先順位の人がいる場合は後順位の人は相続人になれません。
- 第一順位:子および代襲相続人
- 第二順位:両親などの直系尊属
- 第三順位:兄弟姉妹および代襲相続人
なお、代襲相続人とは、本来相続人になるはずの人が死亡などの理由で相続できないときに、その人の子が代わりに相続人になることです。例えば、第一順位の子が2人いて、その一人が無くなっている場合はその子供が代襲相続人になります。
遺産分割協議書が必要な場合
遺言書の内容どおりに遺産分割する場合や、法定相続分どおりに遺産分割を行う場合は、遺産分割協議書を作成する必要はありません。しかし、それ以外の方法で遺産分割する場合には、相続登記などで遺産分割協議書が必要になる場合があります。
口座残高が無い場合
亡くなられた方(被相続人様)の口座残高がない場合は、口座閉鎖のみの手続きとなります。証券会社から送られてくる口座の「廃止届出書」を返送するだけで済みます(相続人全員が確認できる戸籍書類・印鑑証明書の提出は不要)。
主な商品別の取扱方法
下記はように取り扱われます(楽天証券の場合を参考にしています)。
- 株式(現物):相続人代表者の口座へ移管します。遺産分割協議により複数口座へ移管の場合、各相続人の口座開設が必要です。
- 株式(信用):建玉の移管は不可で、建玉決済(反対売買)が実行されます。
- 預り金(円、外貨):相続人代表者の口座へ移管します。なお、相続資産が円/外貨のみで、相続人代表者が当該証券口座未開設の場合は相続人代表者名義の金融機関口座へ送金されます。
- 投資信託:相続人代表者の口座へ移管します。
- 外国株式:相続人代表者の口座へ移管します。
- MMF/外貨MMF:移管はされず売却されます(外貨MMFは外貨決済)。
- FX:建玉の移管不可で、建玉決済(反対売買)が実行されます。
考慮すべき事
手続きとしては淡々と実施していけばよいのですが(それでも結構面倒)、後に残った家族が困らないように特に考慮すべき点を備忘的に記載します。
- 取引に無い証券口座等は自ら早めに解約しましょう。
- 法定相続の場合でも「被相続人(亡くなった人)の出生から逝去までの戸籍謄本」が必要です。これの代わりになる「法定相続情報一覧図の写し」も「法定相続情報一覧図」登録時に「被相続人(亡くなった人)の出生から逝去までの戸籍謄本」が必要になります。出生地の市役所等とのやり取りが生じますので早めに準備しましょう。
- 株式(現物)や投資信託は、相続人代表者(例えば配偶者である奥さん)口座に移管されます。相続発生時に口座開設しても良いのですが、できれば事前に奥さんの口座を用意し、この口座での取引等に慣れておくと、後々取引等で混乱せずに済みます。
- 家族信託(民事信託)についてもカバーできる範囲等を確認しておくと良いと思います。家族信託では、契約により委託者の財産管理や財産継承が可能です。
- お金に余裕のある人は、相続や認知症発症対策として信託銀行を活用する事も一考です。市中の信託銀行以外でも、最近ではネット系の商品もあります。
例えば、次のような記事もご参考まで。
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さいごに
会社を定年・退職し、年金が大きな収入源となってくると徐々に終わりを意識するようになってきました。そして周りでも、超高齢者社会の進展により関連するニュースや記事が目に付くようになってきました。
このような中で、一つ相続について調べてみると意外と面倒で、万一の時に皆さんこのような事を実施してるのかなぁ~というのが正直な気持ちです。
その時を迎えた後に家族が苦労しないよう、今のうちに考えておきたいものです。
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