奥さんが一人になった時の社会保険料と税金の負担-その2-

夫婦二人世帯から奥さんがお一人様になった後の社会保険料・税金の負担を試算します。年金収入としては遺族厚生年金と自分の老齢基礎年金となり減少しますが、非課税や保険料の軽減措置などがあります。その1では、夫婦二人世帯の負担金額を試算しましたので、それと比較をしてみます。

試算する上での仮定

「奥さんが一人になった時の社会保険料と税金の負担-その1-」では次のような仮定で夫婦二人世帯の負担額を試算してみました。その1については、次のサイトをご覧ください。

その1での仮定(夫婦二人世帯)

  • 住んでいる所:神奈川県横浜市
  • 夫の寿命:85歳(生前)
  • 夫の年金額:
    • 老齢基礎年金(定額部分):781,700円
    • 老齢厚生年金(報酬比例部分):1,600,000円
  • 妻の年齢:82歳
  • 妻の年金額:
    • 老齢基礎年金(定額部分):781,700円
    • 老齢厚生年金(報酬比例部分):100,000円
    • 振替加算:27,000円 ※少し丸めています

その2での仮定(奥さんお一人世帯)

この記事での仮定は次のとおりです。

  • 住んでいる所:神奈川県横浜市
  • 妻の年齢:82歳
  • 妻の年金額:
    • 老齢基礎年金(定額部分):781,700円
    • 遺族厚生年金(報酬比例部分):1,200,000円
    • 振替加算:27,000円

夫が亡くなった場合、夫の老齢厚生年金の3/4相当が遺族厚生年金として受給できます。振替加算は継続受給できますが、自分(奥さん)の老齢厚生年金は支給停止になります。

つまり、奥さんお一人だけになった場合の年金額は次のとおりです。

  • 奥さん一人の年金額:2,008,700円(=781,7000円+(1,600,000円×3/4)+27,000円)
区分年金収入
夫婦二人世帯3,290,400円
奥さんお一人世帯2,008,700円
差額▲1,281,700円
【年金収入の減少】

奥さんが1人になると、約128万円の減少となり、年金額は2,008,700円です。厳しいですね。

奥さんお一人世帯の負担額

年金収入は分かりましたので、これを基に社会保険料と税金の負担額を試算してみます。

後期高齢者医療制度の保険料

保険料率

後期高齢者医療制度の保険料は、前年所得に応じた所得割額と定額の均等割額から成ります。横浜市が所属する神奈川県の保険料率(令和2・3年度)は次のとおりです。ただし、今回のケースでは年金収入が大きく減少しますので、軽減措置を受ける事ができます。

  • 所得割額:8.74%
  • 均等割額:43,800円

保険料の試算結果

所得割額の基になる所得は下記のため0です。

  • 遺族厚生年金は収入に算入されません
  • 妻の年金額808,700円(=老齢基礎年金額781,700円+振替加算額27,000円)が公的年金等控除額1,100,000円以内です。

均等割額は、世帯の総所得金額等の基準が33万円以下に該当しますので軽減措置が得られます。軽減された均等割額は9,855円となり、これから後期高齢医療制度の保険料は次のとおり年額9,855円です。

所得割額均等割額年額
0円9,855円9,855円
【後期高齢者医療保険料(横浜市、2020年)】

横浜市の後期高齢者医療保険料については、次の公式サイトをご覧ください。
→横浜市の後期高齢者医療保険料をみる

介護保険料

介護保険制度では、65歳以上の人は第1号被保険者になり、前年所得を基に個人単位で計算されます。横浜市の場合は、前年所得等に応じて16段階(2020年)の介護保険料が決められています。

しかし、後期高齢者医療保険料と同様に所得が0ですので(かつこの後の市民税非課税世帯)、第3段階の「本人の「公的年金等収入額と「その他の合計所得金額」の合計が年間120万円以下」に該当します。

その結果は年間の介護保険料は、26,040円となります。

横浜市の介護保険料については、次の公式サイトをご覧ください。
→横浜市の介護保険料をみる

住民税

横浜市の場合、住民税は次のように課税されます。

区分所得割均等割
県民税2.025%1,800円
市民税8%4,400円
合計10.025%5,300円
【横浜市の住民税(2020年度)】

しかし、今回のケースでは遺族年金は非課税です。そして妻の年金額808,700円も公的年金等控除1,100,000円以下ですので、所得は0です。

結論からいえば次の基準により住民税は非課税になります。

  • 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下の人

横浜市の住民税については、次の公式サイトをご覧ください。
→横浜市の住民税をみる

所得税

所得が0ですので、所得税も0です。

お一人様世帯と二人世帯の負担額の比較

次に表は、奥さん一人世帯の負担額をまとめ、夫婦二人世帯の負担額を比較したものです。

奥さん一人世帯と夫婦二人世帯の比較(横浜市、2020年)
【奥さん一人世帯と夫婦二人世帯の比較(横浜市、2020年)】

夫婦二人世帯の負担額と比較すると約1/10です。しかし、年金収入が2,008,700円ですので、収入に対する負担割合は約18%と増えています

その他の留意点

奥さんが一人になる子供の被扶養者になるのも良いでしょうし、最後まで一人生活を楽しむのも良いと思います。ただ、年金収入が約200万円と少ないですので、せめて夫婦二人世帯の収入の7割程度(230万~240万円)は預貯金等を取り崩して手当できるように考えたいものです。

そうなると相続等の問題も生じてきます。少し蛇足になりますが、主なものを記載しておきたいと思います。

  • お一人様になった後に困らないように最低限の預貯金等の手当や資産の整理をしておきましょう。
  • 金融機関口座は最低限のものに整理し、連絡先やネットバンクのパスワード等を共有しておきましょう。
  • 相続問題が生じないように必要ならば遺言書を残しておきましょう。
  • もしも認知症の心配がある場合は、事前に家族信託、信託銀行の活用、任意後見人等を検討しておきましょう。
  • 奥さんや家族に配偶者居住権(奥さんが自宅に住み続ける権利)や配偶者短期居住権がある事を認識させておきましょう。

なお、家族信託、信託銀行の活用、配偶者居住権等については次の記事でまとめていますので、ご覧ください。

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さいごに

長い会社勤めを終えてもまだまだ長い人生が待っています。少しは余裕のある楽しい生活を送りたいと思いますが、ある程度仕事を行うのも楽しい生活の一部なのでしょう。

定年後もなかなか忙しい毎日が待っているようですので、新しい知識を学びつつ、良いときを迎えたいものです。

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