退職後は収入の主体が年金になります。本稿は、100歳ぐらいまでお金の面で比較的安心して生活できるために実施すべき事をまとめている100歳安心設計の年金編です。現役世代のころは年金拠出金を支払う立場でしたが、65歳以降はいよいよ受け取り側になります。年金受給開始の手続き等を始める際にとまどう場合も多いと思いますので、ここでは、私の経験を基に特に留意することをまとめました。
始める前に
本稿は、100歳安心設計の年金編ですが、下記で同じテーマの社会保険編をまとめています。下記の記事も私の経験を基に社会保険関係で特に留意する内容をまとめていますので、ご覧ください。
定年後は健康保険・介護保険等社会保険料が全額自己負担になりますので、大幅に増額します。また、失業給付や高年齢求職者給付金を受給するためには、離職理由等を正しく記載する必要があります。さらには年金受給についても留意すべき点があります。これら[…]
年金請求方法と留意点
年金の受給資格を満たしていると65歳から老齢基礎年金・老齢厚生年金を受給する事ができます。また、厚生年金加入者で65歳未満の人は条件を満たせば「特別支給の老齢厚生年金」の受給資格があります。これらの概要を説明します。
年金請求方法
会社勤めの厚生年金に加入している場合、男性は昭和36年4月1日以前生まれ、女性は昭和41年4月1日以前生まれで、かつ一定の要件を満たせば、65歳前に老齢厚生年金の報酬比例部分のみが受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」があります。
受給権利が発生する人には、日本年金機構から支給開始年齢に到達する約3か月前に、「年金請求書(事前送付用)」と年金の請求手続きの案内が郵送されてきます。詳細は次のサイトをご覧ください。
私の場合は、「特別支給の老齢厚生年金」の受給資格がありましたので、該当年齢の時に上記手続きをしており、「厚生年金保険年金証書」を取得済でした。
特別支給の老齢年金からの切替え手続き
65歳になると、「特別支給の老齢厚生年金」から切り替わり新たに老齢基礎年金・老齢厚生年金を受けることになりますので、「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」の提出が必要です。これらの書類は、65歳前に日本年金機構から送られてきます。
記載する内容は次のとおりで、ハガキ一枚の簡単に形式です。
- 年月日等の欄:提出日を記入します。
- 請求者の欄:請求者本人(つまり私)の記入欄です。氏名フリガナと生年月日は印字済ですので、住所・電話番号・氏名を漢字等で記入します。
- 加給年金額対象者の欄:奥さんと子供(扶養者の場合)の情報を記入します。氏名フリガナと生年月日は印字済ですので、氏名(漢字)を記入します。
- 繰下げ希望欄:繰下げ有無により次のようにします。
- 老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給を希望する場合:繰下げ希望欄に何も記入しないで「年金請求書」を提出します。
- 老齢基礎年金・老齢厚生年金のどちらかのみを繰下げる場合:繰下げる年金の種類を〇で囲んで「年金請求書」を提出します。
- 老齢基礎年金・老齢厚生年金共に繰下げを希望する場合:「年金請求書」の提出は不要です。
もう少し詳しく知りたい人は次の記事もご覧ください。
特別支給の老齢厚生年金の年金請求から65歳以降は老齢厚生年金に切り替わります。一連の流れの中で、切り替えの手続き、加給年金の申請方法、年金受給用口座、受給時期等々、年金受給前後の気付き事項を私自身のケースを交えてまとめて見ました。[…]
65歳から老齢年金の受給資格が生じますが、その前に日本年金機構から年金請求書が送られてきます。また、既に企業年金等を受給している方には毎年1回現況届を提出しなければなりません。これらについて私の場合を例に説明します。老齢年金の受給[…]
加給年金の請求方法
加給年金とは、厚生年金被保険者(夫)が65歳以降、奥さんが65歳未満(や子が18歳未満)であれば、奥さんが65歳になるまで(や子が18歳になるまで)夫の老齢厚生年金に加給年金が加算されます。
加給年金額は、奥さん一人の場合で約39万円/年です。また、加給年金を受給していると奥さんが65歳以降に奥さんの老齢基礎年金に振替加算が加わります。振替加算額は、日本年金機構のサイトを見ると約3.3万円/年(家の奥さんの場合)老齢基礎年金に加算されます。
これらの年金は、厚生年金被保険者(夫)が繰下げ等で支給停止期間中はもらえません。
加給年金の請求方法は先の「年金請求書」の加給年金額対象者の欄に記入します。
なお、加給年金額と振替加算の詳細を知りたい人は、次のサイトをご覧ください。
国民年金の任意加入と付加保険料
国民年金には、「老齢基礎年金の受給権を得る」や「老齢基礎年金を増やす(満額に近づける)」ためを目的に任意加入制度があります。
例えば、夫(第2号被保険者)が65歳で完全定年となり年金受給開始となった時に、扶養者である妻(第3号被保険者であった妻)がまだ65歳前で年金加入期間が480月(上限)に満たない場合は、妻が国民年金の任意加入する事で老齢基礎年金を満額で受取る事ができます(又は満額に近づける)。
また、国民年金の加入者は、定額保険料に付加保険料を上乗せして納めることで受給する年金額を増やす事ができ、これは任意加入者も同様です。
2022年(令和4年)の保険料と年金額(満額、増額分)は次のとおりです。
- 国民年金の任意加入制度
- 国民年金保険料:16,590円/月(2022年度)※掛金
- 満額の老齢基礎年金額:777,800円/年(2022年度)※支給額
- 国民年金の付加保険料
- 付加保険料:400円/月 ※掛金
- 年金増額分:200円×付加保険料納付月数/年 ※加算される支給額
次の記事でもまとめていますので、ご覧ください。
自分が65歳で完全定年になった後、奥さんが年下で基礎年金の満額支給条件である年金加入期間480月に満たない場合は、国民年金の任意加入制度の活用と付加保険料を納める事で奥さんの年金受取額を増やすことができます。我が家でも任意加入等の手続きを[…]
主な留意点をまとめると
まとめると次のとおりです。
- 特別支給の老齢年金からの65歳以降の老齢年金の切替え:特別支給の老齢年金で手続き済の人は、「年金請求書」(ハガキ)を提出するだけで簡単です。
- 加給年金の請求方法:上記「年金請求書」に記入するだけです。
- 老齢基礎年金・厚生年金の繰下げ方法:上記「年金請求書」を提出しなければ両年金とも繰下げられます(一方だけの年金繰下げは提出要)。ただし、老齢厚生年金を繰下げるとその期間中は加給年金も支給されません。また振替加算もありませんので、要注意です。
- 国民年金の任意加入と付加保険料:夫が退職後奥さん(年下)が480月の年金期間に満たない場合は、国民年金に任意加入すると奥さんの老齢基礎年金が上限まで増えます。また、付加保険料も可能です。
さいごに
最近、国からの年金関係の資料をみると年金受給の繰下げを行うと年金額が増えるという内容を良く見かけます。ただ、奥さんが年下でほぼ専業主婦の場合は、繰下げ期間中に加給年金や振替加算が支給停止になるので、要注意です。特に加給年金は夫の厚生老齢年金に付加されるものだからです。
これらの説明が分かり辛く、ミスリードになるのではないかと懸念しています。最終的には自己責任ですが、なんとなく腑に落ちないのは私だけでしょうか。
にほんブログ村