株式投資をされている人は、確定申告時に総合課税で配当控除を行い、住民税では配当を源泉徴収のままにする申出を行う事が納税的に有利になりますので、多くの方が実施されていると思います。しかし、令和4年度の税制改正により所得税と住民税の課税方式を一致させることが決まりました。これについて説明します。
現状の株式配当に係る課税方針の選択
株式配当については、現状、所得税と住民税で異なる課税方式の選択が可能です。
所得税を総合課税で配当控除を活用し、住民税の配当分は源泉徴収額のままにします。所得税と住民税では異なる課税方式になるわけですが、現状ではこの方法が可能です。
つまり、株式配当の課税は、通常、配当を受ける際に「所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%の合わせて20.315%」が源泉徴収されます。住民税は税額を低減するためには源泉徴収のままの方が良いので住民税(地方税)も別途「申告無し」で役所に提出します。
この方法は、収入が900万円以下(この収入の前後の方は税金を計算して確認された方が良いです)の人に株式配当課税の軽減効果があるといわれており、利用されている人は多いのではないかと思います。
しかし、この「株式配当での所得税と住民税で異なる課税方式の選択」が令和4年度税制改正では選択できなくなることが明らかになりました。ただし、地方税への適用は令和6年分(2024年)からになりますので、所得税の確定申告は、1年前の令和5年分(2023年)からになります。
なお、株式投資をされている人にメリットのある納税方法については次の記事で概要をまとめていますので、ご覧ください。
株式投資をされている方は、損益通算・損失繰越のためと配当控除を活用するために総合課税で確定申告を行い、住民税では配当の源泉徴収のままにする申出を行う事が納税的に有利になります。これらについて説明します。そろそろ確定申告の心構えを[…]
令和4年度税制改正について
令和4年度税制改正の主な内容
令和4年度税制改正では、特に個人では住宅ローン控除やキャッシュレス納税に係る内容等が見直されています。これを含めて財務省説明資料(※青字をクリックするとサイトへ移動します)の目次から拾ってみると次のとおりです。
- 個人所得課税
- 住宅ローン控除制度の見直し
- 資産課税
- 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の見直し
- 登録免許税におけるキャッシュレス納付制度の創設
- 法人課税
- 積極的な賃上げ等を促すための措置
- オープンイノベーション促進税制の拡充
- 5G導入促進税制の見直し
- 消費課税
- 自動車重量税におけるキャッシュレス納付制度の創設
- 航空機燃料税の税率の見直し
- 沖縄県産酒類に係る酒税の軽減措置の段階的廃止等
- 納税環境整備
- 税理士制度の見直し
- 記帳義務を適正に履行しない納税者等への対応策
- 財産債務調書制度の見直し
令和4年度税制改正の関連部分
次の文章は、「令和4年度税制改正の大綱(令和3年12月24日閣議決定)」P76(※青字をクリックするとサイトへ移動します)に記載の上記該当部分です。
- 上場株式等の配当所得等に係る課税方式
- 個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとする。
- 上記①に伴い、次の措置を講ずる。
- イ 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用要件が所得税と一致するよう規定の整備を行う。
- ロ その他所要の措置を講ずる。
- 注)上記の改正は、令和6年度分以後の個人住民税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
所得税と住民税において異なる課税方式を選択できる事自体が、なんとなく税の抜け穴のような感じで不思議でした。私も今までは、所得税の確定申告時には総合課税で提出し、その後、地方税では「上場株式等の所得に係る市民税・県民税申告不要等申出書」で「申告無し」を選択して提出していました。
しかし、上記関連個所に記載のとおり、できなくなります。所得税の確定申告すると、その結果が自動的に地方税に反映されますので、税金的には少し損するので残念ですが、手間は減ります(抜け穴を閉じられて感じです)。
適用時期は、上記のとおり地方税(住民税)が令和6年度分(2024年)以後なので、所得税は1年前の令和5年分(2023年)から考えていかなければなりません。まだ今年分は(2022年)、従来とおりです。
さいごに
元々、所得税と住民税において異なる課税方式を選択できる理由が良く分かりませんでした。これを一致させるのは良いとしても、何故なのかをはっきりさせて欲しいものです。
令和4年度の税制改正の概要を読んでも、課税方式を一致させる文言が見当たらず、令和4年度税制改正の大綱で文章が見つかりました。段々と課税が厳しくなっていく風向きですが、お上には納得できる説明を期待したいものです。
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