2019年分の確定申告について、ほぼ終了し、後は提出するだけです。私の場合は、収入として給与の他に、株式配当、企業年金があり、総合課税での株式配当、ふるさと納税、医療費控除等を処理しましたので、その流れを説明します。なお、作成・提出はe-TAXで毎年実施しています。
税金を計算する流れ
使用する用紙は申告書B
この記事では、給与の他に次の項目が対応しなければならないものとして取り扱います。
- 株式配当の総合課税
- 企業年金
- 医療費控除
- ふるさと納税
- 株式等売買の損益通算
確定申告の用紙は申告書Aと申告書Bがありますが、株式等の譲渡所得等がありますので、下記の申告書Bを使います。申告書Aは簡易版ですので、不明な場合は申告書Bを使うのが無難です。
計算の流れ
税金の計算の流れは次のとおりです。
- 「収入金額等」を源泉徴収票から記入します。
- 「所得金額」を上記1「収入金額等」から収入金額等控除額を差し引いて計算します。
- 「所得から差し引かれる金額」を源泉徴収票等から転記・計算します。
- 「税金の計算」では、上記2と上記3から「課税される所得金額」を出し、所得税(+復興特別所得税)を計算します。さらに、この所得税と源泉徴収された税額との差額で納める税金/還付される税金を計算します。
以下、申告書Bの収入金額等、所得金額、所得から差し引かれる金額、税金の計算の順番で説明していきます。
収入金額等
収入金額等としては今回の想定は次の3項目です。
- 配当:株式等の配当です。総合課税の場合はこの欄に所得税(+復興特別所得税額)を記入します。なお、e-TAXでは、株式配当を集計してくれる「配当集計フォーム」表がダウンロードでき、これに記入することにより、申告書Bに読み込むことができます。
- 給与:会社からの給与です。源泉徴収票から転記します。
- 雑/公的年金等:企業年金基金等から送られてくる「公的年金等の源泉徴収票」の支払金額欄の数値を転記します。私の場合は、まだ企業年金だけで、会社の企業年金基金から送られてきました。
所得金額
収入金額の配当、給与、雑/公的年金等は、各々所得金額の配当、給与、雑の欄に対応する数値が入ります。
配当
株式の配当等は、配当受取時に 20.315%(所得税及び特別所得税15.315%、住民税5%) が源泉徴収されますが、今回は総合課税にしますので(一定所得以下の方は総合課税の方がお得)、証券会社から送られてくる「上場株式配当等の支払計算書」などの所得税及び特別所得税のトータル額を記入します。
給与
給与は、給与所得控除額を差し引いて、所得金額を計算します。給与所得控除後の給与所得は次の表を参照してください。
雑/公的年金等
公的年金等は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。 年金の収入金額が70万円以下であれば、控除後の所得金額は0となります。詳しく次の速算表をご覧ください。
所得から差し引かれる金額
この欄は、ほとんど給与の源泉徴収票に記載されている数値の転記ですが、年末調整でできなかった「医療費控除」と「ふるさと納税」分の計算をします。
医療費控除
医療費控除の手順は次のとおりです。
- 医療費の明細(氏名、病院等支払先、医療費区分、医療費の額、補填された金額)を入力し、支払った医療費の合計から補填された金額を計算します。
- 「所得金額×0.05」を計算します。
- 上記2の値と10万円を比較し、少ない金額を算出します。
- 上記1-上記3を計算します。この結果が医療費控除額です。
例えば、支払った医療費の合計から補填された金額を差し引いた値が15万円、所得金額350万円とすると次のようになります。
- 15万円
- 350万円×0.05=17.5万円
- 17.5万円 > 10万円 ⇒ 10万円
- 15万円-10万円=5万円 (医療費控除額)
ふるさと納税
ふるさと納税の場合は、2,000円差し引いた値を、寄附金控除額の欄に記入します(e-TAXの場合は寄附金控除の文字部分をクリックして寄附金額を入力すると自動的に2,000円差し引かれた値が寄附金控除額の欄に入ります)。
なお、寄付先から「寄附金受領証明書」が郵送されてきていると思います。e-TAXの場合は、確定申告書提出時の添付は不要ですが、医療費のレシート同様に大切に保管しておきましょう。
税金の計算
税金の計算の手順は次のとおりです。
課税される所得金額
「所得金額」から、「所得から差し引かれる金額」を引き、上「課税される所得金額」を算出します。e-TAXでは、この数値は第三表で計算されます。
配当控除
「配当控除」を計算します。「配当控除」は「所得金額(収入金額等)」の「配当」の10%です。
差引所得税額と復興特別所得税
上記の「課税される所得金額」から「配当控除」を差し引き、「差引所得税額」を計算し、税率に従って所得税を算出します。所得税の速算表は下記をご覧ください。
さらに上記で求めた「差引所得税額」に2.1%を掛けて「復興特別所得税」を計算します。
復興特別所得税=差引所得税額×2.1%
「差引所得税額」と「復興特別所得税」を加算した値が、最終的に納める所得税になります。
最終的に納める所得税=差引所得税額+復興特別所得税
源泉徴収税額との調整
最終的に納める所得税を算出しましたが、既に源泉徴収されている税金がありますので、これとの調整が必要です。源泉徴収されている金額が多すぎる場合は、還付されますし、少なすぎる場合は追加で税金を納めなければなりません。
既に源泉徴収されている税金としては次のとおりです。この金額は、申告書B第二表の「所得の内訳」と「所得の内訳書」に入力・計算されます。
- 株式配当等の源泉徴収額
- 給与の源泉徴収額
- 年金の源泉徴収額
以上で、所得税の計算は終わりですが、次に補足として株式等売買の損益通算、株式配当の総合課税、送信前の確認について記載します。
補足
株式等売買の損益通算
株式売買については、分離課税にして損益通算を行っているため、申告書B第一表には表れてきません。分離課税の部分は、第三表、確定申告書付表、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書で入力・計算されます。
個別株式投資を行っていると損失が出る場合も少なくありませんので、その場合は必ず実施してください。損益通算は3年前の部分まで有効です。1度申請すると次の年に損失がなくとも申請します。
なお、特定口座でない方は、損益通算不要でも必ず確定申告をしなければなりません。
株式配当の総合課税
株式配当の課税は、一般的に分離課税で配当を受け取るときに20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の源泉徴収で済ませている方が多いと思いますが、 一定所得以下の方は、今回のように所得税を総合課税として配当控除を使うと税金が軽減されます(別途自治体に申告が必要ですが、住民税を源泉徴収のままにする課税方式を選ぶとさらに軽減される)。
ご興味があれば、次の記事をご覧ください。
株式配当の課税は、一般的に総合課税の配当控除を使うより、分離課税で配当を受け取るときに20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)で済ませていると思います。しかし、所得税を総合課税として配当控除を使い、住民税は源泉[…]
送信前の確認
注意事項を1点記載します。次の表は、e-TAXで提出する前にでる送信票で、チェックリストを兼ねています。この中で、「別途提出」欄に○があると、該当する書類を郵送するか税務署に持っていかなければなりませんので、e-TAXで送信できなくなります。
可能性として多いのは、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」や「医療費控除の明細書」だと思いますので、注意書きを確認して少し面倒でもしっかり記入しましょう。
さいごに
今回は、この記事を書いてみようかなと思い、早めに準備しましたので全て準備は完了です。提出が2020年2月17日からですので、それ待ちの状況です。
確定申告の結果、我が家の還付金は2桁を超えました。これは、医療費が確実に伸びている事と株式配当を総合課税にした結果です。医療費は一昨年から夫婦二人で20万円を超えています(全く褒められたことでは事ではありませんが)。また、株式配当については、総合課税にした結果、源泉徴収された所得税の多くが戻ってきている感じです。
所得金額は、社会保険料や住民税等の影響しますので、収入が減っていく状況の中、還付してもらえるものは確実に戻してもらい、お金を有効に使っていきましょう。