年金生活下での税金と社会保険料を試算してみました

会社に勤めていた時は、給与から所得税・住民税・健康保険料・介護保険料等が天引きされていましたが、65歳の退職後からは、年金から天引きされたり自分で直接納めたりしなければなりません。収入が減る中で負担の大きなこれらの金額をある仮定の下で試算してみました。

本稿で扱う税金と社会保険料の種類

税金には、例えば、国税の所得税・消費税・自動車重量税等や地方税の住民税・固定資産税・自動車税等があり、社会保険では、厚生年金保険・健康保険・介護保険・雇用保険等があります。

ここでは、サラリーマンが65歳で退職した後に、会社勤めに時とは意外と変わる社会保険料・税金について次に順序で説明します。

  • 国民健康保険
  • 介護保険
  • 住民税
  • 所得税

試算する上での仮定

65歳で退職した場合、住民税や健康保険・介護保険は前年所得を基に計算しますので、勤めていたときと同様の金額になります。このため、退職してから2年後~75歳前(後期高齢者医療保険度前)を対象とします。

仮定は次のとおりです。

  • 夫:年齢65歳以上
  • 妻:年齢65歳以上、収入が80万円(老齢基礎年金+老齢厚生年金)で配偶者控除可
  • 神奈川県横浜市在住
  • 給与:1,200,000円/年(少し働いていると仮定)
  • 年金:2,000,000円/年
  • 前年と今年の収入は同じ

社会保険料と税金の計算

国民健康保険料

国民健康保険料は、医療分、後期支援分、介護分から成り、各々、所得割額、均等割額、平等割額、資産割額があります。計算方法は自治体により異なり、横浜市の場合は、前年所得に応じた所得割額1人あたりの均等割額から次のように算出されます。

区分所得割額均等割額
医療分7.22%34,320円
後期支援分2.17%9,650円
介護分※40歳以上65歳未満のみ00
計(2人/世帯)11.85%112,420円
【横浜市の国民健康保険料と介護保険料(2020年度)】

なお、区分の説明は次のとおりです。

  • 医療分:私たちが病気やケガをしたときの医療費の財源になる部分で、全員が納めます
  • 後期支援分:75歳以降の後期高齢者医療制度を支えるための財源になる部分で、全員が納めます。
  • 介護分:介護保険制度を支えるための財源になる部分で、40歳~64歳の方が納めます。会社の健康保険では、別に介護保険料として納めていますが、国民健康保険の場合は、介護分として一緒に納めます。ただし、65歳以上の方は別途納めます。
  • 計(2日/世帯):夫婦2人の世帯でも合計です。

これらを基に国民健康保険料を計算すると次のとおりです。

横浜市における国民健康保険料の計算例(2020年)
【国民健康保険料の一例】

収入(給与、年金)から控除できる給与控除と公的年金等控除を差し引き所得⑦を出します。

さらに所得控除できる基礎控除⑧を引いて課税計算の基になる所得⑨を出します。

この総所得から医療分と後期支援分を計算して(介護分は65歳以上のためここでは対象外)、国民健康保険料⑳が193,100円となりました。

なお、保険料の計算では、「所得控除」に扶養控除・社会保険料控除(医療費控除も)等が適用できません

介護保険料

介護保険制度では、65歳以上の人は第1号被保険者になり、前年所得を基に個別に計算されます。横浜市の場合は、前年所得等に応じて16段階の介護保険料が決められています

今回のケースでは、計算の対象となる夫の前年所得1,120,000円、奥さん(被扶養者)780,000円ですので、次のようになります。

対象者保険料段階年間保険料
第7段階(合計所得金額120万円以下)79,600円
第6段階(基準額)74,400円
154,000円
65歳以上の介護保険料(横浜市、2020年)

住民税

住民税は都道府県民税と市町村民税から成り、各々前年所得に応じて課税される所得割と各世帯同一の均等割があります。

住民税の所得割は10%で、一般的には都道府県民税4%と市町村民税6%の比率に分かれますが、横浜市は政令指定都市のため、県民税と市民税の比率がベースと異なります。それに加えて、市民税は、平成21年度(2009年度)から令和5年度(2023年度)まで「横浜みどりアップ計画」推進のため、「 横浜みどり税」と称して均等割の税率に900円が上乗せされています。

この他に神奈川県の県民税の均等割で300円、所得割で0.025%税が上乗せされています。低いとはいえ、所得割では、課税所得100万円毎に250円づつアップです。

つまり横浜市の場合の住民税は次のようになります。

区分所得割均等割
県民税2.025%1,800円
市民税8%4,400円
合計10.025%5,300円
【横浜市の住民税(2020年度)】

これを基に住民税を計算すると次のとおりです。

横浜市の住人税の一例
【住民税の一例】

収入(給与、年金)から控除できる給与控除と公的年金等控除を差し引き所得⑦を出します。

さらに所得控除できるものを引いて課税計算の基になる総所得⑫を出します。

この総所得から市民税と県民税を計算して、住民税額㉑が49,824円となりました。

所得税

所得税の場合は、配偶者控除380,000円(住民税の場合は330,000円)、基礎控除480,000円(住民税の場合は430,000円)となります。

横浜市の所得税の一例
【所得税の一例】

課税対象の総所得⑫は5%の所得税率とそれに復興特別所得税が課せられますので合計5.105%の税率になります。
この結果、所得税額⑬は18,393円となりました。

なお、所得額に対する所得税率については、次のサイトをご覧ください。

→国税庁:所得税の速算表をみる。

社会保険料と税金の合計

今まで試算した社会保険料と税金をまとめると次のとおりです。

区分年額
国民健康保険料193,100円
介護保険料154,000円
住民税49,824
所得税18,393円
合計415,317円
【社会保険料と税金の一例】

今回仮定した世帯収入は、夫320万円、妻80万円の合計400万円と大変恵まれた家庭と言えます。この内、社会保険料と税金が占める割合は、約10%となります。

留意点

意外と負担が少ない気もしますが、金額でいえば360万円弱で生活しなければなりません。贅沢をしなければ生活に問題はなさそうですが、留意すべき点をいくつか述べたいと思います。

  • 保険料を算出するための所得控除は、基礎控除しかありませんので、あまり工夫できません。しかし、これからの高齢化社会の進展で益々保険料の負担が増えていきます。例えば介護保険料は、3年毎に改定されますが、令和3年度から基本額が約5%程度負担増になりました。これらの動向には日頃より注意を払っておく必要があります。
  • 住民税や所得税については、所得控除として、医療費控除、寄附控除(ふるさと納税)、私的保険料控除等が適用できます。可能なものは、忘れずに確定申告しましょう。
  • 住民税や保険料は、前年所得を基に計算されます。このため、会社を退職した次の年は会社在籍時とほぼ同様の住民税・保険料を納めなければなりませんので、この金額もあらかじめ準備しておきましょう。
  • もしも株式投資等を行っている場合は、所得税を総合課税で配当控除を使い、住民税の配当分は源泉徴収額のままにする事を選択すると株式配当課税の軽減効果があります(収入が900万円以下の人)。是非検討してみてください。
  • 75歳からは、後期高齢者医療制度に加入する事になります。これについても事前に確認しておきましょう。

配当課税については、次の記事をご覧ください。

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また、後期高齢者医療制度については、次の記事をご覧ください。

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さいごに

今回試算したケースは、比較的恵まれた家庭だと思います。非課税世帯で試算すると分かりずらいかと思い、少し収入を多くしました。可処分所得が360万円/年あれば、普通の生活が可能だと思いますが、この金額より少なくなると預貯金を計画的に手当てしていく事や、別の収入を得る道を探さなければなりません。

どちらにしても少し働くことは、老化を遅らせる事になりますので、意識的に仕事をした方が良いだろうなと考えています。現役の時には主として生活のためでしたが、退職後は面白みのある仕事をしたいなぁ~と考えています。

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