認知症や相続時でも安心、マネックス証券と楽天証券の株式等信託サービスの比較

マネックス証券からマネックスSP信託が提供する認知症や相続に備える株式管理サービス「たくす株」の取扱いを開始する旨のプレスリリースが2021年9月8日にありました。信託の仕組みを活用した高齢者向けの株式等管理サービスです。楽天証券でも家族信託を利用した 高齢者向けサービスを実施していますので、比較をしてみたいと思います。

たくす株とは

高齢化社会が急速に進む中、自分が認知症になった場合とか、万一の時に円滑に相続が実施されるか心配になります。特に、株式等は家族にはあまり馴染みが無いでしょうから突然の事態に困ってしまいそうです。このような場合を想定して金融サービスがマネックス証券から発表されました。

実際の主体は、マネックスSP信託で、マネックス証券はその信託契約代理店の位置付けですので、利用者はマネックスSP信託と信託契約を締結する事になります。

主な特長は次のとおりです。

  • 利用者(委託者兼受益者)は信託契約を結び「たくす株専用口座」を作ります。
  • 利用者が元気なうちは(認知症になる前)、自分で「たくす株専用口座」の株式等の売却や買付などができます
  • 認知症になった場合、あらかじめ決めておいた代理人による財産管理が可能になり、代理人による「たくす株専用口座」の株式等の売却・出金が可能になります。なお、代理人には、配偶者または子供を指定しなければなりません。
  • 利用者が亡くなり相続が発生すると、亡くなった事がわかる戸籍謄本等を提示することで、あらかじめ指定した受取人である家族に「たくす株専用口座」内の財産をそのまま移す事ができます
  • 利用者が認知症になった後に代理人が出金する場合、あらかじめ指定した家族に出金のお知らせをします。また、オプションで利用者のログインが一定期間確認できない場合に通知する「見守り機能」も利用できます。
マネックス証券とマネックスSP信託のたくす株の仕組み
※マネックス証券とマネックスSP信託のプレスリリース(2021年9月8日)から抜粋
 クリックすると関連サイトに移動します。

楽天証券では家族信託を活用

楽天証券は、2020年4月27日に「楽天証券、IFAを通じた『家族信託サービス』を開始」 をプレスリリースをしています。

IFAとは(Independent Financial Advisor;独立系フィナンシャル・アドバイザー)で、金融機関から独立して活動する資産運用コンサルタントです。

また「家族信託」は、一般的名称の「民事信託」のうち家族が信託を行うことを意味しており、一般社団法人家族信託普及協会の商標登録になっています。昔は信託業務を行えるのは信託銀行だけでしたが、今は信託業の免許を持たない人でも条件付きで実施できるようになりました。

このため、家族信託の契約は委託者兼受益者(本人)と受託者(子や孫)が結び、楽天証券はそのスキームを提供する位置づけです。

楽天証券の家族サービス開始のプレスリリースの抜粋
※楽天証券プレスリリース(2020年4月24日)から抜粋
 クリックするとプレスリリースに移動します。

なお、楽天証券の家族信託サービスについては次の記事でまとめていますので、ご覧ください。

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Family Trust

マネックス証券と楽天証券のサービス比較

財産を託して管理してもらう方法としては主に次の3つがあります。今回紹介しているマネックス証券は②のケース楽天証券は③のケースとなります。

  1. 後見制度を活用する
  2. 信託銀行を活用する
  3. 家族信託を活用する

比較表

マネックス証券の「たくす株」と楽天証券の「家族信託サービス」を比較した表です。主なポイントを補足します。

マネックス証券と楽天証券の株式等信託サービスの比較
【株式等信託サービスの比較】

申込では、マネックス証券はあくまでマネックスSP信託の代理店ですので、実施主体はマネックスSP信託になります。

関係者では、上記のため、 マネックス 証券の「たくす株」は受託者がマネックスSP信託ですが、楽天証券の「家族信託」の受託者は委託者の2親等以内の親族になります。

対象商品では、 マネックス 証券の「たくす株」よりも楽天証券の方が断然多いです。

費用では、 マネックス 証券の「たくす株」は費用がかさむ可能性があります。例えば、時価1000万円保有している場合は事務取扱手数料が16.5万円(税込)となります。交付手数料もその都度1.65%必要になります。

一方、楽天証券では、IFA経由の取引手数料だけになります。それでもネット取引になれている方であれば少々お高いのですが、財産を家族に継承するためには安上がりなのかもしれません。

その他では、 マネックス 証券の相続時の手続きが簡単です。一方、楽天証券では投資信託定期売却サービスやIFA専用サービスの「管理口座コース」(例えば取引毎の手数料を0にして預り資産残高に応じた比率でIFA報酬が変わるコース)との併用ができます。

投資信託定期売却サービスについては次の記事をご覧ください。

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今後の期待

マネックス証券と楽天証券の株式等信託サービスについてまとめてみました。しかし自社顧客の拡販と囲い込みが目的なのはわかるのですが、なんとなく中途半端で使いづらいサービスのような気がします。

利用者として考えると今後は次のようなことを期待したいと思います。

  • 自社のみならず他の証券会社・金融機関も含めて欲しい。例えば複数証券会社の口座を自社口座にまとめる事も安価で対応して欲しい。
  • マネックス証券は、対象が国内株式等なので海外株式等へも広げて欲しい。
  • 楽天証券は、委託者兼受益者死亡で終えるのではなく、相続まで範囲を広げて欲しい(家族信託ならば可能では)。

さいごに

最初は、証券会社も1社だけでしたが、安い手数料を武器にネット証券会社がいろいろと現れてきましたので、増えてきています。銀行等も同様です。これらをある程度整理しなければ、自分が万一の時、残された家族が苦労してしまいます。

まずは、自分の口座の整理をしなければならない事は十分に理解しているのですが、自分の終わりの時は分かりませんので、ついつい先送りになります。今回紹介させていただいたサービスは、とても良いのですが、これらについても改善していただけると大変助かりますので、これからも注視していきたいと思います。

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