株式配当の課税方式による税額試算の比較(総合課税と源泉徴収のままとの比較)

株式配当の課税は、一般的に総合課税の配当控除を使うより、分離課税で配当を受け取るときに20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)で済ませていると思います。しかし、所得税を総合課税として配当控除を使い、住民税は源泉徴収のままにする課税方式を選ぶと、税金が軽減される可能性があります。これを具体的に試算しましたので、説明します。

共通の前提事項

前提とする家庭は次のとおりです。

  • 株主配当の課税
    • 所得税:総合課税として配当控除を使う
    • 住民税:株式配当受取時の源泉徴収のままとする
  • 神奈川県A市在住
  • 夫(65歳未満)の収入
    • 給与:4,000,000円
    • 企業年金:600,000円(5万円/月×12ヶ月)
    • 株式配当:150,000円
  • 扶養者は妻(専業主婦)のみ、子供は独立
  • 社会保険料: 640,000円/年
  • 医療費:150,000円/年
  • 生命保険料:120,000円/年※平成24年1月1日以後に締結
  • 地震保険料:48,000円
  • ふるさと納税: 20,000円 

税額の計算

上記の例で計算した所得税と住民税は、各々次の記事にあるので割愛します。

所得税の計算

所得税の計算は次の記事のとおりです。計算結果の所得税は、配当控除を考慮した場合は48,701円で、考慮していない場合は56,155円です。

関連記事

定年少し前や再雇用などの期間では給与が少なくなっていると思いますが、そのような場合、株式の配当について所得税は総合課税で、住民税は配当時の源泉徴収のままにした方が、税金が軽減されます。そろそろ確定申告の時期が近づいてきましたので、頭の整理[…]

所得税

住民税の計算

住民税の計算は次の記事のとおりです。計算結果の住民税は、112,700円です。

関連記事

確定申告は、所得税を対象としており、その所得税の結果で住民税を算出しているのが一般的です。でも、都道府県民税と市町村民税はどの程度徴収されているのかや、ふるさと納税などがどのように反映されているのかわかりません。今年も確定申告の時期になり[…]

住民税の計算

但し、上記の例は、株式配当の住民税分を源泉徴収されたままにした場合の値ですので、住民税も株式配当を総合課税相当にすると配当控除がありますので、次のとおりになります。

配当控除4,200円=株式配当金150,000円×配当控除率2.8%
※配当控除率2.8%=市民税分1.6%+県民税分1.2%

故に住民税は次のとおりです。

住民税108,500円=112,700円-配当控除4,200円

年末調整後の還付金の計算

上記の所得税および住民税は、年末調整後の還付金が入っていません。年末調整時は、医療費控除、寄附金控除、公的年金等控除は含まれていませんので、これらを除外した式で、還付金の計算をします。

総合課税時の還付金の計算

給与所得2,660,000円-所得控除1,488,000円=課税給与所得1,172,000円
所得税58,600円=課税給与所得1,172,000円×5%
復興特別所得税1,230円=所得税58,600円×2.1%

源泉税額128,717円
=給与分(所得税58,600円+復興特別所得税1,230円)
+配当分(配当金150,000円×15.315%)
+企業年金分(600,000円×7.6575%)

故に、還付金は次のとおりです。

還付金80,016円=源泉税額128,717円-所得税48,701円

株式配当受取時に源泉徴収されたままで終える場合

給与所得2,660,000円-所得控除1,488,000円=課税給与所得1,172,000円
所得税58,600円=課税給与所得1,172,000円×5%
復興特別所得税1,230円=所得税58,600円×2.1%

源泉税額105,745円
=給与分(所得税58,600円+復興特別所得税1,230円)
+企業年金分(600,000円×7.6575%)

故に、還付金は次のとおりです。

還付金49,590円=源泉税額105,745円-所得税56,155円

税額の比較

上記の還付金と記事の内容をまとめたのが次の表です。

株式配当の課税方式による税額比較

この表の課税方式の「総合」とは、株式配当を総合課税による配当控除を適用した場合です。また、「無」とあるのは、株式配当を受け取るときに源泉徴収された税金のままで納税を終えることを意味します。

税額の結果を見ると、所得税「総合」+住民税「無」が一番良い結果になっています。両方とも「無」の場合の#2と比較するとまるまる配当分が戻ってきているような結果になっていますので、この方式が税金を軽減することに有効であることがわかります。

なお、所得税を総合課税にした場合は、黙っていると住民税の総合課税になりますので、必ず、自治体(市役所)の窓口に行き、住民税は源泉徴収のままにすることを申告しなければなりませんので、注意してください。

まとめ

株式配当に係る税額は、所得税を総合課税にし、住民税を源泉徴収のままにすることの有効性がわかりました。手続きのためには、市役所に行かなければなりませんが、収入が少なくなってくる定年後には大変助かる制度ですので、是非、活用していただきたいと思います。なお、紙面の関係で、前述の記事に書かれていることは再掲しませんでしたので、わかりづらいと思います。前述の記事についても、お読みいただければ理解が深まると思います。お時間があればお読みください。

注)今回、株式配当に係り、所得税と住民税の計算をしてみました。所得税は何度か確定申告で実施していますが、住民税についてはあまり経験が無いので、もしかすると少々誤りがあるかもしれません。その場合はご容赦ください。税金は難しいので、最後は税理士さんにお助けですね。

楽天市場
5



配当控除方式の比較
白ノ葉ブログの最新情報をチェック!